先端技術で生活者目線の商品リコメンド。~ライフプランシミュレーター『マネパス』開発秘話(上)~
ブロードマインドはライフプランの実現を支援する金融サービス開発カンパニーです。私たちは「金融の力を解き放つ」をパーパスに掲げており、その手段として FP相談サービス『マネプロ』を始め、デジタルプロダクトの開発・提供も行っています。
デジタルプロダクトの1つである『マネパス』は、一般生活者や金融事業者がライフプランニングを行うためのWebサービスです。
多くの方にご利用いただき、現在利用者は15,000人を突破。金融事業者向けも、まだ広告を打っていないなか5社目の導入が決定しました。利用者からはマネパスのコンセプトや、それに基づき実装・改修される開発ポリシーに共感いただくことも増えています。
改めてこの開発にかける想いを伝えたいと感じ、全3回にわたって開発ストーリーをご紹介することとなりました。
今回は開発初期の構想や実装までの苦労などを、当初の開発者3名のクロストーク形式でお届けいたします。
ブロードマインドが子育て世代を対象に実施した調査によると、資産形成の出発点とも言えるライフプランニングを実施したことがある人は約4割。社会保障制度についての理解不足やマネーリテラシーの不足もあいまって、多くの人が自らの人生と資金の計画について、具体的な検討をしたことがないのが実情です。
一方、ファイナンシャルプランナー(FP)にライフプランニングを依頼した経験を持つ人を対象とする調査でも、満足行く資金計画と対策を練ることができたと回答した人は4割にも満たない状況となっています。その背景には、顧客のライフプランの本質を見抜いて無数の保険商品・運用商品から最適解を提示することの難しさがあるのではないでしょうか。
このような流れを受け、当社では2020年に一般生活者のためのライフプランシミュレーター『マネパス』(現・マネパスhandy)の提供を開始。2022年にはリブランディングを行い、金融事業者向けに『マネパスwithFP』をリリースしました。
ブロードマインドのビジョンと先端技術の融合で生み出された『マネパス』シリーズの開発秘話を通じて、プロダクトの特徴と開発に込められた思いをご紹介します。
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インタビュイープロフィール
「人生を考えるためのツール」。研究者を動かしたマネパスのビジョン
FP業務向けの『マネパスwithFP』は、一般ユーザー向けのライフプランニングツール『マネパス』(現『マネパスhandy』)を土台に開発したものです。
主に対面型の金融コンサルティングサービスを手掛けるブロードマインドにとって、一般ユーザー自らライフプランニングが可能なツールは、自社業務と部分的に重なる可能性があるうえプロダクト開発自体が挑戦的な取り組みといえます。
あえて『マネパス』の開発に取り組んだ狙いについて開発責任者の鵜沢は、「まず生活者が自らの人生について考えることで、プロによるコンサルティングの納得感も高まる」と説明します。
「資産形成はあくまで人生を充実させる手段にすぎず、前提として、今後どのような人生を送りたいのかというライフプランが存在するはずです。まず、一般ユーザーが自らの人生に向き合ってじっくり考えるきっかけづくりが必要でした。もっと言えば、私自身も自分で客観的にライフプランニングできるツールが欲しいと思っていたんですが、どこを見渡しても存在してなかったんですよ」(鵜沢)
鵜沢がマネパスの構想を練り始めたのは2017年。当時のライフプランシミュレーションツールはほとんどがFPなどの専門家向けで、一般ユーザー向けには特定の金融商品の広告を兼ねた極めて簡易なものしか存在していませんでした。
無数の資産形成手段の中から、ライフプランの実現に最適な手段を中立的な立場で提示してくれるプロダクトを作るという構想が鵜沢の頭の中で固まりつつありました。そこで協力を仰いだのが、東北大学大学院の大関 真之 准教授(当時。現・東京工業大学大学院教授)です。
大関教授の専門は、特定条件下で様々な選択肢の中から最良の組合せを選ぶ「量子アニーリング」理論。量子コンピュータの開発にともない注目を集める同理論を応用し、津波発生時の避難経路を最適化するプロジェクトに取り組むなど、量子アニーリング研究のトップランナーとして知られる研究者です。
