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【座右の銘を教えてください】「人生は実験の連続だ」(24歳・教員)

【本企画の趣旨について】
この企画は、私、あじしおが、見ず知らずの人にインタビューをし、その人の人生を根掘り葉掘り聞きながら、「座右の銘」を教えてもらうというものです。

今回は、現在、高校で数学の教員をしていますが、来年2022年4月に退職し、なんとフリーランスで演劇の道へ進む野望を持たれている小沢佑太さんにインタビューしました。教師へなったルーツ、そしてなぜ演劇なのか、思いを聞かせてもらいました。

■高校教師

※以下「あ」=あじしお(インタビュアー)

あ:はじめまして。本日はよろしくお願いします。

こちらこそよろしくおねがいします!

あ:現在はどちらにお住まいで?

今は兵庫県の神戸市で一人暮らししてます。

あ:現在のお仕事は先生をやられているんですよね。

はい。神戸の私立の高校で数学の教員をしています。

あ:ほー、高校の教員ですか。

元々、公立中学の教員になりたくて、去年1年は中学の教員をやっていたんです。1年やって、大体公立の感じは掴んだので、いまはもう少し数学に重点を置いて教えたくて高校で教師をやっています。

あ:では、そのあたりの話から聞いていきましょう。いつくらいから先生を目指していたんですか?

はっきりイメージし始めたのは高校2年生のときですね。

あ:なぜ高校2年生のときに?

高校2年の夏に、大阪と東北の高校生で交流をしましょうという試みがあったんです。ちょうど東日本大震災の4年後くらいだったと思います。おもしろそうやなって思って応募したんですよ。で、現地の東北の高校生との交流もおもしろかったんですけど、そのとき南三陸の海の近くにあるホテルに泊まっていたんですが、語り部バスという被災地をバスで回りながら震災の話を伺う体験をしたんです。

あ:語り部バスですか。

そこで聞いた話が衝撃的やって。で、大阪に帰ってきたころには、「これを伝えなければならない。風化させてはいけない」って真面目な使命感に駆られました。で、どうやったら、いろんな人に伝えられて、命の話を出来るかと考えたら、それが教師だったんですね。

あ:なるほど。

で、そういうのを震災教育って言ったりするんですけど、そこに絡めて、初めて教師として教壇の立つんなら、やっぱり神戸がいいよねってことで。

あ:それはつまり、阪神淡路大震災があったからってことですか?

そうです。やっぱり震災教育が盛んなので。

あ:なるほど。ちなみに、先生として選んだ教科は、なんで数学だったんですか?

正直にいうと、僕は担任がしたかったんですね。なので、教科はそれほど重要ではなかったんです。もちろん数学は好きですけど。

あ:担任をやりたいっていうのは?

教師って子供とたくさん話せるイメージを持っている方が多いと思うんですけど、担任をやらないと意外とそうでもないんです。それこそ、自分のこれまでの経験を話すとか、震災の話をするとかっていうのは、担任じゃないと、子供らに自由に話せる機会は少ない。

あ:「なにかを伝えたい」っていう思いが強いんですかね。

そうだと思います。でも、意外と、僕の言いたいことって、クラス30人とかいたら、そのときに理解出来る子は3人とかで良いと思っているんです。

あ:というのは?

種をまいて、未来にその花が咲いてくれればいいかなって思ってるんです。そのときは何言ってんねんこのおっちゃんとか思ってたりしてたのが、あとになって分かればいい。

あ:なるほど。いまは分からなくても、将来的に役に立つことを伝えたい。

ですね。
例えば、「先生彼女いますか?」ってよく聞かれるんですよ。この質問、子供に聞かれたらなんて答えます?

あ:うーん、難しいですね……。あえて、大っぴろげに「いる、いない」を言っちゃうかもしれないですね。そのほうが、オープンに向き合えそう。

それも1つの答えだと思います。でも、僕が子供の前で言った言葉は「その質問変じゃない?」って言葉なんです。

あ:ほー。というのは?

