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業務マニュアルの活かし方

こんにちは、Ayano@業務改善を愛する人です。
今回は業務マニュアルが完成した後、どのように運用を開始してどのように活用し、マニュアルを組織に定着させていくのかをお伝えします。例示を多めに盛り込むことで、職場の様子が想像しやすい内容になったかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。なお、この記事は「業務マニュアルのつくり方【前半】」でご紹介した「ソフトウェア製品を使って、Webページ上にマニュアルを用意」したことを前提とした内容となっておりますのでご留意ください。


マニュアルの運用開始前

1. 「速く&小さく作り、使いながら育てる」

見出しの言葉は、「本当に使える業務マニュアル作成のルール」から引用させていただきました。

「速く&小さくつくり、使いながら育てる」。これには、最初から完璧を目指さないでマニュアルをつくる、つまりハードルを下げるというねらいがありますが、実はもうひとつ大きな目的があります。「どうやったらもっと使いやすくなるだろう」と考えながらマニュアルを使うことによって、「マニュアルを使うこと」に自分事として積極的に関わる姿勢を醸成するという目的です。 マニュアルは、つくって配っただけでは使われません。新しいシステムやグループウェアを導入するだけでは、業務効率が一気に上がらないのと同じで、メンバーの「使うスキル」が必須です。「使いながら育てる」ことで、使うスキルが高まり、マニュアル定着への土台をつくることができます。

「本当に使える業務マニュアル作成のルール」森田 圭美(同文舘出版)

私も多少粗くてもいいのでとりあえず使い始めることが大切だと思います。マニュアルに“完成”はありません。業務の進化とともに、マニュアルも”進化”していくのがあるべき姿だと思います。もし、”完成”していないものを展開することに気後れする場合は「マニュアルのβ(ベータ)版をお渡しするので、わかりにくい箇所などあればぜひ教えてください!」といった言葉で表現すると、少しは心理的ハードルが下がると思いますので、試してみてくださいね。

2. マニュアル更新ルールを決めておく

「使いながら育てる」ことを前提としていますが、各人が勝手に自己流で更新してしまうと、マニュアルに一貫性がなくなったり、間違った情報が載ってしまう可能性があります。マニュアルの品質を担保するために、更新ルールを運用開始前に規定し、マニュアルの目立つ箇所に記載のうえ、関係者全員に周知しておきましょう。どのようなタイミングで、どのようなプロセスを経てマニュアルを更新するかを定めることで、常に業務の変化に適応したマニュアルになります。

<マニュアル更新ルール>

  • 更新は随時行うこと
    基本的には「気づいたとき」がマニュアル更新のタイミングです。内容の不足や変化に気づいたときに、随時更新をすべきものだと関係者にインプットしておきましょう。
    【更新タイミング例】内容の不足に気づいたとき、使用しているツールやシステムの仕様変更に伴い手順が変更になるとき、作業担当者の変更もしくは業務分掌が変わったとき等

  • フォーマットは変更しないこと
    業務マニュアルのつくり方【前半】」で「アウトライン(表)」と呼んでいたページ全体の構成のことです。これを各人が思い思いに改変してしまうと、ページごとに体裁が異なり、理解しづらくなってしまいます。フォーマットはマニュアル全体で共通のものであり、勝手に変更してはいけない旨を明記しておきましょう。

  • 更新プロセスを守ること
    マニュアルの更新時には”周知”をセットで行わなければ、更新者以外は最新情報をキャッチアップできません。マニュアルは即ち組織としての「やるべき基準」を示したものです。最新の「やるべき基準」を関係者全員がキャッチアップできるように、更新プロセスをあらかじめ定め、そのプロセスに沿って更新してもらうようにしましょう。関係者の人数規模や、マニュアル管理者・利用者の業務遂行レベルによって、最適なプロセスは異なりますが、いくつかのパターンを例示しますので、組織にフィットしそうな方法を選んでください。

    • 各人が更新内容を下書きした後、マニュアル管理者の確認・承認を経て、マニュアルに反映、その後関係者全体に変更点を展開する。

    • 各人が更新内容を直接マニュアルに反映した後に、関係者全体に更新内容を報告する(特に異議がなければ報告のみ、異議があれば議論のうえ再度更新する)