先端研究とは距離が遠いように見える民間プロダクトへの開発協力が実現した背景には「先端技術は社会実装してこそ」という大関氏のこだわりと、『マネパス』のビジョンへの共感がありました。
「量子アニーリングは先端技術でわかりづらいこともあり、なかなか社会一般に使ってもらいづらい。先端なんだからそれでいい という考え方もあるんですが、私は研究成果を早い段階でできるだけ社会に還元したいんです。これは、ある種"野蛮”な志なのかもしれませんが(笑)」(大関教授)
社会実装にあたって大関教授が採用したのは、企業が現に抱える課題や実現したい未来をヒアリングする手法でした。研究者自身が手探りで課題を設定するよりも、社会的インパクトの大きい課題を素早く見つけ出せるメリットがあると言います。多数の企業にヒアリングする中、大関教授が見出したのが『マネパス』の構想です。
「ユーザーのライフプランに沿って最適な資産形成手段の組合せを提案する。まさに量子アニーリングが活きる分野です。鵜沢さんの語るビジョンが明確なのも響きました。ふんわりした相談も多い中、鵜沢さんは『生活者の金融リテラシーの向上の前提として自らのライフプランを考えるきっかけを作りたい』という課題感が明確だった。私自身も人生のライフステージ的に、手軽にライフプランを作れるツールが欲しいと思ったんですよね。それで、すぐに開発に取り組みたくなりました。会話中から既に頭の中で開発に取り掛かっていて『話かけないでください、ちょっと開発方法を考えるんで』という感じで(笑)」(大関教授)
こうして『マネパス』に技術協力を決めた大関教授がプロダクト設計の指揮を取り、開発実務を担うべく当時大学院生として量子アニーリングを専攻していた山城 悠 氏(現・株式会社Jij・CEO)がジョインしました。
理念と先端技術の融合で生まれた顧客目線のリコメンド「金融商品同時設計機能」
技術サイドを大関教授と山城氏が、ビジネスサイドを鵜沢が担当して開発をスタートした『マネパス』ですが、先端技術だけでは解決できない壁が幾重にも立ちはだかりました。
「プロダクトを見直す必要に迫られたとき何度も立ち返ったのが、『生活者が自らの人生を考えるためのプロダクトにしたい』というコンセプトでした」と振り返るのは鵜沢です。
例えば、ライフプランニングにならぶ『マネパス』の目玉「金融商品同時設計機能」。当初は、設計したライフプランを実現するために最適な金融商品の構成を提示する構想でした。ところが、金融事業者から商品情報の詳細を掲載する許可を取り付けることが非常に難しかったことや、提案時に表示が必要となる募集文書の登録作業も膨大になることが判明し計画は頓挫。見通しが甘かったと言われてもおかしくない事態に、鵜沢の心も揺らいだと言います。
「もう一度、何のためにプロダクトをつくるのかに立ち返って、必要な機能を洗いだそうと考えました。目指しているのは、あくまで『ユーザーが自分でライフプランニングできる仕組みをつくり、自らの人生を考えるきっかけを提供する』ということ。そう考えると、必ずしも具体的な商品を提示する必要はなく、むしろ『どんなタイプの資産形成手段が自分のライフプラン実現に役立つのか』をイメージしてもらうほうが大切だなと。それで、仮想の商品、つまり商品の種類や金額、運用期間をモデルで提示する方針に切り替えたんです」(鵜沢)
この方針転換により、開発担当の山城氏も課題に直面しました。
「仮想の商品でもライフプランに応じた組合せ最適化であることに変わりはありません。とはいえ絶対に存在しないような商品を組み合わせてしまう可能性も出てきます。そこで、仮想の商品を『リアルな商品の条件』に近づけるために、ブロードマインドのメンバーと『どういう商品があり得るか』という議論を重ねました。さらに、コンサルティングの事例を地道にインプットしては、商品の組み合わせとフィードバックの繰り返し。『ライフプランの検討のために、よりリアルな体験が必要』という目線をビジネスサイドと共有していたからこそ実現した、気の遠くなるような調整でした」(山城氏)
こうして金融商品の組合せ最適化アルゴリズムを独自開発に成功。保険商品と運用商品が同時に提示される業界初のサービスとなりました。
