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ネゴシエーター〜学内トラブル交渉人 第7話 少子化対策の10年後 後編 秀でた才能が行くべきところ

 新幹線の防火シャッターが一気に降りる。輝咲勇作(きざき ゆうさく)は、防火シャッターが間違えなく閉まりきって開かないことを確認した。

 山中里志(やまなか さとし)警視長は、勇作に交渉開始の合図をしようと受話器を取る。その時、交渉部の部長、菊野が声をかけた。
 「山中警視長、誠に恐れながら、輝咲が交渉を失敗したときのことを考えて、犯人を力で逮捕するべきかと。輝咲は若く体力があるでしょうし、護身術くらいは出来るでしょう。」
 菊野は、勇作に対し爆弾を爆弾させた犯人に素手で立ち向かえ、との提案を警視長たる山中に言っている。その異常さを菊野は気付いていないようだった。ヘラヘラ笑いながら自信満々に大きな声で発言をした。

 山中は、イラつきながらも無視はせず解答する。
 「勇作は失敗のしようがないんだよ。なぜなら、対話で、心の声を引き出すのだから。対話には失敗という概念も成功という概念もない。そんなことも分からないのか。」

 山中はほとぼと菊野に嫌気がさした。
 人はみな異なる概念を持ち合わせて、同じ概念を持っている人間はいない。だから人は、他人が自分と同じ概念を持っていないことを前提に、相手との落とし所を見つけるために対話をする。
 しかし、菊野は誰もが自分と同じ概念を持っていなければならないし、同じ概念が無いのなら無い者が悪いのだから自分の言う事を聞けという人間だった。

 この緊急事態の中で、菊野との話し合いに時間が取られ、人質解放に進まなくなるのは御免だと山中は思った。だから、菊野には仕事を与えることにした。
 「菊野、君には人望があるからこそ頼みたい。環境安全パトロールに行ってきて欲しい。頼んだ。」
 山中は敬礼した。すると菊野は相変わらずニタニタ笑いながら敬礼を返した。

「只今から向かいます。」
と。
環境安全パトロールとは、庁舎内の安全確認、すなわちゴミ拾いやパーテーションの整頓を指す。陰では『徘徊』と呼ばれるこの仕事を菊野は日頃から好んで行っていたのだ。
……………
 菊野が徘徊に行ったところで山中は、勇作の席である末席に腰をおろした。そして、スマートフォンをスピーカーフォンにし、勇作に指示を出す。
 「勇作、こちらの準備は整った。犯人についての調査票は随時送る。タブレットで確認してくれ。待っているからな!」
 山中は、勇作はどんな状況でも交渉が始まれば心が落ち着き仕事を遂げられると信用していた。勇作は、
 「では。」
と言って交渉を始める。

 勇作のマイクは遠隔操作で運転手のマイクに繋がり、交渉内容は全車両に行き渡る。
……………
 「こんにちは。僕は輝咲勇作と言います。さっき、爆発するものを投げた貴方のお名前は?」
 勇作は、いつものように、子供をあやすような思いやりのある声で自己紹介を始めた。新幹線の乗客、誰もがスピーカーのある天井を見上げた。その声は人を惹きつけるものだった。
 「誰?俺、忙しいんだけど。」
 犯人は、簡単に答えた。
 「新幹線に乗っている者です。君と話がしたい。お名前は?」
 勇作は先程、千円を受け取らなかったことは言わなかった。犯人がさっきは無視されたのに今度は話しかけるなんてズルい、と考え逆鱗しかねないと思ったのだ。
 「俺、忙しいんで。」
 犯人は、忙しなかった。そう言いながら、乗客の首に爆弾をぶら下げ始めていた。1号車の音は車掌室のマイクから全車内に響いていたから、1号車乗客の悲鳴と「爆弾?首に。」との声で勇作にも状況を把握することができた。
……………
 「綺麗なネックレスだね。すごくよく出来ている。君が作ったの?」
 勇作は爆弾をネックレスと呼び、犯人の仕事を称賛した。
 犯人は思わず口を開く。
 「俺にしか出来ないよ、この細かい仕事は。他に誰が作ると言うのさ。」
 犯人の心を開くのに少しばかり手応えたえがあった。だから勇作は続けた。
 「そんな立派なもの、人にあげて良いの?勿体ないよ。」
 大事なものを手放すなんてという思いを込めた。犯人は、少しご機嫌になり、声が先程より少し高くなっている。そして手を動かしながら話を続ける。爆弾に何らかの操作をしているようだった。
 「全部じゃないから大丈夫だよ。この人たちはずるくて卑しい人だから仕方ないんだ。」

