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両手いっぱい抱きしめるのは、思い出と、音楽と

この声を聴くと、どうしても心がギュッと締め付けられてしまう。

そんな、思い入れのあるアーティストがいる。

決してファンってわけではないのだけど、わたしの思い出にはいつもその音楽があって。

いや、わたしの思い出というより、彼と過ごす思い出の中にその音楽があるって言った方が正しいのかもしれない。

彼の家でも、彼の車の中でも、散歩しながら口ずさむのも、いつもその音楽。

わたしはそのアーティストのファンだったわけではないのだけど、気づけば口ずさむようになっていたのは、間違いなく彼のせい。


夕暮れの川沿いを歩きながら歌ったあの曲。
海までの自転車の道を口ずさんだあの曲。

彼と紡いできた思い出のどのページにも、その音楽が流れていて。

離れて暮らす彼が恋しくなるたびに、わたしはその音楽を聴いた。


大切さ教えてくれるのはこの「距離」です


そう。そうなんだよ。って何度も思いながら。
彼も、同じ曲を聴いてたらいいな、なんて思いながら。

わたしが彼のことを考えながらこの曲を聴いているのと同じように、彼もわたしのことを考えてくれてたらいいな、なんて思ったりしながら。


幸せな時に聴いたあの曲も、辛かった時に聴いたあの曲も、聴くと胸が締め付けられてぽろぽろと涙を流してしまったあの曲も。

どの曲も彼との思い出であふれているから。


だから、どうかこれからも、ずっと。

一緒にあの音楽を聴ける日が続きますように。





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