Annaの日記 ハイリスク妊婦の末路⑨
夜、泣き果ててどんよりしている時に、女医の先生が「へその緒」入れをもって病室に入ってきた。
順調に産めば、子供は新生児と産科と同じ場所にいる為様子がわかるが、NICUは小児科の担当となりフロアも違うので、赤ちゃんの状況は分っていなかったが、とりあえず出産が終わった労いの言葉をくれた。
箱に貼ってあるシールをみて・・・
4344g
へ??よ・・よんせん・・・
そら出てこれないわ・・・
先生の話によると、赤ちゃんが大きすぎて、肩がはまり降りてこれないから陣痛すらも始まらなかった。
そこに促進剤で無理に出そうとして、赤ちゃんにストレスがかかり、羊水の中でうんちを漏らしてそれを飲み込んでむせたせいで、肺に小さな穴が開き、その結果酸素の値が上がらない状況になった。
羊水がだいぶ濁っていたため、洗浄を丁寧にしたが、そこからの母体の感染症のリスクはある。でも、今日手術を進めた事は間違いなかった。明日まで待っていたら危なかったかもしれない。
赤ちゃんの命には問題ないので心配はいらない。
心底この時、女医の先生が担当してくれて母子とも助かったと思った。あののんき先生だったら本当に母子とも危なかったかもしれない。最後の検診で3500gと判断して、ここまで大きくなってると踏んでもいなかった。
「命に問題はない」
この一言だけでも、かなり救われ、泥のように寝た。
腹痛と共に朝が来た。
今日赤ちゃんが見れると言われたが何時か分からず、また不安になったが、まずは許可が出たので
腹を押さえながらシャワーに行った。
驚くほど痛かったが、トイレすらいけない人が
多いので、看護師さんらにも驚かれた。
昨日からの匂う汗を存分に流して、狭いシャワールームにある椅子に座り、いつもより
熱いシャワーを流し続けた。
昨日からの出来事が大きすぎて頭の整理を
するにはいい時間になった。
NICUはコロナもあり、家族は完全予約制となっていた。
昼過ぎ、夫は私がまだ顔を見る前に2回目の面談をした。
終わって私の病室に来た時に、動画を見せてくれた。
ゴクゴクとミルクを飲む動画だった。
その力強い飲み方、泣き声を聞いて涙が止まらなかった。
普通の子でも、二日目でここまで飲める子はそういないらしいと嬉しそうに夫は私に補足してきた。
きっとこの子は大丈夫。
多くを語ると心配しかないと思い、親には最低限の経過しか話をしていなかったが、
親にもすぐにこの動画を送った。
全く同じ感想がすぐに返ってきた。
昼過ぎに私の面談がくると聞いていたが、遅れるに遅れて夕方のその時間が来た。
コロナの関係で、痛み止めを飲むと入室出来ない(発熱がわからないため)というルールがあるため、飲むのを我慢していた。
気持ちだけが前のめりになるが、痛みもピークだった。
看護師が心配して、車いすで1階上のNICUの部屋まで連れて行ってくれた。
かなり緊張した。
トツキトウカ、まさに一心同体で生きた子供との初対面。
コウノトリでみたドラマの世界にまさか私が踏み入れるとは全く想像もしていなかった。
NICUというデリケートな場所ともあり、丁寧に丁寧に手を洗い、消毒をして待合室で呼ばれるのをまった。
初めて会う小児科の看護師さんに挨拶をして、入室をした。
そこではドラマで見たような、本当に小さな小さな赤ちゃんが何人か頑張っていた。
あまり大きなNICUではなかったが、一番奥にいるとの事で連れて行ってもらえた。
はじめまして・・・
「あんな」ちゃん・・・・
やっと、やっと名前を呼べた。
写真でみるよりずいぶん小さく、でもNICUにいる他の子に比べると4倍ほど大きな大きな赤ちゃんが保育器の中で寝ていた。
手を入れても大丈夫との事で、そっと手を入れるとぎゅっと握り返してきた。
その力強さに、今までの不安が一気に飛び、この子は大丈夫だという自信が沸いたと同時に、
やっと顔が見れた喜びと、安心とで感情が爆発して看護師さんお構いなしに大泣きしてしまった。
その声にびっくりしたのか、あんなも目をあけてじっと私を見てニコっと笑った。
私も、つられて笑い、それと同時によく見るとNICU用の酸素カプセルだからか、あんなには小さく足がM字開脚の状態になっていて、思わず「部屋きつくない?」と笑えて来てしまった。
手術後で笑うととんでもなくお腹が痛かったが、最高に幸せな時間だった。
まだ、酸素値が安定しないとの事で抱っこは出来なかったが、一気に世界が明るくなった。
あまりに痛くなっていたので、半時間くらいで病室に戻った。
その後、NICUの先生が来た。
嬉しい知らせだった。
経過が良ければ、月曜日にレントゲンを撮って、問題がなければ母子同室をスタートさせますと言われた。
安堵で一気に疲れが出て、その日はかなり早い時間に寝てしまった。
今まで聞くのが辛かった隣の部屋からの赤ちゃんの泣き声もいいBGMになった。
~続く~
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