 勇作は、爆弾を付ける人を選んでいるのだと分かった。選ばれているのは果たして誰なのか。
 「卑しい人の要件を教えてよ。僕の周りにも貸した500円を返さない人がいている腹立つんだよ。」
 勇作は犯人が先程、千円を渡して歩いている光景を思い出して、卑しいとはお金のことかと思い伝えた。

 「千円を拒絶しといて、壱万円を受け取った人。卑しいだろ。嫌いなんだよ、そうゆう奴。」
 犯人は乗客の首にかけた爆弾を操作していた。何をしているのだろう。とりあえず、勇作は彼の調査票が届くまで会話で時間稼ぎをすることにした。

 「それは酷い。そんな人がいるなんて。ところで君はお金持ちなの?そんな作品を作ったり、お金を人にあげるなんて。」
 勇作は犯人を特定したかった。今のままだとあまりにも交渉材料が少ないし、調査票も送ってもらえないからである。
 「うん。なんせイール工業の御曹司だからね。」
 勇作はイール工業を知らなかったが、直ちに山中から概要が届いた。
 それにサーッと目を通す。読みながら会話を進める。

 「すごいね!世界中で使われているシール技術の会社じゃないか。ということは、鶴谷(つるたに)社長の息子さん?」
 勇作は話しながらも山中からのデータを精査する。データの中身は主に会社の経歴だった。
 約8年前2023年をピークにイール工業は坂道を転げ落ちる様に失速し、子会社の売却閉鎖、事業部門の切り離し、上場廃止をしている。しかしそれでも回復の兆しはなく、早期退職の敢行、従業員への賞与は3年連続カットとなっていた。
……………
 勇作の質問のあと、音声から犯人が勢いよく座ったのだと解る。爆弾の設定が終わったのだろう。
 「はぁー?すごいってバカにしてる?輝咲さんは本当に僕の会社を知っているの?
 そうだよ、僕は鶴谷銅ニ(つるたに どうじ)でアイツの息子。もうじき消える会社の息子。」
 恐らく犯人が事件を起こした原因は会社又は親と関係しているのだろう。犯人である銅二は感情を込めた大きな声で答えた。

 勇作は、少し黙った。犯人が会話に勢いをつけたから、無知な自分が不当な質問をするより語らせることで状況把握し、交渉点を見つけようとしたのだ。
 銅二は流暢に話し始める。

 「あんな奴もあんな会社もなくなってしまえ!あんなところ!」
 銅二は立上り、地団駄を踏み周りの椅子を蹴り、収まらなくなっていた。勇作は、
 「何があったの?」
 と聞いた。銅二は、大声で笑ってから答える。
 「姉の旦那に乗っ取られて、大勢辞めたの!優しくて優秀な技術者たちが訳分からん新潟の子会社に左遷されて、子会社毎消えた。役員はだぁーれも引責しないのに。
 姉の旦那は、技術も知らないんだよ!大学でインドの哲学を勉強していたんだって。なのに偉そうに、次期社長って、取締役になってふんずりかえってる。」
 銅二は自分が社長になりたかったのか。勇作は、山中からの銅二ちついての個人データを待った。山中からのデータはすぐに届いた。