「ビジネスサイドの理想があってこそ技術が生きる。両者の目線が合ってこそ良いプロダクトが生まれると学んだ」と語る山城氏が『マネパス』のコンセプトを体現するもうひとつの機能として挙げるのが「暮らしの改善提案」機能です。同機能はユーザーがインプットした情報に基づいて、FP視点のアドバイスを表示するものです。
「開発中に鵜沢さんの提案で追加した機能で、ビジネスサイドと緻密なやり取りを重ねて細かくチューニングしました。鵜沢さん曰く『せっかくライフプランを作っても、その良し悪しや取るべきアクションがわからなければ、ライフプランニングを完結できるとは言えません』。その言葉に、なるほど確かにと関心したものです」(山城氏)
細かな条件設定のうえ、パターンごとに膨大な文言を入れ込む開発作業の負担は重いものでしたが、同機能の実装で「人生を考えるためのツール」というコンセプトにぐっと近づいた手応えがあったと言います。
『マネパス』利用で顧客の納得感を醸成
ローンチから3年が経過した今、『マネパス』について大関教授はプロダクトの公平性がユーザーの安心感・納得感につながるのではないかと指摘します。
「結果論ですが、金融商品同時設計機能がモデル商品の提示になったことは非常によかったと思います。サービスを提供する側の論理が挟まれておらず、各ユーザーの人生に最適なプランを客観的に提示している。だから、ユーザーも納得感や安心感を持って自分の人生と資産形成について考えることができるはずです。そういう意味で私も自分の技術が人の役に立っているという手応えを得られました」
山城氏も、自身で『マネパス』を活用するいちユーザーの観点から、大関教授と同様の手応えを感じていると言います。
「実は開発に携わってから今に至るまでに、結婚したり子どもが生まれたりして。ライフプランニングの重要性を強く感じるようになり、マネパスを使っているんです。FPにライフプランニングを相談する際にも、まずマネパスで自分の情報と一応の最適解を把握してからFPと対等に建設的なディスカッションができる。これは非常にありがたいです。開発者からいちユーザーになってみて、そのありがたみに改めて気が付きました(笑)」
鵜沢は、『マネパスwithFP』への問い合わせが増えつつあることから、『マネパス』シリーズの目指した世界観が実現しつつあると見ています。
「最近は、金融事業者に所属する方が個人でマネパスを利用した後に、組織として『マネパスwithFP』に問い合わせをいただくことが増えてきました。いち個人ユーザーとしての体験が良かったからこそ、業務にも使いたいと思ってくださったようで、非常に勇気づけられています。マネパスwithFPをプロのFPの方々に使っていただきながら多くのフィードバックを受けていますが、今後はその内容をマネパスhandyにも反映させ、相互に機能改善に活かして更なるユーザー体験の向上を図っていきたいと思っています。」
さらに、コンサルティング業務で使用した場合に、提案についての納得感を醸成できるツールとして評価が高まっているとも言います。
「金融商品を提供する側が、売りたい商品を提示するだけでは、顧客に欲しいとは思ってもらえません。顧客にとってなぜ必要なのかという、『自分ごと化』できるストーリーが必要です。その点『マネパスwithFP』は、山城さんのように生活者が自身で客観的な結果を把握してから、さらにFPに発展的な相談をするという使い方ができる。生活者にとっても、FPのようなプロにとっても、関係者全員に有用なプロダクトになったと自負しています」
『マネパス』シリーズの特徴は本稿で紹介した範囲にとどまりません。
次回は『マネパスwithFP』のローンチに当たり用意したプロユースの機能と開発の背景をご紹介します。また、プロならではの開発要望に即時対応している精鋭集団の秘密に迫ります。
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マネパスwithFPについて
トライアル実施中!
金融事業者・不動産事業者向けの「マネパスwithFP」は、現在1か月間の無料トライアルも実施中です。
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利用者FPの声掲載中
ローンチ時のプレスリリースには、UIUX・機能紹介、実際に利用したFPの声も掲載しております。是非あわせてご覧ください。
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