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ネゴシエーター〜学内トラブル交渉人 第5話 どうして匿るの?犯人の願いとは

「辞令は流石に早すぎるよ、まだ1か月半しか経ってないのに。」輝咲勇作(きざき ゆうさく)は心の中で呟いた。恐る恐る、記載事項を読む。
「辞令 輝咲勇作 組織犯罪対策部A課 警視長付係員 以上」

勇作は、もう1度声に出して読む。
「辞令 輝咲勇作 組織犯罪対策部A課 警視長付係員 以上」

この辞令は、山中里志(やまなか さとし)警視長の業務を手伝うということだろう。交渉部には、机も椅子もなくなってしまったからやむを得ず、勇作はA課に向かった。
……………
デスクワークが多いのか、たまたま事件が少ないのか。組織犯罪対策部A課は、ネゴシエーターに要請をかける頻度が高い部署で、多くの者が外に出ていることもあるのに、この日は空席が殆どなかった。

勇作の席は山中の視界に入るところに置かれていた。山中が近づいてくる。するとその場の視線が全て山中と勇作に向けられる。居心地が悪いというか、居にくいというか、監視する人の目が集まると、息が苦しくなる。この心理に及ぼす影響をストレスというのだろう。勇作は、
「おはようございます。本日からよろしくお願い致します。」
と深く頭を下げた。山中は、
「4ヶ月の期間だ。その後戻す。」
と課内に響き渡る声で伝えた。

A課に入るのは容易ではない。いくつもの実績と上司からの理不尽な指揮命令に従い続けて辿り着くこともあり得る可能性がある程度の場所だった。にもかかわらず勇作は、推薦でポンと入ったのだから、勇作にとって本望でなくとも、周りは疎ましいだろう。
山中の大きな声は、少しだけだから勇作をA課の仲間として受け入れることを辛抱する様にとの、課内へのメッセージにも聞こえた。
……………
勇作は何をするのか分からなかったが、研修のときも、出社のときも、昼時も山中の視線の中にいた。

警視長たる者が来るべきではないような、蕎麦屋の相席に着いたときには、流石になぜ自分を目に掛けてくれているのかと理由を聞きたかったが、聞いてどうするのかとも思った。

そんな勇作を見て、
「疎ましいか?」
と山中は告げた。勇作は、
「疎ましいわけではなく、どうして自分かなぁと。」
と言った。

山中は、その質問には回答しない。ただ、
「この部署にいる人は、現場が一緒になることもある。息を合わせ合えるように。」
とだけ言った。

勇作は、山中の言葉への返事が湧かなかったから蕎麦を啜る。そんな勇作を見て、山中は、
「他人の心の中、例えば美味しいとか分かるのか?」
と聞いた。勇作は、そういうことではないと思った。
「上手く言えませんが、僕はあの人嫌いとか、こいつの話は煩いなとか、そんな他人への思いは感じます。美味しいとかの独り言みたいな感想はあまり感じないです。」
山中は、
「そういうものか。」
と言ったが、それ以上、何も言わない。

山中も勇作もただ夢中で蕎麦を食べた。
……………
会計をしようと立ち上がったところに、勇作のスマートフォンが鳴った。
「立て籠もり事件。ネゴシエーター輝咲、すぐに向かうように。」
受話終了をした勇作に山中が、
「私も行こう。」
と言い、専属の運転手付き社用車に勇作も乗せた。
勇作は、いいのか?と思ったが指示に従う。そして到着までに送られてきた調査票を読むことに専念した。
……………
29歳男性 宮村陽希(みやむら はるき)が、元交際相手の34歳女性 深雪初羽(みゆき はつは)を人質に立て籠もっている模様。要求は、初羽の父親を呼び出せというものだった。

初羽の親に初羽との結婚に反対されて、人質にしたのか。
初羽を宮村がストーカーしているのか。
初羽の父親に何か言いたいのか。

分からないが理由がいくつも考え得る事件だと勇作は感じた。
………………
現場に着くと、山中と勇作は直ちに社用車からワゴン車に乗り換える。予定では指揮を採るはずであった、東山丸雄(ひがしやま まるお)は、山中警視長を見るなり後部座席に動く。山中は、
「すまんな。今日は私が指揮する。」
と言い、勇作の横に座った。

