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マニュアル作成のメリット・デメリット

こんにちは、Ayano@業務改善を愛する人です。
今回は、業務マニュアルを作成することのメリットとデメリットについて、私の実体験から感じたことをベースにお伝えししたいと思います。一般的に言われる内容については、さまざまな書籍で触れられていますので、おすすめ書籍を最後に紹介します。


業務マニュアルを作成するメリット

1. 業務を渡しやすくなる(組織のスキルアップ)

業務マニュアルは、特定の業務プロセスや手順を明確に記載した文書です。この文書があることで、組織に新しく入ってきた従業員や異動してきた従業員に対しての業務の引き継ぎがスムーズになります。具体的には、業務の手順や注意点を細かく説明したり、メモにすべてを書き取ってもらう必要がなくなり、効率的に業務を理解してもらうことができます。また、対面でのインプットだと時間を合わせて教える必要がありますが、あらかじめ用意したマニュアルを読んで、できるところまでは自分で進めてもらえれば、ずっと付きっ切りで教える必要がなくなる点も大きなメリットだと思います。結果として、業務の習得期間が短縮され、従業員のスキルアップが促進されます。

また、業務マニュアルは組織全体の知識・スキルの共有にも寄与します。以前X(旧Twitter)で、派遣スタッフとして勤務する方が「人によって教えてくれる内容が違うからどうすればいいかわからなくてストレス」というポストを見たことがあるのですが、これもマニュアルがない=手順が標準化されていないから起こってしまう混乱だと思います。従業員一人ひとりの経験やノウハウがマニュアルに集約されることで、個人に依存しない組織運営が可能になります。これにより、誰が担当しても一定の品質で業務が遂行できるようになり、組織全体のスキルアップが期待できるのです。

さらに、業務マニュアルを用意しておくことで、OS(アウトソース)、RPA(Robotic Process Automation)、生成AI活用などの検討も容易になります。マニュアル化によって業務内容が可視化され、第三者が把握しやすくなるためです。従業員のリソースが不足した場合の代替策検討がスムーズに進められます。

2. 業務処理スピードが速くなる(生産性アップ)

業務マニュアルを参照することで、業務の進行がスムーズになります。特に、新しい業務や慣れていない業務に対しては、手順や必要な情報が一目瞭然となるため、無駄な時間をかけることなく効率的に作業を進めることができます。例えば、システムの操作手順や特定の書類の作成方法が明確に記載されている場合、それに従って作業を行うことでミスが減り、修正作業にかかる時間も減少します。

さらに、業務マニュアルがあれば、従業員同士で作業手順の質問や確認する時間を削減できます。これにより、業務の効率化が図られ、全体の業務スピードが向上します。結果として、生産性が向上し、時間を有効に活用することができるのです。この点についても、以前Xで派遣スタッフの方が「わからないことは質問してと言われたけど、質問すると溜息をつかれる」とポストしていましたが、マニュアルがあれば質問しなくてもわかることが増えるので、教える側・教わる側ともにストレスを減らせます。延いては、短期離職の抑止にもつながります。

質問対応の時間を含め、これまで業務にかかっていた時間を短縮できたら、まだマニュアル化できていない業務のマニュアル作成時間に当てたり、やってみたかった業務にチャレンジしたりする、ゆとりが生まれます。

3. 業務改善につながる

業務マニュアルを作成する過程で、現行の業務プロセスを見直す機会が生まれます。これにより、無駄な手順や非効率な作業が明らかになり、改善点が浮き彫りになります。例えば、手作業で行っている業務を自動化する方法や、重複している作業を統合する方法など、業務プロセスの見直しによって効率化の余地が見つかります。

以前、私がSNS運用の方法をマニュアル化するため、長らくその業務の一部を担ってくれていた派遣スタッフさんに作業手順をヒアリングしたところ、
社員が担当している業務と重複する箇所があったことが発覚し、社員側での作業をカットできたり、派遣スタッフさんが"良かれと思って"やってくださっていた作業が、必要ではない作業だったため、省いたこともありました。「業務改善するぞ!」と意気込まなくても、属人的な業務を開いていくと、その過程で改善できるポイントが簡単に見つかることも多いです。

また、業務マニュアルは定期的に更新されることで、常に最新の業務プロセスや改善点が反映されます。これにより、チームや組織全体の業務の質が向上し、業務改善が持続的に行われる環境が整います。結果として、組織の競争力が強化され、顧客満足度の向上にもつながります。

業務マニュアルを作成するデメリット

1. 作成する時間が取れない

業務マニュアルの作成には、詳細な業務プロセスの把握や文書化のための時間が必要です。マニュアルはあった方がいいとは思うけれど、マニュアル作成のための時間を確保することが難しくて実現できていない方も多いのではないでしょうか?(外注という選択肢もありますが、マニュアル作成のための予算を承認してもらうこと自体が大変ですよね)
その場合、まずは「自分用に作業をメモしておこう」くらいのレベル感から始めることをおすすめします。作業頻度が少ないタスクは「前回どうやって進めたっけ?」と思い出すのに時間がかかることもあると思います。そのときに、自分用のメモがあれば、それを見返すことで思い出したり、過去の資料を引っ張り出したりする時間が短縮できます。その短縮した時間で、自分用のメモをまたちょっとブラッシュアップしてみる、という小さな積み重ねで、だんだんとマニュアルに進化させていくことができます。