 銅二は17歳。腹違いの姉は銅二より15歳年上で、姉の旦那はさらに8歳年上の40歳。急に35歳で入社し、一気に昇りつめたと記載されていた。
勇作は、データから推測した銅二の思いを聞くことにした。
 「銅二君は会社を継ぎたいの?」
 頭の中では17歳が社長なんてありえないとも思ったが、勇作は偏見を持たず銅二の心の芯にある本音を知ろうと思った。

 「誰があんな会社。
 それより輝咲さん、貴方、ただの乗客じゃないでしょ!まさかネゴシエーターって奴?」
 銅二は明確な回答を避け切り返した。新幹線の椅子にふんずり反るように座り、左手に爆弾のスイッチを持って組んだ足をぶらぶらさせながら聞いた。その風貌は既に社長だった。
 「そうだよ、僕はネゴシエーターです。」
 勇作はこの子は頭が切れるだけではなく冷静だと思った。にもかかわらず事件に行き着くなんて、犯罪を肯定する訳では無いが、至らざるを得ない彼なりの正義があったのだろうと思ったのだ。

 銅二は相手がネゴシエーターなら要求を突きつけて良いと判断した。
 「じゃあさ、交渉してよ。社長と姉の旦那に。辞めさせた技術者を戻すか、お前ら辞めろって。」
 銅二はカッとなっているのではなく、本当にそうして欲しくて言った。銅二の発言からは感情の抑揚を感じなかった。だから勇作は真剣に回答しなければならなかった。

 銅二がやっていることは絶対に許されない。しかしそれは人を育てられない国が、子供に教育をした結果であった。人を育てられる国として成長した結果、より多くの才能を生み出そうと少子化対策をしたのではないからこうなったのだ。
 銅二の生い立ちも育ってきた環境も変えられない。しかしせめてここから才能と若いエネルギーの使い方を正しい軌道に戻せないかと勇作は考えた。
……………
 「銅二君、それは君の本当の望みじゃないから出来ないよ。君の望みは戻すことじゃなく、切り開くことだと僕は思ったよ。」
 勇作は言葉を1つ1つ選んで伝えた。それはまるで慈しむ感じの声だった。
 「はぁ?何言ってんの?アイツラの暴走を阻止したら人質解放するってんだから、そうしろよ!」
 銅二は、受け入れない。だから勇作は話そうと思った。

 「銅二君、聞いて欲しい。
 どんなことをしても会社も、家族の考え方も変らない。自分の命より大切な銅二君が言っても変わらないのだからそこまでなんだよ。」
 勇作は防火シャッターを背もたれによし掛かりながら子供に伝えるように話した。そうするとなんだか背中合わせに体温を感じ、離れている銅二と二人きりの様な感じがした。
 銅二は会社も家族も変わらないことを分かっていても認めたくないのか。そんな様な思いが届いた。
 「はぁ?諦めろってか?意味わからん。」
と銅二は答える。それでも勇作は続ける。

 「『一律の学校教育が良くない。教師の価値観を子供に植え付けるのではなく子供のいいところを引き出せ』という議論は20年前から続いているけど、世の中は変わらず、決まった時間に通学して能力関係なしに年齢に応じた教育をし、教師が考える善し悪しに従い、子供たちがいい子か悪い子かを決める。」
 勇作は、わかってもらえるか?と思ったが、銅二なら分かるだろうと感じたのだろう。自然と湧いてきた言葉をそのまま崩さず伝えた。
……………
 勇作の言葉は飛躍したものだったが、銅二は勇作が言いたいことを感じ取ったのだろう自分の話をする。
 「あー、そうだね。俺の発明、学校の先生に全否定されたから。まぁイール工業の役員にも否定されたけどね。」
 銅二には勇作の話したいことが通じているようだった。だから勇作は続けた。
 「文化は変わらないし変えられない。だから銅二君の発明はいかに素晴らしくとも教育カリキュラムになければ、無いと同じにされてしまうんだ。会社は年齢が上の者の発明しか認めない。」
 勇作の言葉に銅二の解答はない。銅二はただ唾を飲んだ。分かっていたが言葉にされると、事件によって自分の要求が通るとの希望がなくなる感じがして、声が出なかったのだ。
 「だけどね、銅二君、君は変われる。君の本当の要求は、銅二君が活躍することで、会社が昔に戻ることではないんじゃないかな?」

