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✴︎グラスの中の星空✴︎

夜が深まると訪れる場所。

2階へと続く階段を

ゆっくり、

ゆっくり上がると現れるアンティーク調の扉。

両手でぐっと押さえ中に入ると

柔らかな優しい灯りと

美しき骨董品。

そして、所狭しと置かれた用途も様々な

調度品達。

まるでここは宝箱をひっくり返したかのような

煌びやかな

世界。

誰かに大事にされてきた物達。


慈しみ、愛されてきた数々。

誇らしげに、並び、出迎えてくれる。


うだつの上がらない日常から。

暫し、時を忘れて迷い込む。

店内には、心地よいBGMと

繰り返す波の音。

揺らぎのリズム。1/fゆらぎ。

心臓の鼓動。

炎の揺らぎ。

繰り返す波の音。

一定数。繰り返すリズム。

私の日常も。

繰り返しのように。

毎日、

毎日、

同じように。

変わりもせずに

繰り返し生きている。


私だけが。まるで。

凪なのだ。

常に風待ちをして

漂っている。

月も星空さえ見えない。

闇夜をただ生きている。

いつからか。

そんな風に、

自分の人生を俯瞰していた。

いつからか、

結果ばかり気にする様になった。


一緒に働いていた同期は出世し。


同じ歳の友人達は、

結婚して

子供や旦那さんと仲睦まじい姿を

SNSにアップする。

知らない誰かのSNS

楽しそうな日常。

たったそんな些細な事さえ。

気にする様になった。


いつの間にか。

自分だけが取り残されてしまったかの様で。

他の誰かは皆、輝いている様に見えた。


私だけが波に乗れず。

凪。

常に一定で

繰り返すリズム。

努力して来なかったわけじゃないと思う。

ただ。。。。

答えが出かかった言葉を

ぐっと抑え込む。

それを認めてしまったなら。

私は。。。

座る場所により

表情を変えるこの場所で。

いつの間にか。

全てを忘れて、

身を委ねる。

「何になさいますか?」

優しい声に、ふと我にかえる。

あぁ…こんな夜は、縁起の良いものにしよう。

「シャンパンをお願いします。」

普段はいい事があった時にオーダーする。

あとは。気分を変えたい時。

「かしこまりました。」

ニコッと笑い、

光を反射し、美しく輝く

グラスを手に取る。

ポンっと蓋を開ける音。

グラスに注ぐ際に

パチパチと軽やかな泡の弾ける音が

鳴り響く。

グラスからは、

次々と

泡が出来ては消えて。

浮かんでは、すぐに消えていく。

まるで海の奥深くの

海底から立ち上がる気泡のように

海面目指して

下から上に

次から次へと生まれては。消えてゆく。


息をする事を忘れてしまった

息苦しい

日常に。

少し。空気が生まれた様に思えた。

グラスを見ながら。

ポツリと教えて下さった。

「シャンパンの泡は

星を飲むと言われてるんですよ」

グラスを手渡す際にそう言って、微笑んだ。

美しき満天の星空と

弾ける泡を口に含み。

コクンと飲み干す。

何とも言えぬ爽快感が走る。

これを全て飲み干してしまったなら

私の中には。

壮大な満天の星空が広がるのだろうか。

そんな他愛も無い事を考える。

幸せは。

気付くものだ。

当たり前の日常の中から

どれだけ

沢山の幸せを見つけられるか。

言われた言葉が

脳裏をよぎる。

闇夜を照らす星の瞬きは。

1つ1つが重なり合い、

光り輝く。

他の星に輝きがある様に。

自分にも光はあるのだ。

時に。見えなくなってしまう。

見失なってしまうから。

他の星の瞬きが眩しく感じるのだ。


小さな幸せを拾い集めたら。

大きな光となり得るのだろう。

パチパチと弾ける泡は天使の拍手。

下から次々と生まれる泡は

運気を上昇する。

幸せの由来を沢山持つシャンパン。

グラスに輝く星々を

グッと飲み干して。

また、私の中に。光を戻す。

お会計を済ませて。

また日常へ戻る。

扉を開けた瞬間に。

重い扉を開いた勢いで。

風が生まれ、

頬をそっと撫でる。

まるで、凪だった風待ちから。

新しい風が吹いたようだった。

幸せは自分で創るもの。


いつの間にか、

冷たくなった夜風に。

季節の変わり目を知る。

新しい始まりを予感させるように。

風がそっと体を包んだ。

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#劣等感



















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