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ショートショート『時そばのように』

「先輩、そろそろお金返して貰えませんかね……?」

後輩は恐る恐る先輩に聞く。

どうしてもお金がないから、このままだと俺はもうダメだと言われ数年前に貸したお金は30万円程。

「わかったよ。返すよ。で、俺が金借りたのは何年前だったっけ?」

後輩はチラリとカレンダーを見る。

今は2020年11月か……。

「一応金銭貸借契約の内容覚えてますか?」

「わかってるよ。年利10%だろ」

「そうです。それは守ってくれますよね?」

「当たり前だろ。だいたい年利取ってんだから長年借りてる方がお前の得になるんだから別に催促しなくてもいいだろ」

「だって先輩お金返してくれるかわからないじゃないですか……」

「返すに決まってんだろ。まったく……。で、何年前なんだよ?確か平成29年の7月だったよな?」

「その通りですよ。なので……」

そう言って後輩は宙を見て指で計算していく。

「えっと…。令和2年、令和元年、平成31年、平成30年、平成29年。なので5年前ですね。金利は5年分になりますね。」

そう言うとさすがに先輩は違和感に気づき、

「おい、ふざけんなよ。令和2年は今年じゃねえか!だから金利は4年分じゃねえか。この詐欺師が!」

「いや、冗談じゃないですか……。お金返して貰えてなかったからちょっとからかっただけですよ……」

「まったく。いいか、4年分だからな!」

そう言って先輩はお金を下ろしに銀行へ向かって行った。

去っていく先輩を後輩は和やかに見つめ、呟く。

「1年分儲かっちゃいましたね」

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