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コロさん日記(7)〜それは自己肯定感ブースト〜

二話でも書いたが、コロさんはニンゲンが大好きだ。

私がデスクの椅子に座ると「なお」とひと鳴きして、待ってましたとばかりに膝の上に乗ってくる。膝の上というか、実際には太ももの上に。

そこでふと気づく。

そういえば「膝まくら」だって、頭を乗せるのは膝ではなく太ももの上だ。膝まくらという表現は万葉集の頃からあるそうだが、確かに「太ももまくら」だと、なんだか風雅さに欠ける。妙に生々しい。当時の俳人たちも同じような違和感を覚え、「実際に頭を乗せるのは太ももだけどさあ、“膝まくら”のほうが語呂もよくてクールじゃね」とか協議したすえ、「膝でいこう」と決まったのだろうか。気になる。

それはさておき、このあいだ意外なことを知った。

どうもコロさんは私の膝には乗りたがるが、同居人のニンゲン女(以下、ラブコ代表)の膝には乗りたがらないようなのだ。ラブコ代表が私の椅子に座っても、コロさんは知らんぷりして安物プリンターの上で寝ているらしい。

これは実に新鮮であった。

動物からの懐かれレベルにおいて、私は常にラブコ代表の後塵を拝してきた。例えば我が家のキジトラ猫のパルム君は、私にだけは一向に懐かない。共に過ごしてきた時間は、代表と変わらないはずなのに。むしろずっと家にこもって仕事をしている私のほうが、分かち合ってきた時間は長いくらいだ。

それなのに私を見かけると、パルム君はダンジョンで魔物に遭遇したかのごとく泡を食って逃げていく。私との間には常に一メートルほどの距離を保ち、遠方からでも警戒心に満ちた瞳で当方の動向を伺っている。スパイかよ。他の猫たちも、まずは代表のほうに甘えにいく。私は常にセカンドチョイスである。猫だけではなく、エミューもハリネズミもそうだった。

だからコロさんが代表の膝には乗らないと聞いて、私は心の中で「勝った」と思った。努力が報われた。わあああ。湧き上がる歓声、舞い散る紙吹雪。おふくろ、おれやったよ。

ありがとう、コロさん。

おかげでちょっぴり自己肯定感が増したよ。(第八話へ

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編集長の知見を得られないミニエッセイも、よかったらどうぞ。突然の雨に降られた時、あなたは何になりますか。


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