僕の恋愛対象が女性だということをいつだれが決めたんですか?っていうことなんですね。

あ:なるほど、なるほど。

実際、僕の恋愛対象はみんながイメージしてる女性ではあるんだけど、勝手に決めつけちゃダメだよと。そこから「君たちは現代に生きる子だよね?LGBTって言葉があるのは知ってると思うんだけど」っていう語りで5分10分使ったりしますね。笑

あ:良い先生だと思うんですけど、生徒から見たら変わってる先生じゃないですか?笑 もちろんいい意味で言ってるんですけど。

いや、変人ですよ。そうじゃなかったら毎日あんなnote投稿しないでしょ。笑 でも、例えばそれで心の発達が早い子で自分のセクシュアリティを隠してる子がいたときに、救われたと思うかもしれない。もしくは、何年後かに、ああ、そういえば、あいつあんなこと言ってたなって思い出してくれればいいんですよね。

あ:なるほど。先生の面白さってどこにあります?

短期的には「1年間クラスを見てくれてありがとうございました」っていうので、感謝されるのはそれはそれでいいんですけど、まいた種によって、子供たちが僕が見えないところで成長しているっていうのが、面白さであり、そこに携われているのがありがたいですね。

あ:素敵な考えですね。で、そんな教師生活を2022年に辞めるんですよね?

そうです。

■教師を辞めて演劇の道へ

あ:どうして教師を辞めて、2022年の4月から演劇の方に舵を切っていくのでしょう?

元々、10年後くらいに教師を辞めてがっつり演劇をやるっていうビジョンはあったんです。それが、コロナがあって、社会が大きく変化していく中で、このままずっと自分に教師としてやっていく気があるんかって問い直す時期があったんですよね。

あ:なるほど。

で、決定的な出来事があって。去年新任でクラスを持って、それでいてコロナでイレギュラーな事態に対応しながら日々を送っていたので、体調を崩して学校を数日休んだんですね。

あ:新任でいきなりコロナはきつい……。

で、休んでいるときに、今後も教師を続けるとしたら、休まないで這ってでも学校に行くやろなと思ったんです。今の自分には、体調を崩して万全の状態ではないけど学校に行くっていう、経験値を取りにいく気概がないんだと。この気持ちで教師をダラダラ続けるんは違うんちゃうかなと思ったんです。

あ:そのタイミングで演劇の道へ決心を?

そこからは早かったですね。2ヶ月でその後の指針を決めて、教師を辞めて3年以内に劇団を立ち上げるって思ったんですね。確か、去年の10月頃だと思います。

あ:ちなみに、演劇との出会いについて教えてもらってもいいですか?

一番最初は小学校のときで、クラスの親子行事でクラス劇をすることになったんです。それで始めて脚本を書いたんですよ。それがすごい楽しくて、中学の修学旅行で、吉本新喜劇をやったり、文化祭で脚本を書いて友達と舞台をしたり。舞台自体は成功だったんですけど、僕が本気過ぎて、周りとの温度差がすごかったりして。笑 で、高校に上がって、3年生のときに文化祭で演劇をやりました。そのときはがっつり演技指導という形でみんなを演出して、とにかく本気に取り組みましたね。

あ:そのときは出る側、つまり、演技もやっていたんですか。

本当は、出る側をやりたかったんですよ。でも生意気を言うようですけど、自分だけが良い演技が出来ても、この劇は良い劇だと評価されないと思ったんです。じゃあ、指導側に周って、自分がこだわりを持ってみんなに伝えようと思って演技指導のポジションに回ったんですよね。

あ:高校生とは思えない視点だ……。

小中高と学校に演劇部が無い人生を送ってきたんです。でも、やりたい欲はフツフツと溜まってて、それを高3のときにぶつけたら、やっている過程も結果も大成功で、楽しくて楽しくてしょうがなくて。それで、大学に入ったら必ず演劇をやろうと思ってました。

あ:そこからより強く演劇に関わっていくわけですね。大学4年間は演劇どっぷりって感じですか?

かなりですね。演劇と教育って感じですね。

あ:演劇を作る側の面白さって佑太さん的にどのあたりですか?

