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業務マニュアルのつくり方【後半】

前回「業務マニュアルのつくり方【前半】」では、マニュアルを書き始める前の準備と、マニュアルを書き進める手順についてお伝えしました。後半となる今回は、マニュアルで詳細な作業手順を書くときに気をつけるべきポイントをお伝えします。


マニュアルを書くときの注意点3つ

1. 簡潔に書く

簡潔に書くことで、マニュアルの明瞭性が増し、初心者でも理解しやすくなります。長い文や複雑な文構造は避け、一つの文に一つの情報を持たせるようにします。複数の指示がある場合は箇条書きにしてください。

【NG】
投稿内容を確認し、誤字脱字をチェックし、誤字脱字があれば修正する

【OK】
1. 投稿内容を確認する
2. 誤字脱字をチェックする
3. 誤字脱字があれば修正する

二重否定文は読み手の混乱を招くので避け、肯定形でストレートに表現しましょう。

【NG】
利用規約を遵守した内容以外を配信しない。

【OK】
利用規約を遵守した内容のみを配信する。

実は、このような書き方は非ネイティブスピーカーにとっても、わかりやすい書き方であるため、出入国在留管理庁と文化庁が作成した「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」にポイントがまとめられています。ぜひ参考にしてみてください。

「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」P.8
同上 P.9

2. デジタルに判断できる基準にする

マニュアルで最も重要なのは具体性です。読み手(業務担当者)が正確にタスクを理解し実行するためには、具体的な指示が必要です。抽象的な指示は読み手によって解釈が異なってしまうため、デジタルに判断できる数字で記載しましょう。

【NG】
ミスが発覚した場合は、速やかに上司に報告する

【OK】
ミスが発覚した場合は、30分以内に上司に報告する

3. ビジュアル情報をたくさん盛り込む

視覚的な材料は、テキストだけでは伝わりにくい作業を明確に示すのに非常に有効です。文字がぎっしり詰まったページは読む気が失せますよね。作業画面のスクリーンショットや、図表、見本となる資料のキャプチャなどを盛り込み、視覚的に情報を補完しましょう。

たとえば「確認」や「入力」のタスクでは、以下のように該当箇所に番号を振ったものをマニュアルに載せておくと、視覚的にわかりやすくなります。

マイナンバーカード総合サイト」より引用

以下のように、OKとNGの例を並べて見せるのも効果的です。

マイナンバーカード交付申請書」より引用

以上の3点(簡潔に書く、デジタルに判断できる基準にする、ビジュアル情報をたくさん盛り込む)以外にも、色使いやフォントなど配慮するとよい点は挙げられますが、最初から完璧なマニュアルを目指して時間をかけるより、まずはいったん形にして、使いながらブラッシュアップしていく方が近道なので、今回は重要な3点に絞ってお伝えしました。

【Tips】ChatGPTに手伝ってもらおう!

マニュアルで作業手順を書き出していく場面においても、ChatGPTに手伝ってもらうことができます。以下は、先ほどのNG文章例をもとに、ChatGPT-4oにアドバイスをお願いした例です。

ChatGPT回答例

もっと細かくオーダーすれば、もとの文章を書く段階から手伝ってもらうこともできますが、プロンプト(指示文)がやや複雑になってくるので、機会があればまた別途記事にしたいと思います。

おすすめ書籍のご紹介

1から100までの全工程を把握したいなら

マニュアル作成方法から運用方法まで網羅的に記されています。「図解」とありますが、文章での説明も詳しく書かれていました。この本で全体像を把握したうえで、マニュアルを使用するチーム・組織の規模感や現場の状況に合わせて適宜工程を省いて進めるという使い方が良いかと思います。

企業での活用事例を知りたいなら

良品計画会長の松井忠三さんが、無印良品のマニュアルの一部を取りあげながら「仕組みを大切にする働き方」を紹介しています。2013年発行ですが、2024年現在においても通ずる内容となっています。
先ほど「マニュアルで最も重要なのは具体性」とお伝えしましたが、松井さんも同様のことをおっしゃっていました。

どこまで具体的に説明するかが、マニュアルに“血を通わせる”最大のカギとなります。たとえば、「丁寧にお客様に説明する」という説明では、「丁寧」のとらえ方が人によって異なるので困ってしまいます。ある人は「言葉遣いをきちんとすることだ」ととらえるかもしれませんし、「説明の仕方を親切にすることだ」と判断する人もいるかもしれません。このように受け取り方や理解の仕方が人によって異なってしまうと、その仕事の方法は「基準」にはならないのです。したがって、マニュアルは徹底して具体化しなければなりません。(中略)マニュアルの基本は、読む人によって判断軸がぶれるようなつくり方をしないこと。100人いたら100人が同じ作業をできるようにするのが、血の通う仕組みを根付かせるためにも重要なのです。

「無印良品は、仕組みが9割」松井 忠三(角川書店)

「MUJIGRAM」と呼ばれる店舗で使っているマニュアルは、写真やイラスト、図がふんだんに盛り込まれ、なんと2000ページ分にも及ぶそうです。マニュアル化への情熱に心動かされる内容でした。

【余談】いらすとやの活用

突然ですが、あなたは「マニュアル」という言葉を聞いたときに、“楽しい”や“面白い”といったイメージがありますか?マニュアルを書くのが大好きな私でも「ない」ので、おそらく100人中100人が「ない」という回答になるのではないでしょうか。そんな無機質ともいえるマニュアルの印象を少しでも明るいものに変えられたらと(チーム内や後任担当者向けの小規模なマニュアルに限りますが)ページ末尾などの邪魔にならない箇所に、フリー素材「いらすとや」の絵をときどき入れていました。かわいらしいテイストの絵なので、マニュアルの堅さが和らぐ気がします。今ではお店のポスターやワイドショーのパネルでも「いらすとや」の素材が使われ過ぎて、やや見飽きた感も出てきてしまいましたが…。「ぜひあなたも!」とは言いません。「読み手を和ませよう」という心意気だけ参考にしてもらえればと思います。

(イメージ)

次回は「業務マニュアルの活かし方」と題し、マニュアルの運用開始から定着までのポイントをお届けします。

ご覧いただきありがとうございました。


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