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偽物のドレスで着飾って

わたしたちは少しはやく大人になりすぎたのかもしれない。 まだ幼いままの心を誰にも抱きしめてもらえなくって、だから自分で自分を祈るように抱きしめていた。 骨が折れるほどつよくつよく、窒息するまでわたしはわたしを抱きしめている。 何度越えても訪れてしまう残酷な夜。 ひとつだって無くしたくないわたしたちの大切を奪うのはいつだって自分自身の幼い心だった。 綺麗なものを綺麗なままで保つことができなくて、無責任に汚してしまう。 根拠のない希望と、無理やり貼り付けた強さで作られた、わたしの

    • 都合のいい神様

      自分に都合のいい神様で宗教ごっこ、幼すぎたわたしの唯一の祈り。 永遠みたいだった。 短すぎる永遠、一生のように思えた一瞬。 すれ違う運命だった、きっと。 運命なんて人々が創り出したまやかしで、望まない運命は力ずくで覆してやればいいと思ってた。 それでも、きみの魂とわたしの魂が大きくズレたその時、もう会えないと思った、わたしたちはこのままじゃ本当の意味で壊れると思った。 わたしたちはこの世界線で奇跡みたいに引き合ったね。 長い長い一生の中の一瞬、重なり合っていた瞬間が確かにあっ

      • 血まみれの青春

        擬似的な神様に魂を売っていた。あの音楽は絶対にぼくを救いあげてくれる、そう信じることだけがぼくにとっての救済であり祈りだった。本当はどうにもならないと分かっていながら、ただ信じることしかできなかった無知で幼い魂、あの頃すくい上げることができなかった欠片のひとつひとつを今になって拾い集める儀式。そうして集めたものを燃やして出てきた灰は、簡単に風に飛ばされてしまうくらい粗末なものだった。だけどそんなものが、そんなものだけがあの頃のぼくの全てだった。呪いみたいに通学路を照らす太陽と

        • 絶望すらもきらめいて

          絶望もピンクで着飾ってかわいくしたい。 かわいい絶望ってなんか嘘っぽいね、でもこうすればわたしの抱えた絶望も無駄じゃなかったような気がして。 絶望を肯定するためのピンク、絶望すらもきらめくステージにして踊り続けるためのピンク。 いつかの傷はときめきで溢れたタトゥーで上書き保存。 絶望を土台にしてきらめくステージの上に立つきみは、わたしだけのアイドル。 ずっと輝いていてね。 いつか一緒にステージに立って、同じだけどひとつも同じじゃないひかりを放とうね。 きみの絶望がひかりに変換

          痛いままで

          きみもわたしも、本当は痛いことを忘れたままで生きたかったね。痛いことにすら気づけない鈍感さを持って生きたかったね。痛みだけが何も無かった青春を照らすひかりだった、閃光みたいに真っ直ぐで、皮肉なくらいに眩しくて。記憶はいつか腐敗していく。それでも、痛みだけはどうか美化されないで痛いままであってほしかった。忘却によって痛みは癒えていくけれど、あの時痛かったってことだけは忘れないままでいたい。あの時の傷を永遠にしたかった、思い出しては時々えぐられる痛さが苦しいのに気持ちよくて辞めら

          痛いままで

          きみの走馬灯になりたい

          きみが最期を迎える時に、脳裏に鮮明に映し出される走馬灯のようになりたい。 ずっと解けなかった呪縛を解いてくれた恋、どれだけ記憶が廃れていっても忘れることのない純粋な桜色の恋。 キラキラしてたあの感情、口に出した途端に零れ落ちて消えてしまいそうだから誰にも内緒の淡い輝き、記憶の片隅に保存して時々取り出すわたしだけの小さな幸せ。 この幸福は誰にも触れさせない。 きみはきっとわたしだけのものになる。 一生忘れられないようなトラウマをきみの脳に植え付けたい。 何があってもわたしのこと

          きみの走馬灯になりたい

          永遠になる速度で

          本当はきみを抱きしめたかったね。 自ら孤独を選んでしまうきみのその脆い強さを抱きしめたかったね。 君に追いついた時の景色をどうしても見てみたかった。 どれだけ手を伸ばしても指先をかするだけで掴ませてすらくれなかったね。 そんなに生き急がなくていいんだよって本当はきみを抱きしめたかった。 速く生きるということは孤独と戦うということ、いつだって先を行くきみにはそのくらい分かっていたはずだよね。 追いつけなかった人の存在って自分の中で永遠になってしまうんだよ。かなしいことに。 生

          永遠になる速度で

          死にたがりの君へ

          天国にも地獄にもなるこの場所でわたしたちは這いつくばって生きてきたよね。わたしたち、生きるか死ぬかの二択でなんとか生きる方を選んで進んできたよね。死ぬ勇気がないから生きてるだけだなんてきみは言うけれどきみのその勇気の無さにわたしは救われているよ。一生そのままでいてね。きみはきみの選んだ戦場で生き抜いて。例えそこがベッドの上だったとしても。例えそれが馬鹿な男の隣だったとしても。それでもきみの選んだフィールドできみは生きていて。それで最後にひかりを掴もうよ、隣で一緒に笑いあおうよ

