【井戸尻考古館】夏の縄文体験レポ(2024.8.3)
はじめに
富士見町の井戸尻考古館では恒例イベントである夏の縄文体験が8月3日(土)、4日(日)の両日にわたり行われました。
標高が高く風が吹き夏は過ごしやすい富士見町ではありますが、それでも例年より気温が高く列島全体の猛暑の影響がここにも感じられました。
初日の夕刻からは遺跡公園で建館50周年イベントのひとつ密教系芸術集団「混沌の首」によるアートパフォーマンスが行われました。こちらについては次回紹介します。
トップ画像は丸木弓と矢です。ただし撮影用のため実際に射る持ち手とは異なります。
昨年の夏と今年の春の様子はこちらをご覧ください
ますます暑い夏
縄文体験は、井戸尻考古館の外の芝生広場にテントを張って行われます。真夏の暑さですが、緑も多くテントに入ればしのげる暑さです。それでも昨年よりも暑いです。
人出はというと昨年と同じかやや多いくらいでしょうか。新型コロナの5類移行後、各地のイベントが復活しています。また今年も隣の茅野市の「茅野ドンパン」と日程が重なりました。そのような中でありながら、まずまずの来場者のようです。リピーターが多いのも特徴です。
体験内容は例年の例の飾り玉つくり、矢じりづくり、丸木弓ですが、今年はカラムシの茎から糸を作るという体験が加わりました。芝生広場と考古館裏に体験ごとにテントが並びます。
飾り玉づくりのテントで、職員やスタッフが案内を兼ねて縄文体験の内容を紹介や大賀ハスの場所など質問にも対応をしてくれます。
体験は基本すべて無料です。そもそも天然の黒曜石やロウ石を使用しているので材料費はほとんどかかっていないともいえます。
イベントの日なので、井戸尻考古館と歴史民俗資料館も無料です。8月1日より建館50年に合わせ常設展示も大きく展示替えが行われています。
丸木弓の的あて
さて、縄文体験を順番に見ていきます。手初めとして筆者の得意とする丸木弓の的あてに挑戦します。考古館建物の裏が会場で職員の方が対応してくれます。手前の雑穀類が育っているところは縄文農耕の実験畑の部分です。
丸木弓とは木の枝をそのまま利用した原始的な弓のことです。イチイの木を削って使っています。弦と矢については弓道用のものを使用しています。
毎回登場の手作り感満載の獲物たちです。職員手作りの段ボール製です。それにしても、難易度が高そうな配置をしています。
テーブルに用意された弓の中から使いやすそうなものを選びます。弦の張りが柔らかい弓を使うのがコツです。ピンピンに張っている弓は選んではいけません。
この弓に決定です。イノシシ(オッコトヌシ)を仕留めたいところですが、先に難易度の低いシカさんを狙うことにします。シカさんは首が出ていて高さがあるので矢が当たりやすいのです。
シカし、いやしかし、当たらないです。3発撃っても当たらず。
隣では見事、頭に命中させているお客さんもおりました。伺うと昨年も来ていたとのこと。リピーターさんが多いのもこちらの縄文体験の特徴です。
シカさんはおいておいて、オッコトヌシ狙いにします。
3回目の矢にて命中です。春のリベンジを達成できたので終わります。それにしても、満身創痍の獲物たちです。普段はこの先の収蔵庫の中で眠っているそうです。
カラムシから繊維とり
こちらは今年初めての体験プログラムです。担当するのは井戸尻応援団とNPO法人こどもの未来を考える会ひこうせんのみなさんです。
カラムシという草から繊維をとり、ちょっとした編み物をするという内容です。筆者はこの縄文体験では挑戦しておりませんが、別の機会に繊維を取ったことがあります。カラムシからの繊維はわずかしか取れず、捨てるところが多く飽きたのを覚えています。
カラムシは人の背丈ほどに伸びて7月から8月に収穫を迎えます。シソに似たような葉をしていますが別の植物です。茎の部分が繊維質になっており、薄皮の部分を剥いで繊維にします。
刈り取ったカラムシは葉を取り、茎だけにします。薄皮を剥ぎやすくするため、一晩ほど水に浸しておいたものが用意されています。
茎を開いて木の板の上で石包丁を使いしごいていきます。残ったのが薄皮で繊維になるところです
カラムシの量に対して、取れる繊維はごくわずかです。繊維は細いのでよって糸状にします。ここまでたいへん手間のかかる作業です。
糸の量では小物も作れます。
飾り玉作り1st
続いて飾り玉作りです。ロウ石とか滑石と呼ばれるやわらかい石を削りネックレスのような飾り玉を作ります。ざらざらした鉄平石にこすりつけて削っていきます。形が出来たところで砥石で磨いて、黒曜石のドリルで穴を開けて紐を通せは完成です。
