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【人生ノート277】なお殺し なお奪わんとするか ああ一尺を譲れよ人のために一椀を減ぜよ人のために

めなしかたまノアの方舟


過ぎされば夢のごとけれど

当時は真剣の悩みなりき

昔のわれのごとくに今ある人々を

顧みぬ心をわれは持たず

願わくはわが泣きしごとく

来ん世の人は泣くなかれ

何千年何万年

おそれあい殺しあい

うばいあい恨みあい

血の河はりの山

越え越えて今に悟らず

人のこころ

なお殺しなお奪わんとするか

ああ一尺を譲れよ人のために

一椀を減ぜよ人のために

行く路にゆとりあらんを

取るパンにあまりあらんを

いま見、前に聞くこの苦しみ

なおも悟らず人のこころ

いま乗り出すしけの海

彼岸のともしありやなしや

溺るる人みな来よや神のみ舟に

めなしかたまノアの方舟

溺るる人みな来よや神のみ舟に

めなしかたまノアの方舟

神のみむねぞ

このうつしよに出でしわれ


天の底、地(くに)の底、限り知らねど

星の数生ける数限り知らねど

われは迷わず途(みち)の行くて

神の光前を照らせり


うれしきかなしき

にがき味よき

かおる花落つる葉

結婚(よばい)の謡葬の鐘

そも見きあれも聞く


真理のためにほおえみて

ひとやに毒を仰ぎし人

救いのために神を呼びて

身を十字架にかけし人

正邪を殺し街を焼きて

美姫(びき)とともに宴せし人

酒池肉林その他いろいろ

昔もありき今も絶えず

その話この物語

聞きて思う人の世のさま

途(みち)はつづう空のあなたへ

まだ見ぬ世のいと恋しき

われとわが心を思え

くもりなきか

ねたみ猜みうらみなきか

日ごと夜ごと見よその心

こころこころ妙なる心

見よその心けがれなきか


もゆる心流るる心

水かいな火かいなこころ妙なる心

こころこころこころを見よや

にごりなきや

『信仰覚書』第一巻 

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