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【書き出し小説】雨をかじって

 ひしゃげた段ボールと督促状が散乱した部屋を渡る。生ゴミ特有のすえた匂いが便所まで追いかけてくる。黒ずみ切った便座に反吐を吐き、食べたら食べっぱなし、抱いたら抱きっぱなしの畜生同然の己を嘲笑う。どうで死ぬ身のひと踊り、か。
 賭けるものがとうとう命しかなくなったその夜、着信音が鳴った。


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水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。