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かつが勝った!

 8月22日(火)私の母の1回忌であった。

 参加者は思ったよりも少なく、姉、私、ダンナ、母の友達の4人であった。正直、もっと人は多いのだろうと思っていたが当日駆け付けたのはその4人。自分の予想としては、去年の49日のように、法要をして、昼にとんかつの美味しいお店で、お膳を囲むという想像だった。
 うちのダンナは、司会を予想して、乾杯の音頭は甥っ子に、みんなで南無阿弥陀仏を365回唱える、喪主挨拶から、全員による近況報告、姉の旦那から、イギリス旅行の研修報告とか、〆の挨拶は私、と計画を建て、楽しみにしていた。故人の思い出を語る楽しい会になるはずだった。

 ダンナが当日の計画はどうなっているのかと私にうるさく聞いてくるが、私は、肝心の当日の予定をあまりはっきり掴めずにいた。
 それは姉の予定が、埼玉の叔母を7月末に青森県の旅に迎えたと思ったら、8月の頭に、次は自分たちが長男のいるイギリスに旅立つといったハードスケジュールを抱えていたからだ。
 帰ってきたばかりで姉も疲れ切っていてそんなことをじっくりはっきり決められないだろうと思っていた。そして、それは実にその通りであった。
 
 法要の参加者は4人。
 当日は法要の食事をやる予定の店も定休日。
 そんなものかと、うちのダンナと意気消沈しながら、行事に参加した我々である。
 
 何もかも、期待しないで諦めていたが、姉から、じゃあ、前の日、かつ亭に行かない?というようなメッセージがあり、それは賛成!と突然盛り上がった我々夫婦であった。

 それで前日の夜にかつ食べようと弘前入りを決めた。

 しかし、連日の猛暑である。
 車の中のドライブも暑い。
 着いたら温泉に行きたいぐらいだけど、うちのダンナはメンドクサイと言っている。八戸を12時ごろ出発し、厳しい日差しを布で除けながら出発。
 暑い中八戸を出発した。
 我々は青森県の真ん中にある八甲田山を越える爽やかな森林ルートをとったので、市内は33℃ぐらいの気温が、山に近づくにつれて26℃ぐらいになり、山中を走る道は、木陰も多く、おかげで快適であった。
 予報を見ると目的地の弘前は36℃で、10℃ぐらいの寒暖差があるねとおしゃべりしつつ、弘前に向かった。
 案の定、到着した弘前は暑い。

 どうやってかつ亭に行くか、話し合って、バスで行くことにした。

 そして、無事到着したが、かつ亭は特別な予約があったらしく、我々の到着は17時だったが、普通の営業は18時からと店頭に貼り紙が!

 が~~~~~~ん。1時間後から営業!?

 仕事場から直行するはずの姉の旦那と電話で連絡を取り、途中で合流して、車に乗る。かつ亭がダメだった時のための候補を探していたが、スペイン料理屋は5時半からの営業、大好きな蕎麦屋は、なんと定休日であった。

 そこでいつも0次会をやって、ビールを一杯ひっかける立ち飲み屋で、1時間、時間をつぶしてからもう一回かつ亭に向かおうという話になった。

 そこでジンの炭酸割2種類、クラフトビール、りんごジュースを注文。
 この暑さの中2軒も振られては、立ち直れない。注文したお酒が来て、皆、リラックスしてきた。話もはずみ、イギリス旅行の話を聞いた。

 時間が来て、もう一度かつ亭に向かう。
 次は無事に入れた。ビールで乾杯しながら注文したとんかつを待つ。
 つまみはお通しとのおしんこ。待ちに待ったかつがついにみんなの目の前にやってきた。1つ多めに頼み、みんなで思い切り、かつを味わった。

 かつ、めちゃうま。神。

 いい気分で家に帰り、次の日が法要。

 朝のフルーツ、珈琲とパンの後、朝風呂に行き、温泉を楽しむ。
 露天風呂にはジャズがながれていた。朝だというのに、すでに暑い。

 30分弱で準備して、参加者を迎えに出発。
 ちょうどいい時間につき、花や、果物、お菓子を供えると時間になった。

 みんなで和尚さんの読経を聴く。
 1回忌のお墓に立てる札を見ながら、母のことを考えた。

 次はお墓へということで、移動したが、当日、弘前は36℃。
 日陰の無いお墓の前で、じりじり太陽に焼かれながら読経を聴く。

 墓石に水をかけたが、焼け石に水。暑い。

 仕事で慣れた和尚はちゃっかり日傘をさしながら。やるな。わかっていらっしゃる。読経は、我々の気持ちに寄り添って短いことに感謝。

 ほんと、死にそうに暑かったです。

 母の友達と姉を家に送った後、猛暑の弘前から、酷暑の八戸にドライブして帰ってきた。姉が咄嗟に買って持たせてくれた太巻きのお寿司に助けられた。

 八戸、35℃とか天気予報で言うが、車の温度計は38℃。
 今日は、久々、冷房の中に寝ようかと布団を1階に下ろした。

 和尚さんの読経の中、考えていたことは、昨日のかつ、美味かったなということ。母の法要よりも、その後のかつの食事会のことしか考えていなかった自分に気が付いた。

いちばん好きな棒かつ。かつが棒状になっていて、分厚くて美味しい。

 母が死んでもう、1年経ったという、驚きと、母の法要よりもかつのことが重要だったという2重の驚きが、自分の心を満たした。

 母はくいしんぼうだから、たぶん私のことを許してくれる。
 しかし、かつが勝ったということが、正直自分の中で驚きだった。

 母よ!
 貴方を口実に八戸からやってきて食べたかつは、天上天下唯我独尊でした。ごちそうさま、そして有難う御座います💛
 毎年、貴方のことを考えながら、おいしいかつを食べます。