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業務フローチャート活用術【後半】経験談と参考書籍

こんにちは、Ayano@業務改善を愛する人です。
前回は、業務フローチャートの作成ステップや描き方のコツをお伝えしました。

今回は、私が業務フローチャートを活用して行った業務改善の経験談と、業務フローチャート活用を学ぶ際に役立った書籍をご紹介します。


4. 業務フローチャート活用の経験談

以前、私がSNS運用をメイン業務として担当していた頃、上司に業務改善スキルを見込まれ、全く違うプロジェクトに業務改善担当としてアサインしてもらった経験があります。その際に業務フローチャートを活用して業務改善をした事例をご紹介します。

そのプロジェクトは、キャラクターグッズを販売するポップアップショップの運営に関するものでした。特に、グッズの物流管理が非常に複雑化しており、工場からオフィス、オフィスからショップ、ショップ間の移動など、煩雑なプロセスが存在していました。

この業務は一人の担当者が属人的に行っており、担当者自身の多忙さもあり、ご自身で業務を可視化していただくことが難しい状況でした。そこで、業務改善を依頼された私が利用したのが、業務フローチャートです。

全く自分の担当業務とは異なる他者の業務を、0から可視化して改善するのは初めての経験でしたが、以下のステップで取り組みました。

まず、担当者へのヒアリングをもとに現状の運用をフローチャート(ASIS)に描き起こしました。この過程で多くの課題が浮かび上がったため、それらをフローチャートの余白に吹き出しでコメントしておきました。完成したフローチャートをもとに吹き出しの内容から、課題管理表を作成し、一つ一つの課題に対し改善策を検討、担当者と議論のうえで、変更後フローチャート(TOBE)を作成し、変更に関わる関係者に承認を得ていく流れを取りました。

課題管理表

この取り組みで感じた成果は以下の通りです。

  1. 業務担当者の反応:ご自身の担当業務が”業務フローチャート”という形で可視化されたことに感動し、課題の明確化にも役立ったと評価してくれました。

  2. 課題の説明ツールとして:上司や関係者へ現状を説明する際に、わかりやすい説明資料として活用できました。

  3. 引継ぎツールとして:業務担当者が後日、後任に業務を引き継ぐ際にもマニュアルの代わりとしてフローチャートが役立ったそうです。

この経験を通じて、業務フローチャートは単なる業務の可視化ツールではなく、課題発見や改善に役立つことを実感できました。

5. 「フローチャートは使うな」?!

以下書籍に興味深い意見がありました。

フローチャートの致命的な欠陥は、くねくねと長い矢印を引っ張ることをいとわなければ、次の手順をどこにでも指定できてしまうことである。その結果、論理の流れをグジャグジャに描いてしまうことがしばしばあり、読みにくい上に間違いも多いプログラムを作ることにつながる。論理を表すには早見表の形式が使われる。

上記書籍「第1章 マニュアルの文章術」-「フローチャートは使うな」より引用

さらに、著者は早見表の使い方について、以下のように説明しています。

資料9のように、手順を上から下へ順序よく並べ、場合を左右の位置の違いで表す。こうすれば、「まず方面を調べ、次に都市、そして条件をセットすれば料金決定」という、4ステップ構成の仕事であったことが明らかになる。この早見表なくして、「全体が4ステップだ」と見抜けるものではない。

同上
上記書籍より「資料9」を引用

「フローチャートは使うな」という刺激的な主張に、業務フローチャート活用を否定されたと捉えてしまいそうになりますが、著者が意図するフローチャートのNGシーンについて、私なりに考えてみました。

著者の「フローチャートは使うな」とは、主に複雑な条件分岐を表現する場合には適さないという主張だと読み取れます。一方、当記事で紹介してきた業務フローチャートは、業務の一連の流れを示すためものです。業務プロセスの可視化にはフローチャートが有効であり、複雑な条件分岐の表現には早見表を活用するなど、状況に応じた適切なツール選択をすることが大切という意味だと解釈できると考えます。

