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ニワトリが先か卵が先か【心の病編②】



「どうしたら元の元気な自分に戻れますか?」

すると医者はこう言った。

「今置かれて環境を変えることです」

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「今すぐはそりゃ無理ですよね」

「だから少しづつ出来ることから変えていきましょう」

「少しでも今辛い症状が軽くなるようにお薬を使ってやっていきましょう」

眠れない。食べられない、少し食べたとしても、お腹を壊す、吐く、気持ちが落ち込む、身体が動かない、死にたくなる・・・・。

「これが薬を飲むことで少しでも楽になるのなら。。。」


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それが…

これから続く辛い毎日の始まりでした。


魔法の薬

医者は私に様々な薬を処方しました。

【睡眠導入剤】
【抗うつ薬】

”鬱”ではおなじみ、お決まり処方。

薬は何種類かを組み合わせて飲むよう医者に言われていました。

最初はこういった薬を飲むことに抵抗がなかったわけでは決して無かった。


なぜなら…



過去、同じように”鬱”と言われた親友が
壊れていくのをこの目で見ていたから…


でも


彼女も、そして私も”鬱”と診断され処方された
薬を初めて飲んだ時


「飲めばこんなにも楽になれるの?」

「これでやっと眠れる」


薬を飲むと今まで苦しんできたことが”魔法にかかった”かのように解放されていった。

当時の私も、そして親友だった彼女もこの”魔法の薬”で少しだけ前の自分を取り戻すことが出来た…


いや

取り戻せたような錯覚を持ってしまったんです。


彼女の話

ここで、親友だった彼女の話を。

中学3年で転校して来た私が初めて仲良くなったのがM美でした。

当時、彼女は母親との二人暮らし。

きょうだいは居ない一人っ子。
身体はとても細くて小さくて一見、守ってあげたくなるようなタイプ。
母親は美容師で自宅兼店舗で美容室を営んでいました。

当時、友達になる子は皆、何らかの事情を抱えている子ばかり。

彼女もまた母親への不信感や、愛情不足もあったんでしょうね。

いつも寂しくて、自分と必要としてくれる人には誰にだって愛を乞うような子でした。

友達と自分の弱い所やダメなところが似ているっていうのはホントにタチが悪い。


「悪いのは大人」

「こうなったのは親のせい」



弱い所をなめ合うように、彼女と私は悪い事ばかりしていました。
夜の街をうろつき、行き場所もなく二人彷徨う毎日。

それでも私が辛いとき、いつも側にいてくれたのは彼女たった一人だけ。

私はM美のことを心から”親友”と思っていました。

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そんな彼女は若くして結婚しました。

それも長く付き合っていた彼ではなく、まだ出会ってわずかの男とのデキ婚。

その裏にはこんなことが。

付き合ってた彼と早く結婚したかった彼女、妊娠したと嘘を言ったり、死ぬと大騒ぎしたり。
そんな彼女に嫌気がさしていった当時のM美ほ彼はM美と少しずつ距離をとるようになっていったんです。

彼女は賭けにでました。

「あなたが結婚してくれないなら違う人と結婚する」

と。

そうまで言えば彼はきっとM美を引き留め、望み通り自分と結婚してくれると思ったんでしょうね。

長く付き合っていた彼はM美に愛想を尽かし、M美は半ばやけくそでその当時のおっとになる彼氏の元へ。
そして付き合って間もない彼と間に幸か不幸かすぐ子供が出来、その彼と結婚をすることに決めたんです。