「構いません。よろしくお願いします。」
と言う東山の顔は怒りで火山を爆発させたように赤くなった。しかし勇作は、東山の怒りを抑えるために気を配る程の余裕はなかったし、興味関心もなかった。
そして、いつものように犯人にマイクを向ける。
「こんにちは。僕は輝咲勇作です。貴方は?」
と話す柔らかな勇作の声が、ワゴン車内の苛立ちを掻き消した。
「名前は宮村。深雪初羽の父親を呼べ!」
宮村の声は安定していなかったが、それは捕まる恐怖や自己防衛から来ている震えとは違う気が勇作にはした。何が宮村を不安定にさせているのだろうと思った。

勇作は、50代ツインテール女性、都丸ひろ子(とまる ひろこ)に、人感センサーから判る宮村と人質である初羽の位置関係を聞く。
「座っていますが、宮村が初羽を後ろから抱きかかえるようにし、右手に持った刃物を首より下に向けている様に伺えます。」
と都丸が回答した。
……………
抱きかかえる?初羽は華奢なのか?
勇作は調査票を読むが、身長160センチ中肉中背と初羽は小柄ではなく、宮村は身長170センチ痩せ型と大柄ではない。
これでは初羽が宮村を振り払うことを可能にし、逃げる隙を与えることになりかねない。
犯人が無知で不注意なのか、後ろから抱きかかえる程度でも2人の関係性が初羽を逃げさせないのか、何かあるはずだと勇作は頭に残した。

さらに、マンションの賃貸借契約が3日前と最近になって開始したことが気になった。破局しているのならマンションを借りないだろうが、調査票には「元」交際相手となっている。この点をまず聞くことにした。

「宮村君、このマンション、借りたばっかりだよね。初羽さんと二人で暮らす予定だったの?」
勇作は気になったから聞いただけであった。

しかし、宮村は思わぬ質問に不意を突かれた。
「とにかく、彼女の父親を連れて来い!早くしろ。」
とだけ言った。

勇作は、宮村の反応に構わず質問を続ける。
「それとも違う人と住む予定だったの?」

宮村は別の人との言葉に怒りが沸き起こり、即座に否定した。
「そんなわけないだろ!初羽と住むんだよ!!」

宮村の大声を耳元で聞いているはずなのに、初羽はビビるような声を出さず、また、息遣いにも変化はない。それはまるで怯えていないようにも感じた。だから勇作は、敢えて言う。
「そうだよね、ごめんね。初羽さん、混乱したよね。」

初羽が、宮村に別の女性がいると思い込むことがないように手を打ったのだ。それは初羽と宮村が今も交際中であることを前提にするものでもある。
しかし、初羽からの返事はない。
宮村も黙る。

ネゴシエーターにとってここでの沈黙は好ましくない。犯人に考える時間を与えてしまうと質問に対する解答がなくなったり、虚偽になりしてしまい、解決から遠くなるからである。だから勇作はテンポよく会話を進めるための質問をすることにした。
「2人が出会ったのは、何年前?どこで?」

宮村からの回答はない。だから勇作は続ける。

「僕、彼女が欲しくてマッチングアプリ始めたんだけど、うまくいかなくて。カップルってどうやって出会うものなのかなぁと思ってさ。」
勇作は、宮村と自分との関係をまるで友人同士かのような距離にした。そう、宮村が黙らずに回答するようにしたがったのだ。

宮村は、
「僕のバイト先の百均に小道具の買い出しで、彼女が学芸員の仲間とくるようになって、それから。4年前からかな。」
さらっと回答した。不自然さや恐怖心はやはり感じない。