まず、演じることのおもしろさは、自分以外の人間になりきれて、それが正当化されるってことですね。簡単にいうと、中二病になりきっても誰も笑わない。

僕、中高生のときって世間体を気にしたり、周りの目を気にして生きていたんです。「自分ってこういう風に思われてるんやろうな」っていうのから外れないようにしてた。演劇をすると、そういう視線を気にせずに別人になれる。それが嬉しかったんですよ。

あ:なるほど。

あと、演出をやって気づいたのは、演劇って自分1人では何も出来ないんですよね。
いろんな技術とか知恵とかを総集合させて、何ヶ月もかけて作ったものが、たった数日のうちに終わってしまう。この儚さがたまりませんよね。

逆に、演劇を見るときにどういう点が面白いですか。

そうですね、僕は小劇場の演劇が好きなんです。音楽でいうとライブハウスみたいな規模です。ちょっとこぢんまりしたところで見るのが好きで。

暗転ていう演出があるんですけど、それを小劇場の規模でやるとほんとに真っ暗になって、顔とか指とかが見えなくなる。演技はどれくらいの近さで演技しているかというと、30cm先で演技してるとか、そのレベルで近いんですよ。だから涙なんて当たり前のように見える。指の震えとかまで見えるし、いま興奮で耳の色変わったなとか、小さい眉毛の動きとかが全部分かるんですよ。その規模でしか表現出来ない世界観があるんですよね。そこが面白さだと思います。

■2022年4月から

あ:2022年の4月に劇団を立ち上げる。そこからは具体的にどんな活動をするんですか?

えっとですね。今考えているのはすごく浅はかなんですけど、とりあえず劇団を立ち上げます。

まず、テント演劇って言ってるんですけど、こぢんまりとした屋根だけ担いで全国を回るんです。こんな劇団立ち上げました、こんなやつらですっていうのをショートコントに近いようなお芝居を広場とかでしながら、ご挨拶に回る。それを1年かけて47都道府県回ります。

あ:おもしろい。ご挨拶回りですか。そのあとは?

で、そこからは出来ればなんですけど、なんとかして小劇場を手に入れます。笑

あ:おお……!

というのも、収益化を図りたいんです。演劇で生活出来る道を模索していきたいんです。

あ:しっかり食っていくことを目標にしているんですね。

さっき言ったテント演劇で全国を回るっていうのでは、まったく食えません。実は、演劇について知っている人なら誰でも分かるのですが、劇団を立ち上げて、いかに自分たちが素晴らしいと思う演劇をしても、劇場を借りていたら、継続的に黒字にするのは、多くの場合困難なんです。

あ:そうなんだ……。だからこそ劇場を手に入れて自分たちのものにすると。

そうです。戦略的に考えているのは、ロングラン公演という手法を考えています。かろうじて収益化出来るのがロングラン公演と言われています。

一般的な演劇って3日連続でやって終わりとかが多いんですけど、そうすると口コミが回る前に終わっちゃうんですよ。なんでかっていうと、場所代にお金がかかるし、そんなに長い期間公演が出来ないから。

本来であれば口コミで広がったタイミングで最終週とかっていうのがやっぱりいいんですよ。自分の劇場を持ったら、極端な話、本気で仕上げた1本を1年間出来るんで。

あ:なるほど。

そしたら、ほとんど練習がいらないから次の展開を考えられるとか、余計なお金がかからないとか、次の事業を考えられるとか可能性が広がっていきますよね。

あ:なるほど。全然浅はかなプランじゃないですよ。

で、テントを担いで全国を回るために今やっているのは、「全国zoom雑談」っていって、全国の47都道県に隠れている演劇関係者の方とZoomさせてもらってるんです。そこで「こういう野望もっているんですけど、行くときお手伝いしてもらっていいですか」とか、そういことを話しています。着々と準備は進めてますね。

■座右の銘を教えて下さい。

あ:では、最後になりましたが、座右の銘を教えてもらえますか?

「人生は実験の連続だ」です。

あ:そのこころは?

ありきたりな言葉で「人生は失敗の連続だ」っていう言葉があると思います。でも「失敗」って理科の実験でいったら、データになってそれが成功につながれば、それって失敗じゃないよなと。そう考えると始めから失敗と定義づける必要もない。

何をするにしても「何かした」ことによって、自分の中でデータになり、それが、次につながるデータになればそれって成長じゃないですか。

「人生は実験の連続」であると自分に言い聞かせて、染み込ませておけば、どんだけつらいことでも、どんなにも意味が分からないことでも、分からないなりに、つらいなりに、それをやってみようって思えるんです。そうやって生きていきたいですね。


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