考古館の職員、学芸員、応援スタッフがいて教えてくれたり、穴あけなどお手伝いしてくれます。
こちらも春のリベンジです。春の縄文体験で勾玉風に削り込みましたが、穴あけを始めたところ、石の目と重なって割れてしまったのでした。
まず、慎重に選んでからロウ石の周囲を少し削り始めたところです。
勾玉の形が作れました。実はだいぶ削り込んでいます。削り込むことを見越して大きめの石を使っています。厚いところは、ゴシゴシと削って厚みを落としたり、曲線を出すために躊躇なく削り落とします。内側の曲線部分は鉄平石の角を使います。
砥石で磨きます。水をつけて磨くと粉状だった削りカスがネバネバになりますが、研磨剤の効果がありますのでそのまま磨いていきます。
だいたいのところで、黒曜石の刃を付けたドリルで穴を開けます。考古館のスタッフが石を押さえていてくれますので、ひたすら手を動かします。先端の黒曜石は矢じりづくりで使用している北海道産の黒曜石です。
紐をつけてもらって完成です。紐はこれまでのうす茶色、こげ茶色に加えて、新色で赤色を用意したそうです。この赤色の紐は投入するや一番人気の勢いだそうで、確かに赤だと石が神秘的な感じになりました。
細かい傷が残っていますが時間があるときに硬めの布とか最後はハンドクリームで磨いて光沢が出せればと思います。
ぼろ機織り
歴史民俗資料館では、紅蓮織りの会のみなさんによる機織りが体験できます。10時~15時で25組までです。今回はご都合により土曜日1日限りの体験になります。春は午前中から一斉に押し寄せて順番待ちでいっぱいになってしまいましたが今回は待ちもなく空いています。
玄関正面の展示スペースに機織り機が3台置かれています。
織った作品を見せていただきました。裂いた着物を横糸にしています。素朴な雰囲気が伝わります。一人30分の時間で15センチの幅の布を織る体験です。
黒曜石の矢じりづくり
再び外へ戻り、今度は黒曜石の矢じりづくりです。矢じりづくりは、夏しか行われない体験メニューです。大人がはまるのはこちらです。
黒曜石のかけらを鹿のツノでプチプチと表面を剥がしとって矢じりの形を作ります。力と時間がかかります。コツをつかまないと思うようには剥がせません。コツがつかめるかどうかがカギです。
さあ、この石から作ります。ただ筆者にとっては黒曜石を削り出すことがまず至難の技なのでそこから会得します。削り出すといいましたが、実際はい層があるので剥がしとって狙った形にしていきます。
安全のため手袋とゴーグルをしてから鹿革で黒曜石を挟み、鹿角で力を加えて黒曜石のガラス層を剥がしていくのです。
S学芸員に教えていただきましたが、うまく剥がれた場合は違う音がするのが分かるようになりました。
1時間近くやってみましたが、うまく剥がれるにはまだ遠いです。外周を剥がし取ったところでギブアップです。黒曜石は記念に持ち帰ります。
飾り玉づくり2nd
さて、もうひとつ飾り玉を作ります。削り始めはロウ石はと下記の画像です。
今度は雨粒型に削り込んでいきます。
黒曜石のドリルで穴をあけます。厚みが出てしまったため確実に開けられるように信州産の黒曜石のついたドリルを使わせてもらいました。黒曜石自体の刃こぼれも少なく難なくロウ石に穴があけられました。
紐はこげ茶色のにしてもらいました。石は乾くと白っぽく細かい傷が残っていることが分かります。磨きが甘かったのです。
おみやげにハスの花托
今年も史跡公園で花が終わったハスの花托を配布しておりました。集合体恐怖症の方は要注意です。ハスの実を取り出して食べてみるのもよいですし、ドライフラワーにするのもよいです。
また、お湯で煮出してハス茶が作れるハスの葉も配布しておりました。ヤカンに葉を入れて15分ほど煮だすと赤味かかったハス茶が作れます。時間の経過とともに酸化が進み紅茶のような色になってきます。味は甘みがあります。
史跡公園の中にあるハス田へ足を運びましたが、猛暑のため誰一人いませんでした。花託を配布しているので、そろそろ大賀ハスは終わりつつあります。漁山紅蓮のほうは今から咲き始めます。
おわりに
以上、井戸尻考古館の縄文体験を紹介しました。例年同じような内容ではありますがリピーター率が高いようです。近い将来、考古館は新館建設で移転しますが、移転後も縄文体験は続けてもらいたいものです。
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