勇作は、
「オンライン以外での出会いもあるんだね、参考になるよ。ありがとう。」
と言った。そしてそのまま質問を続ける。
「プロポーズはいつしたの?」
調査票にはプロポーズの有無は書いていなかったが、同居のためにマンションを借りているのならプロポーズをしていてもおかしくはないと勇作は考えたのだ。

宮村は回答しない。

ここで山中は、マンションの契約書を勇作の前に出した。流石に勇作は驚き、目を大きく開けて山中を見た。山中は自分には構うなと言うようにマイクを指差す。

「このマンション、カップルやファミリーであることが入居条件になっている。そこへ3週間も入居を待って入ったんだよね。だから、僕は2人をカップルと思ったんだよ。」
勇作の言葉に宮村は回答しない。かといって初羽の父親を呼ぶ要求もしなくなっている。

勇作は2人の交際期間や初羽の息が聞こえないことから、人質であるはずの初羽に恐怖心はないといえると推定した。とすれば、犯人宮村が元交際相手の初羽を人質にした事件ではなく、理由があって初羽を拘束しているふりをしているかもしれない、2人は犯人と被害者の関係ではないと感じた。しかし、確信がなかった。だから、自分の話をし始める。

「僕ね、好きな子がいたの。だけどまだ早いって家族に反対されて、僕自身も踏み込めなくて、別れてしまったんだ。
年上の彼女で交際のときに自分から『結婚するために付き合って』と言ったのに、情けない。
宮村君はきちんとプロポーズして、すごいな。」

勇作は独り言のように話す。しかしそれが、宮村が口を開くきっかけになった。
「なんでそんなことを話す?」
と勇作に聞いた。
「僕は、彼女の人生を背負う覚悟がなかった。今度今度と引き伸ばして彼女の若さと時を奪い逃げたの。思うこともあった。結婚って支障があって進みきれないこともあると思う。
初羽さんと何があったの?」
勇作から自然に湧き上がった質問だった。

宮村は回答の仕様がなく、
「兎に角、初羽の父親を呼んでくれ。」
とだけ言った。それでも、勇作は、
「2人、本当は仲良いよね?初羽さんは人質じゃないよね?」
と聞く。宮村は回答しない。元々が優しい性格なのだろう。これ以上、強引な発言をすることが辛くなり自ら辞退し、結果何も言えなくなったように勇作は感じた。



宮村が悪人ではないかも知れない、と気付いたのは勇作だけではなかった。初羽が人質ではないことが逆鱗に触れたのだろう。宮村の代わりに回答したのは東山だった。
背後からの圧力に勇作はとっさにマイクを切ったのが不幸中の幸いだった。
「ふざけんなこのやろー!この立て籠もりがやらせだって?舐めんなよ!!
立て籠もり犯を逮捕するからこそ俺らには出世の道があるんだよ、このチャンスまでどれだけ奴隷として耐えたと思ってんだ!!!」

ワゴン車が揺れるかのようなわめき声だった。勇作は放置したかったが、その声が犯人に届いては交渉決裂なので、宥める必要があった。しかし、どうして良いか分からなかった。東山はさらに続ける。
「警察が騙されて出動したなんていい笑いものだよ?どうしてくれんの?
アイツは女を思い通りにできなくて、ヤケクソで拉致って監禁したんだから、早く機動隊に突撃させろよ!!
人質じゃないなんてお前の解釈だろ!そうやって俺の将来奪う権利はあんのか、なぁお前ら?」

ワゴン車内の他の者は応えないため静粛に思えたが、勇作への視線はまるで針のごとしだった。針の筵とはこのことで、勇作は気付かぬうちに手元が震えていた。そうまだ24歳の青年で、仕事ができても圧を跳ね返す程のパワーは持ち合わせていなかったのだ。

東山は勇作の反応がないのを良いことに、
「事件解決より、出世が大事なんだわ。」
と上から優越感を突きつけるかのようにとどめを刺した。

勇作はここまでかと思った。
どんなに丁寧に犯人と向き合っても、その姿勢をチームが認めてくれなければ、成果は実のならないことくらい勇作にも分かっていた。しかし、いつもこうだった。美しい仕事を成してもチームに殺される。ただ事件を解決したいとの思いを分かってもらうことは、事件を解決するよりも難しいのかもしれない。