なお、先ほどの早見表の内容をもとに、フローチャート形式に以下のとおり描き起こしてみました。確かにこの場合は早見表の方が見やすいですね。

※方面・都市・条件を都度お客様にヒアリングするやり取りまで厳密に描き起こすのであれば、さらに複雑になります。

この場合は、業務フローチャートには以下のようにやり取りの流れだけ記載し、早見表は別添資料とすると、見やすくなるでしょう。

前回記事「業務フローチャート活用術【前半】基本と作成ステップ」で、業務フローチャートの粒度について「細かければ細かいほど良いわけではありません。その分フローチャートが長くなるので、読む負荷が大きくなります。業務フローチャートの作成目的に応じて粒度を調整しましょう」とお伝えしましたが、まさに上記のような書き分けが必要になってくるということです。最初のうちは難しいと思いますが、何度か描いているうちに、どこまでの情報をフローチャートに盛り込むべきかは判断できるようになっていきます。

6. 業務フローチャート活用に役立つ書籍

初めて業務フローチャートを描く人が迷うだろうポイントが網羅的に細かく解説されており、初学者にとって最適な一冊といえます。私もフローチャートを初めて学んでいた頃にこの本に出会いたかったです。(2023年11月出版なので無茶な願いですが・・・)かつて私自身が悩みながら導き出した描き方の答え合わせをしているようでした。

「はじめよう!〇〇」シリーズ(システム設計、要件定義、プロセス設計)の1冊ですが、開発に携わらない業務の人にも役立つ内容となっています。業務フローチャートを描き出す以前に「プロセス設計とは何か」を解説した良書だと思います。「プロセスとは何か」から始まり、目玉焼きを作るプロセスなど、身近な例を交えながら丁寧に説明しています。

ちなみに、本書を再読して気づいた興味深い点として、ASIS、TOBEプロセスに加えて「CANBEプロセス」という言葉がありました。CANBEプロセスとは、TOBEやASISプロセスを作成した後に、各種制約を織り込んで実現可能なプロセスに設計し直したプロセスを指しています。ASISとTOBEのギャップを埋める際に有用な概念であり「CANBE」という命名がぴったりだと感じました。

3冊目は、業務フローチャートを描くスキルに特化した一冊と言えます。実際に演習形式で描いて学ぶ内容となっています。演習問題は、設問、解答、TIPSで構成されており、「情報システムの区画(列)は分けるべきか」「終了点は複数あっていいのか」「例外処理はどのように書けばいいのか」など、全体で38のTIPSが解説されています。

おわりに-フローチャートを描くのは楽しい!

私が初めて業務フローチャートを描いたのは2018年頃でした。その経験は、過去の記事でも少し触れています。

この頃初めて業務フローチャートを書きました。書き出したら楽しすぎて4時間没頭して書き続け、危うく会議をすっぽかすところでした・・・!ジグソーパズルに熱中しているときの感覚に近い気がします。

わたしの業務改善ストーリー

初めての作成にもかかわらず、そのフローチャートを見た当時の上司(フローチャートマスター)から「初めて書いたとは思えないくらいよく描けている」と評価いただいたことは、私の熱意をさらに高めるきっかけとなりました。前回記事の「2. 業務フローチャート作成のステップ」でお伝えした「業務フローチャートは『分岐』と『バトン』が命」という重要な観点も、この恩師から学んだ教えの一つです。

業務フローチャート作成の魅力は、複雑な業務プロセスを視覚化し、整理する過程にあります。それは問題解決のパズルを解いていくような創造的な体験とも言えるかもしれません。この過程で、業務の全体像が明確になり、改善点が浮かび上がってくる瞬間は特に喜びを感じます。皆さんも、業務フローチャート作成の楽しさをぜひ体験してみてください。

ご覧いただき、ありがとうございました。

「スキ」だけで十分うれしいです。サポートいただいた場合は、”業務改善”関連書籍の購入費にあてさせていただきます。これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。