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2人は結婚式を挙げることになりました。

私は幹事、発起人、友人代表を彼女の為に引き受けました。

結婚までの経緯は決して理解出来ることではなかったし、私が何を言っても聞く耳を一切持たなかった彼女。

心境は複雑だったけど、お腹に宿った新しい命のためにも彼女を祝福しよう、しなければと思いました。

結婚して立て続けに2人目を妊娠したM美。

二人目の出産時に”癒着胎盤”で大出血を起こし、緊急手術で彼女は子宮を失うことに。

またその時の輸血のせいで後にB型肝炎を患い、また子宮を失ったことで心身共にバランスを崩していきました。

M美の夫はと言うと、M美が2人目を出産してから、仕事も続かなくなり、浮気、借金も発覚した。


そして離婚。


下の娘はまだ小さかったけど、彼女は彼女なりに一人で子供たちを育てようと決意し、母親と同居も決め再出発をしました。


初め彼女は子供たちの為に必死に働いていました。

そんな彼女を側で見ていた私も出来る限りの応援しました。


しかし…


その頑張りが長くは続かなかったんです。

職場では人間関係に悩み、2人の子育てに奔走し疲れ果ていきました。

そんな時、まだ若かった彼女は男性に癒しを求めるようになっていったんです。

次から次と男を変えて付き合いと別れの繰り返し。
次第に満たされない心の隙間をお酒で埋めるようになっていったんです。

楽しいお酒はいいけれど、そうじゃないお酒は時に人の心までも蝕んでいきます。

やがて仕事もしなくなり、身体が辛いと言っては病院を何件も回り、やがて


【鬱病】
【パニック障害】


と診断されました。


彼女はそれを機に生活保護を受け全く仕事をしなくなりました。


「働かないんじゃない、働けないんだよ!」

「あんたに何がわかるの?」

「あんたは良いよね?何もかも恵まれてる」



私の何が恵まれてるの?とは思ったけど、反論はしませんでした。

それはなぜか・・・


”彼女を助けたかったから”


だって彼女はいつだって私が辛い時、いつもそばに居てくれたから。

彼女の辛さを受け止め、時に一緒に泣きました。

「出来ることはなんだってするから、頑張って治していこうよ」

そう言って必死に励ました。

しかし、彼女は”うつ病””パニック障害”と診断されてからも抗うつ剤や睡眠導入剤お酒と一緒に飲むようになり、次第に周りから見てもおかしくなり、変わっていきました。


やがて


【双極性障害】
【統合失調症】


と診断されました。

気が付くともう昔の可愛いかった面影すらどこに見つけられないくらい彼女は変わっていきました。


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その当時、私はお店を経営していたので彼女とはあまり会う事が出来なくなっていました。

それでも時間がある時は電話で話すことはありましたが、生活の時間も真逆になり「私冷たいよな」と思いながらも、頻繁に彼女の話も聞けなくなっていきました。

人格崩壊

そんな彼女がどん底に居た頃、私はお店も繁盛し、忙しい毎日を送っていました。

まともに睡眠をとることすら出来ないほど忙しかった私と対照的に、彼女は眠れないと言って夜は酒を飲みそして酔いつぶれ、そのまま昼過ぎまで寝る…そんな怠惰な生活を送っていました。


その頃から私はM美と本格的に距離を置き始めたんです。


彼女からの着信にも出ない事が多くなったし、メールの返信もそのままスルーするようになっていったんです。

するときっと孤独に感じたんでしょうね。
彼女は、お店にも電話をかけてくるように。
営業時間だろうが何だろうがお構いなし。


「今、お客さんいるからあとでね」

「あとで電話するから」


しかし、彼女の電話はエスカレート。
仕事にならない位、鬼電をかけて来るように。

「あんたは昔の恩を忘れたの?」

「私はいつだってあんたの側にいたのに」

「あんたは良いよね、恵まれてて」

「どうしてあんたはうまくいくのに私は何をやってもダメなの?」


そして、当時の私の夫に電話をしては

「あの子、浮気してるよ」

「昔から男をとっかえひっかえほんと、悪い女」

「昔あんなに色々してやったのに平気で裏切る人間だよ」

「あんな女早く別れた方がいいよ」

「会って色々話聞いてあげるよ、あの子の事なら何でもわかるから」


もう24時間関係なく元夫に電話をする。


「もう限界…」


とうとう私は家も店も着信拒否をしました。


そして…


「もう彼女とは縁を切ろう」


そう心に決め一切連絡を取らなくなったんです。

もちろん凄く悩んだけど。

助けてあげたいと本当に思っていたし。

でも…

自分を犠牲にしてまで彼女を救わなけばいけないのか?

お酒と薬で人格まで崩壊してしまった彼女を・・・



私は…


彼女を救うことが出来なかった…。




ニワトリが先か卵が先か…

本当に病気が先?


本当は薬が先なんじゃ…?

薬でおかしくなったんじゃないの?


私は どんどん壊れてゆく彼女を見ていましたた

なのに。


それなのに・・・


③へ続く

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