2人が心中なんて道を選ばなければ良いが。宮村を信じて降りるしかない。
ごめん。と勇作は心の中で呟いた。そして勇作は立ち上がった。

だから、山中も立ち上がった。
「みんな、今日はご苦労だった。日頃の褒美として今日、明日は特別休暇にする。」
怒りを抑えた山中の笑みは、仮面のようだった。
山中は直ちに後部に控えるパトカーに連絡した。
「交渉部隊、指揮の東山、音声の松北、人感センサーの都丸、控えの良井、本部との連絡係の吉久を帰す。直ちに迎えに来てくれ。

さぁ、みんなご退場だ。今日はありがとう。」

山中の怒りに満ちた眼を前に抵抗出来る者はなく、退場しかなくなっていた。
………………
勇作は、はたと我に返る。マイクをオンにし、
「お待たせ。2人が一緒に暮すのに、初羽さんのお父さんと何かあったの?」

勇作の宥めるような声に、口を開けたのは初羽だった。
「宮村君は悪くないの、助けてくれたの。」
激しい嗚咽でそれ以上声は続かなかった。

再び暫しの沈黙。
その間に、皆はご退場される。



静かになったところに勇作は、
「初羽さんのお父さんに何かを伝えたかったの?」
と問いかけた。宮村が答える。
「あんな奴に、言いたいことなんかない!マスコミ通しての見せしめだよ。あいつが初羽にやったこと、報道させる。許せないんだ。」
人は怒ると震える。声が小刻みに揺れていることはイヤホンから分かった。

「そうか。ただそんなやり方をしてしまうと、宮村君と初羽さんが変な人だから酷い目にあったって思われてしまうこともあるよ。」
勇作が話す内容は宮村を非難するキツイものだったがその声は、味方に聞こえるものだった。

宮村は怒りに任せて答えるが、その怒りは勇作に向けられたものではなかった。
「じゃあどうしろと?話してわかる奴じゃないし、警察に言ってもどうしょうもなかった。逃げられないんだ。殺せということか?」
宮村の声も涙で濡れている。だから、初羽が話し始めた。
「父に、何度もレイプされていて、警察に逮捕してって泣きついたのに、証拠を撮ってこいって、できるわけないじゃない。」
初羽の声は嗚咽混じりだった。簡単に話すことしか出来なかったのだろう。何も言えないのだろう。
苦悩の感情が言葉を遮っていた。

その呼吸があまりにも激しかったから、勇作は、
「初羽さん、過呼吸かも知れない。早く口元に袋を!宮村君、君しかできない、早く。」
と言った。勇作は純粋に初羽のことが心配だったのだ。

宮村はナイフを置きたくなかったが、
初羽が宮村の腕にぶら下がるように前のめりになってしまったから、ナイフを置いて、初羽の口元に袋を持っていった。

その様子は人感センサーからよく分かった。
………………
初羽は息を、
吸って、
吐いてを繰り返す。




本来ならば、ここが突撃のタイミングだが山中は指示を出さなかったし、勇作も山中のマイクを取り上げなかった。
それが出来たのはワゴン車に2人しか居なかったからであった。勇作は、不快ではあったものの、自滅してくれた東山に感謝した。
…………………
初羽の荒い息は聞こえなくなったから、
「初羽さん、人生でやりたいことは?」

と、勇作は静かに話しかけた。

「自由になりたい。学校にも行ってみたい。宮村君と。」

初羽から嗚咽も聞こえなくなった。だから、勇作はここだと思った。

「もう一度、警察に話してよ、僕からも伝えるよ。」
ナイフはどこだろう。使わないでくれ。祈る思いで勇作は伝えた。言葉が届くように。

初羽は、
「私もう34よ。」
と言う。それは草臥れた声だった。だから勇作は、即座に、
「34歳はまだ諦める年齢ではありません。僕がネゴシエーターになったのは42歳だよ。」
と言った。イヤホン越しからも曇が少し晴れた雰囲気を感じた。だから勇作は続けた。