 暫しの沈黙。銅二は「じゃあどうしろって?」と思ったが、犯罪者になってしまった自分には未来がないから聞けなかったのだ。勇作はそれを分かっている。だから勇作は続けた。
……………
 「銅二君、アメリカでも、中国でも、フランスでも、君が能力を発揮できるところに行ったら良い。今は若者が国を選ぶ時代だよ。
 それだけの技術があればハーバードなんて言わず、北京大学でも活躍出来るんじゃないのかな。」

 勇作の提案に銅二は、
 「俺まだ17歳だよ。行けるわけないし。」
 と答えるしかなかった。勇作は折れない。
 「御曹司なら、アメリカ国籍も取っているだろう?ここに居ても何も変わらない。君の才能は潰されるだけだよ。これまでそうだったように。」

 勇作の言葉に、銅二はまた話し始める。
……………
 「親父がさ、俺が小学生の頃、同級生に、『君たち貧しいんだろう。可愛そうだから、遠足のお金をあげようか?』って言ってから、白い目で見られるわ、物盗られるわ。だから、工場に隠れていたんだよ。学校行かずに。
 その時に、エンジニアたちが研磨だの、は剛接合だの、設計だの、すんげー丁寧に教えてくれて。
なのに姉の旦那が全部切ったの。」

 銅二は怒りで床を蹴りつけた。

 「それどころか、シールってオイルの漏れを防ぐから、ガソリン車から電気自動車になったら要らなくなるの分かってたんだよ。
 なのに、アイツラ、何もしなかった。10年前にあったコロナ禍でも何も新しいことしないから、大量解雇で工場で自殺した人も見た。」

 銅二は泣いているのだろう。声が震えている。

 「返してくれよ、全部。」

 それ以上、溢れてくる感情が大きすぎて言葉を遮ったのだろう。銅二は言葉を発しなくなった。ただ右手にしっかりと爆弾のスイッチを握っていた。
……………
 勇作は銅二が悔しいのも、無念なのも、若くて抱えきれないのも、感じた。それでも才能を自ら無くすことはしないで欲しいから、
 「銅二君が技術者になって、彼らを先導することができるし、それしかない。」
 と伝えた。銅二は、
 「馬鹿言うなよ。できるわけないだろう。」
 と力なく答える。こんな犯罪を犯してしまったからとは、言えなかった。しかし言わない言葉は、勇作に届いている。

 「これ程の爆弾を作ったんだよね?17歳の若さでここまで仕上げるとは才能があるからだよ。出来る出来ないじゃなくやらなければならない。
才能を持って生まれた以上、それを社会に還元するのは、責任なんだよ。」
 勇作は才能を使わないことは勿体無いではなく、無責任だと考えていたのだ。
 恐らく銅二が学校生活から炙れたのは父親によるお金を渡すとの発言だけではないだろう。周囲の人々は「銅二は違う」とその才能を認めていたか、もしくは、人並みのことをやらないから劣っていると見下していたのだろう。兎に角、仲間ではないと判断したのだろう。
 他方で無欲な上、言ったことをどんどん吸収していく大人顔負けの子供が、工場では可愛がられたのではないか。

 才能は在ることより活かすことのほうが難しい。勇作はせめて活かす道を残し、そこを交渉点にしたかった。しかし、銅二の言葉は、

 「もう間に合わないよ。遅いんだ。みんなのあの白い目、思い出すわ。」

 というものだった。銅二は勇作の言葉を聞くほど、自分の犯罪の重さを感じた。同時に、ここまでやるしかなかったと、ここに行き着くまでの絶望的毎日を思い返した。

 ただそれでも勇作は黙ってはいなかった。勇作は折れない。
 「銅二君、アメリカや中国には飛び級制度もあるし、教育のあり方も違う。日本に生まれたから日本に居なければならないわけじゃない。
 何より、みんなはもういいじゃん。銅二君の人生なんだから。
 ここまでやったなら他人はもういいじゃん。会社も家族も、そんなちっぽけなもの飲み込んで羽ばたくんだ。」

