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可笑しみいただきました✧♡

 穂村弘さんがスキだ。彼の短歌を知る前に、エッセイを読んで、好きだった。そこはかとなく可笑しい。世界と彼のずれ方。
「もしもし、運命のひとですか?」というタイトルの本がある。
 もしもし、というのは初めて話しかける人だろう。
 そして、「運命の人ですか?」という重い質問が来る。まあ、普通の人はこんなことは初対面の人に言わない。穂村さんの世界とのずれ方が一発でわかる秀逸なタイトルである。

 今回、図書館で「蚊がいる」を発見し、喜んで借りてきた。
 蚊は、夏になると明らかにいるが、蚊が出てくる映画や小説をほとんど読んだことが無い。冬は寒くて早く暖かくならないかと思うが、暖かくなると蚊が出現することを思い出し、蚊がいない冬にやっておくべきことが案外沢山あるのではないだろうかと、最近、思った。
 夏が暑いうえに、かゆいものだということを久々思い出した。

 このエッセイのタイトルも、そんな穂村さんの世界のずれ方、ほんとうは蚊がいるのに、蚊がいないことにされている夏の素敵さ、みたいなことを感じるタイトルなのが、可笑しい。
 このエッセイより先に「蛸足ノート」という最新エッセイを買って読んだが、穂村さんの奥様が、また、彼とは違うタイプの共感を呼ばない発想をする人で、よくぞ穂村さんと結婚してくれた!というようなエッセイのネタになっている。その片鱗が、この「蚊がいる」でも、ふんだんに出てきてうれしかった。

「東大でいちばん馬鹿な人になら勝てると思う?」

「東大でいちばん馬鹿な人」

 東大の構内を散歩している時に妻からの突然の質問。え?勝てるって何が?と戸惑う穂村さん。頭の良さ、かと気が付く。
 オチを書こうかと思っていたけど、やはり、秘密にしておこう。

夜ごはんを食べながら、「今日の出来事」を妻に尋ねるのが好きだ。
「今日、何かあった?」
「お昼に行った喫茶店でマスターとお客さんがオセロやってた。黒がレの字になってたよ」

「レの字」

 妻の表現に、そのリポートはどうなのか?と思う穂村さん。
 う( ̄m ̄〃)ぷぷっ!

 この妻とのやりとりがトテモ可笑しい。

「先生、私、今日、誕生日なんですよ。」
「そう、おめでとう」
「九十歳」
「じゃあ、お祝いに爪を切ってあげよう」
 え、と思って聞き耳を立てていると、ぱちんぱちん、という音が聞こえてきた。

「距離感のマナー」

 病院の待合室で偶然、聴こえてきた、診察室の会話。病院の先生に感心する穂村さん。

 お天気お姉さんが腋の下から体温計をしゅっと抜き出して「今日の体温は三十八度八分、ふらふらです。でも、仕事だから頑張ります。もしも、あたしが倒れたら、明日のお天気はあなたが自分で空を見上げて予想してね」と云ったら、どんなにときめくことだろう。

「体調」

 そんなお天気お姉さん、観てみたい。むしろ、ファンになるかも。

 せっかくだから短歌もスコシ、いただきます✧♡

清潔なトイレに入れた喜びと安堵のあまりぬける魂

穂村弘「トイレのドア」

 トイレのドアをノックするのが苦手な穂村さん。トイレに立ったのに、先客がいるのに気づき、膀胱はおしっこでいっぱいで席に戻る。
 なるほど、これも今までは短歌で、詠まれなかった部分かもしれない。

あの夏の数かぎりなきそしてまたたった一つの表情をせよ

小野茂樹「別の顔」

 前回の永田さんの本から、この歌も選んでいたが、青春の短歌ばかり多すぎかな…と字数も多いので、カットした歌だ。
 この本でまた出会うなんてラッキー!この歌を逃さない運命だったのね💖
 歌からは恋するものどうしの数限りなく見た相手の表情が目に浮かぶ。その中で、一番の「たった一つの表情」をせよと言う恋人。

「キバ」「キバ」とふたり八重歯をむき出せば花降りかかる髪に背中に

穂村弘「桜」

 最高にカワ(・∀・)イイ!!。
 やられた!





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