「本来なら、僕たちがそちらに行かなければならない。だけど、僕は2人に自分達から出てきて欲しい。安全は確保するし、直ぐにパトカーに乗ってもらう。
時間がない、出てきてよ。」

初羽は宮村の方を向く。まだ29歳の青年の人生を潰すことは出来ないと感じた。


勇作の声に立ち上がったのは初羽で、宮村は彼女の後ろを歩き始めた。
………………
山中は、直ちに機動隊を退場させ、パトカー2台を動かし、2人がマスコミに顔を見られないように手配した。
正直、山中にとって初羽の苦しみは分からなかったし、レイプから逃れるためとの真偽も不明だった。しかし、辛い思いは個々に異なり、何かはあったのだから少しだけ力を貸すのも悪くないと思ってしまった。

そして、何より、勇作の仕事を見たかった。
この2か月、山中は勇作を見てきた。勇作の研修記録を全て読み、分析し、勇作の思考回路を自分のものにしようとしてきた。
事件のときに勇作は何を必要としているか、
犯人のどこに目をつけるか、
調査票に求めているものは?

受験生のように、分析し、自分がすべき事を確認してきたのだ。この事件は、山中にとっていわば試験だった。勇作のパートナーとして務められるかという。

だから最後まで口を挟まず、見守り、従いたかった。そして事件解決の快感を味わいたかった。
知恵の輪が溶けたように、事件が紐解けたとき身体を満たす快感は、山中にとって中毒の1つでもあった。
………………
2人は生きて、この場につくか。
山中は目を細め、マンションの入口を見つめていた。
「来い、来い。」
自然と手を組んでしまっていた。




階段を降りてきた2人は両手を上げていた。憑き物がとれたように重荷のない雰囲気のカップルだった。そして、
「宮村陽希、深雪初羽、両名を公務執行妨害の罪で逮捕する。」
との声と同時に、別々のパトカーで連行された。
しかし、逮捕は不幸ではなく、2人には始まりになるだろう。

新しい人生が幸せを掴むものであって欲しい。
山中と勇作は、パトカーが消えるまで見ていた。
………………
勇作は、始めて自ら山中を見た。50代なかばだろう。細身ではあるがしっかりした体つきで、真っ白な頭が威圧感を放っていた。

「あの、ありがとうございました。」
言葉が浮かばず、頭を深く下げ、そのまま下を見ていた。山中が、
「いつから40代になったんだ?」
と微笑んだから、勇作は顔を上げて一緒に微笑んだ。そんな勇作を見て山中は、
「彼女いたのか。」
と呟く。真っ赤になって俯く勇作の表情はまだあどけない。しかし山中は、「学生か」と突っ込むことはもうしなかった。

「見事だった。」
山中は勇作と目を合わせず、それだけ告げてワゴン車を降りた。
心の中は、「参った」と思っていた。
出過ぎた才能を組織で使うのは容易ではない。折って削って丸くするのが組織で、多くの者は東山と同意見だろう。

FBIにでも派遣できないか。
いや、そんな力は自分にはない。

せめて自分がいる間だけは勇作の才能を活かしたい、活かせねばならない。どうするか。
………………
ワゴン車に背を向け歩き出す山中は、新たな使命を背負ってしまった。



まだ昼間だというのに、まるで夕暮れに染まっていくような背中だった。
7月15日、勇作がA課に来て僅か2か月だった。
…………………
翌朝、台風直撃による大雨の音で勇作は目を覚ました。

びしょびしょに濡れながらも、昨日の事件解決の余韻に浸りながら、爽快な思いで出社した勇作に座席はなかった。

ただ「辞令書 輝咲勇作」の封だけがそこにあった。

(ネゴシエーター〜学内トラブル交渉人 第5話 どうして匿るの?犯人の願いとは 了)

こちらのマガジンに全編まとめていますのでお読みいただけると嬉しいです。


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