自分が気にしていることを目の前の人に恥ずかしがらずに面と向かって口に出して言えるかなって話

わたしは学生の頃、女子大に通いながら某ハンバーガーチェーンでスマイルを売っていた。

そのお店は社員とアルバイトあわせて60人くらいの人が働いていて、その半分を大学生が占めた。だからノリが少しサークルみたいで、飲み会も「たまに」から「よく」の間くらいの頻度で開催されていた。
アルバイト同士で付き合ってる人、または付き合っていた人なんかもいて、部活のことしか考えてこなかったくそまじめな元吹奏楽部員が大学生とはなんぞやを知るに相応しい場所だった。

当時のわたしは、恋愛経験値がほぼなく、話せる恋の話は淡い片思いのものしかなかった。彼氏が欲しいと思ったことすらなかった。
そんな自分も否応無く大学生の洗礼を浴びた。みんな恋の話ばかりしていた。会えば「彼氏できた?」「彼氏つくりなよ〜」と言われた。

通っていた女子大では“6月パニック”なるものがあった。1年生の6月までに彼氏ができないとずっとできないよというジンクスだった。今でこそなんじゃそりゃと冷静に対処できるが、その時は自分の周りが世界のすべてに感じていた。

彼氏がいない自分はおかしいのかな。
人間的に魅力がないから彼氏ができないのかな。
そんな気持ちが毎日脳内を渦巻いていた。
自己肯定感が下がる一因である。

当時のわたしは原宿ファッションと、偏った邦ロックが好きな18歳だった。イメージしていただけるだろうか。

しかもかっこ悪いことはしたくないという謎の性分すらあった。なにかを始めるにも練習の状態は見せたくないのだ。

バイトを始めて数ヶ月、毎日を何の疑いや罪悪感なく楽しむ仲間たちを相変わらず羨ましく思っていた。
それでもみんなのことは好きで飲み会には参加し続けていた。

ある飲み会の前、美人で上品な3個上の先輩と飲み会に行く機会があった。
落ち着いた声のトーン、自然な微笑み、相手に気をつかわせないくらいの心地いい気遣い、程よい歩くスピード。全てが完璧である。

「あゆみちゃんは彼氏いるの?」
ああ、この人もまた聞くのかと思った。

「いないですよ〜。いたこともないです。へへへ。」
「そうなんだ。わたしもね、付き合ったことないんだ。」
驚いた。ものすごく。
こんなに綺麗なのに。

「そうなんだよね〜。あゆみちゃん好きな人もいないの?」
「いや、なんかそういうのわからなくって。」
「わたしね、この間小学校からの同級生の男の子と再会してね。色んな男の人がいるけど、同じような環境で育った人っていいね。安心するね。人によってなにがいいかはそれぞれだけど、あゆみちゃんも心地いい人が見つかるといいね。」

わたしにはできない。すごい。
というのがその場の感想だった。
自分はどうしても頭でっかちで、人に嫌われたくなくて、かっこ悪いところも見せたくなくて。彼氏がいないなんて年下の人に言えなかったと思う。
当時はそれが自分の中で大きすぎる問題だったから。

その瞬間瞬間が連続して毎日を形作っていく。だからその瞬間瞬間に今の自分が考えられる等身大のことに悩んで、少しずつ書いたり話したりして、過ごそうと思う。
淀んでしまうから。

バイトの先輩ありがとう。

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