また、業務マニュアルの作成は一度だけではなく、定期的な更新も必要です。業務プロセスやシステムの変更が生じたときは、なるべく早く(できれば実際に変更が生じる前に)マニュアルの内容を見直し、修正しましょう。なぜなら、変更が発生するということは、関係者が新しい/慣れない作業をすることになるので、ミスやトラブルにつながりやすいタイミングだからです。逆にいえば、マニュアルの効力の発揮しどころです。マニュアルを関係者の目線合わせにも活用し、マニュアル作成にかかる時間と労力以上の効果(リターン)を得る機会に転換しましょう。

2. 周囲の理解が得られない

業務マニュアルの作成や利用に対して、従業員や上司の理解が得られない場合があります。特に、従来のやり方に固執する従業員や、新しい取り組みに対して抵抗感を持つ従業員がいる場合、マニュアルの活用が進まないことがあります。また、上司がマニュアル作成の重要性を理解していない場合、必要なリソースやサポートが得られないこともあります。

さらに、業務マニュアルが形式的なものに終わってしまい、実際の業務に活用されない場合もあります。例えば、マニュアルの内容が分かりにくい、または実際の業務と乖離している場合、従業員がマニュアルを参照せず、従来のやり方を続けてしまうことがあります。このような場合、せっかく作成したマニュアルが形骸化し、効果が得られないことがあります。

これに対して、私が心がけていたことは以下3つです。

  1. (マニュアル作成着手の段階)最初に相手のメリットを強調する
    チームメンバーに対しては、マニュアルの活用が自身の業務を楽にし、ミスを減らすことに繋がることを説明するなど、「あなたの負担を増やす話ではない」点をはじめに強調して心理的な抵抗感を減らすようにしていました。

  2. (マニュアル作成着手の段階)傾聴・共感を心がける
    1.に引き続き、周りの協力を得るために、相手のこれまでのやり方を否定せず、大変だった作業を労り、共感を示すことを心がけていました。業務をヒアリングしたり、部分的にマニュアルを書いてもらうことをお願いする段階では、「教えてください」という姿勢で臨み、協力してもらった後には感謝も忘れずに伝えるという基本的なことではありますが、地道に理解を得ていきました。ヒアリングに関しては、自分がその業務を担当し始めたばかりのときが一番良いタイミングです。作業の目的や意味がわからないときも「私がまだ理解できていないかもしれないのでお伺いしておきたいのですが」、「後学のために」などと、切り込んで聞きやすいです。

  3. (マニュアル活用の段階)マニュアルに基づいたコミュニケーション
    作業手順について質問を受けたときに、マニュアルのページリンクを貼ったり、該当箇所のスクリーンショットを貼ったりして回答することで、マニュアルに書いてある内容を認識してもらいます。ただ、それだけだと相手がマニュアルを見ていないことを責めているように感じさせてしまうリスクがあるので、あわせて「ここにこう書いてあるのですが、わかりにくい箇所があったら改善するので教えてください」のように、改善要望を吸い上げる姿勢も示しましょう。利用者のフィードバックを基に改善していくことで、実際の業務に即した内容にすることができますし、これにより、従業員がマニュアルを利用する意義を感じやすくなり、利用率が向上します。結局は、地道な布教活動が大切です。

おすすめ書籍のご紹介

ここまで私の考えを書かせていただきましたが、マニュアル作成の効果や取り組み姿勢について、もっと詳しく知りたい方には、以下の書籍がおすすめです。

1章「マニュアルで得られる5つの成果」と、2章「成果が上がるマニュアルの捉え方」に、マニュアル作成のメリットがまとまっています。特に1章では「ケース」として社長の声(事例)、「成果報告」として現場の声が掲載されているので、状況をイメージしながら読みやすいかと思います。
(3章以降に、マニュアルの作成方法が書いてありますが、例示がレジ操作や補充、清掃業務等なので、作成の参考図書としてはオフィスワーカー向きではないかもしれませんのでご留意ください)

【余談】マニュアルでは、感動させられない?

この本のコラム「マニュアルでは、感動させられない?」(222頁)が印象的でした。要旨としては「『マニュアルでは人を感動させられない』という批判は誤解であり、実際には優れたホスピタリティサービスはマニュアルに基づいている。東京ディズニーリゾートやザ・リッツ・カールトンホテルの例では、顧客満足度を高めるための行動や対応はマニュアルに詳しく記載されており、従業員への徹底した教育と改善の積み重ねがホスピタリティを支えている。したがって、マニュアルとホスピタリティは対立するものではなく、むしろマニュアルはホスピタリティサービスを実現するための重要な土台である」というものでした。マニュアル反対勢力に対する抗弁として、覚えておいたら役に立つかもしれません。

随分長い記事になってしまいましたね…。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!
Ayano@業務改善を愛する人

「スキ」だけで十分うれしいです。サポートいただいた場合は、”業務改善”関連書籍の購入費にあてさせていただきます。これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。