          死にたがりの君へ

          愛してるが死語になる前に

          ぼくの「初めて」が死んでいく。今思えばを繰り返して永遠に今を掴めないでいる、初夏。早く大人になりたかったのに今ではもっと若くなりたい。昔はやったことよりやりたいことが多かったのに今ではやったことの方が多くなってて困る。まだまだやりたいこと、あるけど。TikTokやSNSに住んでいる年下のかわいい女の子、すごくきらきらしてる。背景に映っている黒板、ぼくの戻れない青春。音楽が流行りとして消費される時代、ちょっと調べれば簡単に可愛くなる方法がわかる時代。当たり前のように学生が二重整

          愛してるが死語になる前に

          取り返しのつかないことがしたいね、とぼくは笑って

          苦しみの核の部分を狙うようにグサグサと突き刺されている。ナイフで突き刺さしては抜かないまま、血しぶきすら飛び散らない重苦しい痛み。何本ものナイフが突き刺さった心臓、立ち入り禁止のテープを引き剥がすから誰か助けて。きみとの魂の通り道は工事中、永遠がないことだけが今はただ救いです。涙の代わりに手首から溢れた一筋の血液がぼくの生を象徴している、痛い、痛い、痛い。産んでくれてありがとうも言えないまま大人になりました、酷く薄汚れた大人になりました。産まれてきてごめんなさいと言うことはき

          取り返しのつかないことがしたいね、とぼくは笑って

          孤独の花

          破壊した世界が壊さないでと泣いている、今更。沈んでいく、沈んでいく、沈んでいく、ぼくときみの島が。ぼくは世界がおわる音をただ聞いていたかった。きみは誤魔化すようにはにかみながらぼくの名前を呼ぶ、今この瞬間を永遠と名付けたい。流れ星はぼくときみの間をすり抜ける。短命だから美しいなんてどうか詭弁であってほしい。寂しさを養分にしてできた宇宙に意味があるなら教えて欲しい。無限に続く孤独という一輪の花を誰か拾ってください。壊した一瞬をひとつひとつ拾い集めたら、いつかまた花束になりますか

          孤独の花

          美しいもの

          美しいものを見ると自分を殺したくなる。だから美しくないものを見ては安心する。公衆便所、路上に放置された煙草、鏡の中。住宅街のゴミ置き場が好きだ。ゴミ袋をカラスがつついて破れた袋の隙間から屑が溢れ出る光景。自傷行為みたい。 誰かを救うことに救われないで。きみには誰も救えない。それでいい、それでいいんだよ、そのままでいて。誰も救えないまま幸せになって。きみには幸せを掴む権利がある。誰かの孤独に触れて傷つくのはもうやめよう。誰かの寂しさの刃で血を流すのはもうやめよう。きみの優しさは

          美しいもの

          恋は快楽

          ぼくがきみを好きでなくなったとき、きみがぼくを好きなままでいられるという根拠がどこにあるだろう。ぼくがきみを好きでなくなったとき、きみがぼくを綺麗と言い続けられる根拠がどこにあるだろう。きみは与えられる恋に恋をしている、ぼくなんかよりもずっと。寂しさを温め合っているときにだけ湧き出てくる感情を恋と呼びたくない。孤独を埋め合っているときにだけじわじわと押し寄せてくる気持ちを恋と呼びたくない。恋はもっと触れるのもはばかられるくらいに神聖で美しいものであってほしいと願う。それでも、

          恋は快楽

          少女は春にゆめをみる

          春ってあの人みたい、あの人みたい、あの人みたい、だから嫌い。きみは男に魂を売っては心を黒く満たしていた。桜色の春を薄く汚しては世界を誰かで染め尽くしていた。残酷に突き放しては暴力みたいに抱きしめる。春は。 愛は世界を救わないし恋は魔法なんかじゃないし、きみの好きなあの人はきみの孤独を救わない。それでもきみは完璧な少女だ。 お願いだから男なんかに世界を変えられてしまうような女の子にはならないで。でも男なんかに人生狂わされちゃうような単純さもかわいくて愛おしいよ。 きみの願う先に

          少女は春にゆめをみる

          インターネットの海に揺られて

          きみが生涯二度とあの子のことを思い出さなければいい。わたしはあの子を思い出すときのきみが嫌いです。恋が生まれては死んでいく。きみはインターネットというどうしようもない異空間でまだあの子のことを探している、呪いをかけられたように迷い込んでいる。きみは誰かを救おうとすることに救われている、誰かに優しさを与える度に。猥雑な情報で溢れるインターネットで孤独を紛らわす、SNSという遊戯できみは。子供みたいに泣いているね。きみは誰も殺したくないと言いながら自分自身に刃を向けることをやめな

          インターネットの海に揺られて

          過去の旅人

          そのときぼくは、まだ赤ちゃんだった頃のぼくをじっと見ていた。目が合うと何故か駄目なことをしている気分になり、思わず目を逸らしてしまう。ぼくは今、過去から現在へ向かう列車に乗せられている。列車の環境は酷く劣悪で、まるで毒を含んでるかのような空気感で満ちていた。頭が揺れてうまく視界が定まらない。過去を見ているかと思えば、「今の自分」を客観視している自分が突如現れて、視界は素早く切り替わる。列車に乗ってからまだ5分しか経っていないような気がするけれど、もう何十年もこの列車に乗せられ

          過去の旅人