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自分勝手な思い込みを、柔らかな風で吹き飛ばしてくれるかのように
noteで相互フォローさせてもらっているせやま南天さんが、昨年創作大賞を受賞された。
そして今月、南天さんの小説『クリームイエローの海と春キャベツのある家』が出版された。
昨日、なんとなく訪れた梅田の紀伊國屋書店で「南天さんの本、どんな感じで並べられているのかな~」と気になって、店内を探し回った。
自力で見つけ出したかったけれど、広い店内には膨大な本があり、なかなか探しきれない。観念して検索サービスを使うと、わたしがその時いた場所の、すぐ隣の棚に置いてあることが発覚。「もう少し棚をよく見てから検索すればよかったなぁ」なんて思いつつ、該当の場所まで歩く。
そして、見つけた。
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クリームイエローの海と春キャベツのある家。南天さん直筆の色紙が添えられた本が、そこにはちゃんとあった。「わぁ!」と、なんだか嬉しくなってしまった。南天さん、会ったこともない方のはずなのに。
かわいい表紙に、思わず手が伸びた。
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これは早速、帰りの電車の中で読んでみよう。そう思いながらこの本をレジに持って行った。
基本的に本は電子書籍で読む派のわたし。でもこの本は、どうしても書店で並べられているものを手に取って購入したかった。紙の本で読んでみたかった。
電車の中で「これは大事に読もう」と思いながら、ページを開いた。その途端、物語に一気に吸い込まれていった。電車の中で一心不乱に読んでいたら、あっという間に最寄りの駅に着いてしまった。自宅に着いてからも、続きが気になって仕方がなかったので、結局、家族がみんな寝静まった深夜に、最後まで一気に読んでしまった。大事にゆっくり読もうと思っていたはずなのに、止められなかった。
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大手の商社を退職し、家事代行サービスの仕事を始めた主人公の津麦。担当することになったのは、5人の子どもを育てるシングルファーザーの織野家。家の中に足を踏み入れると、そこにあったのはクリームイエローの洗濯物の海。
この物語は、家事に育児に仕事の話だった。そのどれもが、わたしにとって身近なテーマ。いや、きっと誰にだって身近なテーマなのだろう。
先人の背中を追って家事と育児に溺れかける織野家の父に、自分の姿を少し重ねてみたりする。自分よりよくできる人と、そのレベルに到達していない自分を比べて「こんなもんじゃいけない」と必死になる。
全部をきちんとできる人の方が、本当は少ないんじゃないか。家庭って、普段、壁に囲われて、外からは見えないものだから。勝手に皆、他の家はできていると思い込んで、そうして自分は足りていないと思ってしまう。
この言葉に、なんだか救われた気がした。わたしも、足りない部分ばかり見て、それを補おうとしすぎてしまう。でも、みんながみんな完璧になんでもこなせるわけではない。壁に囲われて見えないはずのものを、見えている気になって、勝手に比較して、勝手に落ち込む。なんて、自分勝手な落ち込みなんだろう。
そんな思い込みを、柔らかい風でふわりと吹き飛ばしてくれるような物語だった。
今のわたしが、この本に出会えてよかったなと思った。この本を読めてよかったなと思った。
『クリームイエローの海と春キャベツのある家』、おすすめです。
そんなわけで、今日もおつかれさまでした。
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