    • 各人が更新すべき箇所を見つけたら、マニュアル管理者に伝え、マニュアル管理者のみが更新、その後関係者全体に変更点を展開する。

なお、「業務マニュアルのつくり方【前半】」でご紹介したConfluenceでは、ページごとに編集権限と閲覧権限の設定ができるので、マニュアル管理者のみが更新できるようにツールで制限をかけることも可能です。

マニュアル運用開始~定着

1. マニュアルに基づいたコミュニケーションが原則

マニュアル運用開始後は、それに基づいたコミュニケーションを従業員間で行うことでマニュアルの定着につながります。このコミュニケーションを通じて、マニュアル使用状況の確認やブラッシュアップを行うことができます。

マニュアル作成のメリット・デメリット」の記事内でも既にお伝えしている内容のため、以下に再掲します。

作業手順について質問を受けたときに、マニュアルのページリンクを貼ったり、該当箇所のスクリーンショットを貼ったりして回答することで、マニュアルに書いてある内容を認識してもらいます。ただ、それだけだと相手がマニュアルを見ていないことを責めているように感じさせてしまうリスクがあるので、あわせて「ここにこう書いてあるのですが、わかりにくい箇所があったら改善するので教えてください」のように、改善要望を吸い上げる姿勢も示しましょう。利用者のフィードバックを基に改善していくことで、実際の業務に即した内容にすることができますし、これにより、従業員がマニュアルを利用する意義を感じやすくなり、利用率が向上します。結局は、地道な布教活動が大切です。

「マニュアル作成のメリット・デメリット」
チャット例①

また、業務引継ぎ時にマニュアルを活用する際には、まず最初にマニュアルの目次ページ(=リンク集)をお渡しして、業務全体像とマニュアルの構成の把握を促します。

目次ページ(イメージ)

その後、各工程の業務説明を行う際に、該当業務の記載箇所を伝え、一緒にマニュアルを見ながら説明することで、教わる側はマニュアルを使って業務に取り組む素地が培われます。教える側もマニュアルに基づいて説明をすることで、マニュアルの記載内容を見直す機会となります。

チャット例②

2. フィードバックをマニュアルに即時反映する

業務を行う中で新たな気づきや改善点が見えてきた場合、それを即時にマニュアルに反映させることが重要です。マニュアルをこまめにブラッシュアップすることで、業務の質が向上し、従業員にとって使いやすいマニュアルが実現します。

たとえば、業務を新しく担当する従業員から質問を受けたときに、マニュアルに記載がある場合には先ほどのチャット例①のようにマニュアルページを案内しますが、マニュアルに記載がない場合には、質問者へ回答するのと同時に、マニュアルにも同様の内容を追記します。

チャット例③

もし、加筆・修正のボリューム上、その場での対応が難しい場合や、更新プロセスのルール上、即時反映が難しい場合も、可能な限り早く反映して、気づいたらすぐに更新する習慣を組織に根付かせていきましょう。

3. 「読み合わせ会」の実施を検討する

図解いちばんやさしく丁寧に書いた 業務マニュアルの作成」では、使用者に「マニュアルの存在や必要性を認識させる」だけでなく、「何が書かれているのか」「どのような場面で役に立つのか」について、前もって認識させておくために「読み合わせ会」の実施は必須であるとしています。上述の通り、私は日々のコミュニケーションをベースにマニュアルを定着させてきたので「読み合わせ会」を実施した経験はないのですが、組織で上述のコミュニケーションだけでは定着が難しい場合には「読み合わせ会」の実施もご検討ください。

4. イレギュラーのレギュラー化を検討する

一時的・例外的に発生しているとされる”イレギュラー”業務も、度々発生しているのであれば、それはもはや”イレギュラー”ではなく”レギュラー”です。そのような場合は、それを新たな業務パターンとしてマニュアルに組み込むことを検討しましょう。これにより、それまではマニュアルで対応できなかった”イレギュラー”に、マニュアルを参照して対応できるようになり、未経験者が同様の業務に直面したときにも迅速かつ効果的に対応できるようになります。

おわりに

「業務マニュアルの活かし方」は以上となります。マニュアルを使いながら育てることで、個人の知識・スキルをマニュアルに結集させ、組織全体で業務の効率化・品質向上につなげていきましょう。

業務マニュアルの価値をお伝えしたいと思い、記事を書き出したところ、想定以上にお伝えしたい事柄が多く、4部作になりました・・・!本記事の内容に関心を持っていただけましたら、前の3つもぜひご一読ください。

ご覧いただきありがとうございました。
Ayano@業務改善を愛する人

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