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創造的思考力を鍛える - 価値創造人材育成プログラムに通ったリフレクションノート前編

前回の記事「"意味をデザインする"を考える」を書いていた時から、価値創造や意味転換をするには、自分には今何が足りないか? どうしてこの前の案件は、既存から少し使い勝手の良い「リノベーション」になってしまったのか? 根幹の問題や、価値転換のヒントを見つけても実現する力が自分には足りない、とモヤモヤ。

そんな時、同僚に教えてもらった武蔵野美術大学の履修プログラムにヒントがあるんじゃないかと思い参加することにしました。

武蔵野美術大学 価値創造人材育成プログラムとは

イノベーション、ビジネスデザイン、サービスデザイン 、UXデザイン、アートなどの領域で第一線でご活躍されている先生方が、市ヶ谷の武蔵野美術大学造形構想学部クリエイティブイノベーション学科で、社会人向けの履修プログラムを開講。

デザイン思考やアート思考といった特定の思考法にとらわれず、本学が90年以上続けてきた造形教育で得た知見を最大限活用し、多様な視点を調和・統合させることを通じて、新たな関係性を⾒いだすPBL型プログラムです。
10日間のプログラムを通して、新規事業を創出するための視点や考え方を得ることが可能となります。

VCPについて- 武蔵野美術大学「価値創造人材育成プログラム(Value Creation Program)」

スケジュールはこんな感じで、毎週土曜6時間みっちり10回。
当初は毎週あるからキツくないかな、と思ったけど、案外ダイジョウブです。

授業後に登山行ったり、スポーツしてる人たちもいました。(超タフ)

前置きが長くなりましたが、アートの授業4回を終えたリフレクションをまとめて行きます。

3日間で観察力、批判力、構想力を鍛える

前半に膨大な情報量の講義を受け、後半は個人で課題と向き合って制作していくスタイル。
それぞれの授業の内容を振り返っていくと数万文字になるので、まとめからお伝えしていきます。

まず、創造的思考力には、基礎教養としてアートの世界で培われる「観察力」「批判力」「構想力」をそれぞれ鍛える必要があります。

観察力の課題では、造形的アナロジーを学ぶ。

観察力とは、物事を細部まで見る能力や、物事を洞察する力を指しますが、注意力や分析力、記憶力が含まれます。
そして観察を行っていると、好奇心を引き出されていく。
また、この力は、美術や設計などのクリエイティブな分野においても重要なスキル。観察力を養うためには、環境に注意を払い、物事を注意深く見ることが大切です。

それぞれの立場から見る世界は、どれも違っている。という生物学の「環世界」という考え方も大事な観点を学びました。(まだまだ勉強中)

観察力を鍛える参考図書は以下がおすすめ(先生談)

ただし、見たままを捉えるのでは無く、アナロジーとして他の物事や事象で捉え直すことが、多くの情報に対し深層理解や、長期的な記憶の定着、クリエイティブな発想、スムーズな相互理解に役立てることもできます。

アナロジー(類推)とは
発想力には大きく2つの要素がある。第一が「多様な経験や知識を持っていること」、そして第二が「それらをいま発想の対象としているものに結びつけること」である。アナロジーはこの2つ目の力に貢献する。
(中略)
アナロジーとは複雑な事象に潜む本質的構造を見抜き、それを別の分野に応用することである。この「構造を見抜く」というのがアナロジーの基本的考え方

「アナロジー思考」細谷功 (著)


無意識を風刺するクリティカルデザイン

観察力で学んだことを踏まえ、新たな視点で他者に対して前提への「疑い」を誘発するために、どう仕掛けるかを考える講義およびワークです。

クリティカル・デザインは、日常生活において製品が果たす役割への視野の狭い思い込みや先入観、既成概念に挑戦するために、思索的なデザインの提案を行う。クリティカル・デザインはデザインの手法というよりもデザインに対する立場、姿勢を表すものである。

Royal College of Art アンソニー・ダン教授「Dunne & Raby」のウェブサイトにて

デザインによって、悪しき罠を作ることも、美しい罠を作ることもできます。「北風と太陽」旅人はコートのように。(旅人は自分から脱いだのか?それとも脱がされたのか?)
このように、デザインには、ユーザーに対し、心理や行動を誘導し、〇〇してもいいかな?と思わせることができます。

ソーシャルネットワークの7つの大罪でも大きな社会問題を起こしました。

ヒットサービスの裏に7つの大罪あり

僕的には人間が持つ “7つの大罪 (Seven deadly sins)” をくすぐるサービスが良いよね。これらは人間が本能的に感じる欲求であり、ビジネス的にもユーザー心理に訴え易い。

LinkedIn創設者リード・ホフマン


そこで、デザインはこのままで良いのか?という批判をする必要がある。
例えば、偽の情報を伝えるデザインは避けられなければならないし、デザインが偏向的な情報を伝えることによって、人々を不正な行動に導くことも避けられなければならない。 また、デザインによって、アディクションを起こすも気をつけなければなりません。

ある習慣に「不健康にのめりこんだ・はまった・とらわれた」状態を、アディクション(=依存症・嗜癖)といいます。社会の変化の中で、アディクションの対象は増え続けています。
ネット依存、ゲーム依存、占い依存、スマホ依存、SNS依存……。
手軽に気分転換したり、手軽に人とつながったりする方法が「商品」として次々に提供される中、単なる趣味や習慣と、アディクションとの境界線は、ますますあいまいになっています。けれどいずれも、依存が進行すると、学業や仕事への悪影響や、心身の健康がそこなわれる、家族の混乱と苦痛、などが起きてきます。

アディクションとは?

デザインの倫理は、 人々にとって良い影響をもたらすことが望まれており、それは人々が健康的で安全な生活を送ることができるようにすることを意味します。
このように、デザインの倫理は、ユーザー、社会、そして環境に対する責任を持つことが求められます。これは、「クリティカルデザイン」という、デザインによって生じる問題や社会的問題を認識し、解決することを目的とするアプローチです。このアプローチは、デザインによってもたらされる影響を考慮し、批判的に検証することを重視する必要があります。

デザインの倫理観・批判力を学ぶ参考図書

「それは、社会でどう存ったら良いか」と社会的機能を構想する

時代認識、テクノロジー、メディア文脈を踏まえてものごとの新しい繋がりのあり方を構想する講義およびワークです。

アートの授業の最終プログラムは、グループワークでした。
各人「新しい博物館(美術館を含む)を構想せよ」というお題目に対し、「芸術文化」の社会的機能を考えてゆく課題がだされます。

社会とは何か?芸術とは何か?文化とは何か?表現とは何か?
創造(クリエイション)と社会との接点から考えていきます。(難題すぎる)

個人的にその着眼点ずるい!と思った方のテーマ。
お母さんミュージアムでした。(ご本人に許可取ってないので詳細は避けます)

まとめ

創造的思考力の基礎教養アートワークは、個人的にはすごく苦手な講義でしたが、苦手だと最初から自負して参加しているので、じっくり内省していこうと思います。
特に観察力は日々の散歩からでも取り入れられるので、少しずつでも鍛えていこうと散歩量を増やしました。

途中紹介した観察力本の著者の菅 俊一さんの企画展も面白かったので、情報を追っていくと良いかもしれません。

それでは、この情報があなたの何かの参考になったら幸いです!
ごきげんよう。


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