 銅二ももう会社や家族に翻弄される人生を終わりにしたかった。本当に疲れたのだ。だから出来上がった爆弾だった。
……………
 銅二は答えられない。
工場で亡くなった者、
組合の乱闘騒ぎ、
それらを全く気に留めない父親と姉の旦那の冷徹さ、
泣きわめき、土下座して、解雇撤回を望む従業員、
解雇を期に自分から遠ざかった人々の逆恨み。

脳裏に蘇り溢れてくる。思い出すと喚きたくなる。
……………
 車内のスピーカーからは静粛の中で、呼吸の音だけが聞こえる。勇作はここで要求を辞めた。
 ただ銅二に、
 「これからの自動車はどうなっていくと思う?」
と聞いた。ようやく銅二が口を開く。
 「AIは必須だよ。やばい奴が運転席に座ったら、自動車が運転出来なくなるようAIが判断するわけ。体調の良し悪しもAI判断で日によって走らなくなる。」
 銅二は、考えがまとまっていなかったが、解答した。自分から勇作の手を離すことはしてはいけないと感じていたから、対話を辞めなかったのだ。
 
 そう言ってから、
 「みんな戻ってきてくれるかな?」
 と言った。勇作は、
 「銅二君が確かな技術力と、人を惹きつける力を手に入れて、もう一度一緒に働いてもらえるレベルに行けば、自ずと付いてくるものだよ。
要は銅二君、次第さ。」

 と言った。銅二は爆弾のスイッチを握る力を抜いた。もう爆弾は必要無いと気付いたのだ。銅二が自分の人生に希望を見出し始めたことを山中は感じた。だから、ここしかないと思った。
 1号車のドアを遠隔操作で一気に開ける。そして、「突撃」と言った。
………………
 瞬く間に開いた新幹線のドアに驚いて銅二は思わず立ち上がった。その瞬間、入ってきた機動隊に身柄を拘束される。
 爆弾のスイッチは押さなかった。

 あっという間に爆発物処理班が爆弾の仕掛けを確認し始め、銅二の指示に従い、次々に解除していった。少年が作ったとは信じられない程、精巧なものであるばかりではなく、金具1つ1つが丁寧に研磨され芸術作品の様な爆弾であった。

 「犯人確保。鶴谷銅二、監禁及び銃刀法違反の罪で逮捕する。」

 勇作の長い1日の仕事は終わった。
………………
 勇作は新幹線の乗客に顔バレしないよう直ちにヘリコプターに乗り込んだ。それでも警視庁に到着したのは21時を回っていた。ヘリの中で寝て過ごしたためか、まるでワープしたように感じる。

 カバンを郵送し忘れたから新幹線での交渉ができたが、重いのに交渉部に運ばないといけないのは手間だから郵送しとけばよかったと後悔した。

 真っ暗な交渉部にパソコンの液晶画面が1つだけ光っている。それが不在であるはずの自席だったから、勇作は、
「うわー」
 と言って腰を抜かした。

 振り向いた山中が勇作に手を差し出す。少し笑って勇作は山中の手を握った。
 手を握ったとき、二人の間にサヨナラが聞こえた。

 その雰囲気を掻き消す様に山中が、
 「飯行くぞ。」
 と言った。勇作は、敬礼で返す。
 「見事だった。」
 山中は勇作にこの上ない称賛を贈った。

 その後、山中は昇格し警視監となった。そして、人が活躍出来る組織づくりに奔走することになる。そのため勇作と会うことは殆どなくなってしまった。
 勇作は、「辞めたい」とばかり呟き、一年後、真中駆による立て籠もり事件を最後に次の人生を進むことになったのだ。

(ネゴシエーター〜学内トラブル交渉人 第7話 少子化対策の10年後 後編 秀でた才能が行くべきところ 了)

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