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【誰かの道しるべ(山エッセイ】

生籐山に登った時、急登を登りきった先に偽物のピークらしきものがあった。

周りに比べて高いように見えるが展望はないのでよくわからない。人はひとりがぎりぎり立っていられるくらいの広さしかなかった。道はすぐ先に伸びていたが下り道。どこにも山頂の標識がない。

元々、景観のない山頂だとは聞いていたがここが生籐山の山頂なのだろうか、と戸惑った。

ふと足元を見ると石が置かれていた。
石にメッセージが残されている。

「この先 → 生籐山 J.T」

誰かの置いた道しるべだ。
同じようにここで戸惑う人が多いのだろう。
これを残した人も最初は戸惑ったのではないだろうか。それで親切心でメッセージを残してくれたのか。何度もこの道を歩いた人なのだろうか。想像をしながら残りの道を歩いた。

看板も標識も道しるべも、道に残された親切心だから見ると気持ちが良い。

山を独りで歩いていても、なんだか力を貸してもらっているような気分になる。

石に残された手書きのメッセージ。


また新しい山に登ります。