勝村彩子 ◎CA×採用広報ライター◎

大阪府出身、ドイツ在住11年目。同志社大学文学部卒。海外在住でも育児中でも、笑ってバリ…

勝村彩子 ◎CA×採用広報ライター◎

大阪府出身、ドイツ在住11年目。同志社大学文学部卒。海外在住でも育児中でも、笑ってバリバリ働きたいパラレルワーカー。現役CAの傍らライターとして、主に企業や個人の採用広報インタビュー記事、イベントレポートなどを手掛ける。noteでは日々感じていることを書き残していきたい。

最近の記事

12年間の冒険を、終えた。

2011年2月5日に始めた「ドイツ生活」という12年間の冒険を終えた。 本帰国当日、フライトは午後からだったから、午前中に余裕があれば、最後にマイン川沿いを散歩できたらなんて思っていたけれど、最後の最後まで慌ただしく荷物をつめて、ホテルを後にする。 気持ちの良い青空のもと、思いのほか風が強くて、型崩れを恐れてスーツケースに入れられなかった帽子が、飛んでいかないように頭を押さえながら、タクシーに乗り込んだ。 空港までの車内、いつもはずっとしゃべっている長女が、窓の外をしば

    • ローマで休日

      ドイツ・フランクルトから飛行機で2時間弱。 家族4人でローマに行ってきた。 街のあちこちに、当たり前のようにある遺跡たち。 普段からヨーロッパに住んでいるのに、 ヨーロッパにいるんだなぁという気持ちになった。 そして食文化が全然違う。 パスタの湯で加減は硬めで、味は濃い。 これがとっても美味しい。 カルボナーラが大好物な夫は、連日カルボナーラを食べていた。 ピザが大好きな私と娘たちは、 暑い中、一日中歩いて疲れていても、 本場のピザを食べればすぐに笑顔になった。 ピザに

      • 母の日に「内省」という名で、ごちゃごちゃ考えている。

        昔から、私はやることは何でもそれなりにやってのけるタイプだ。 これには理由がある。 そもそも、苦手なことは極力やらなかったからだ。 小学校低学年時に習っていたピアノ、 折り紙や裁縫といった手先の細かい作業、 パズルなどのコツコツ組み立てていくもの、 数学や理科といった数字や記号を扱う思考は、 早々に「私の人生には必要ない」とバッサリと切り捨ててきた。 得意なことに力を注ぐ。 苦手分野はスルーする。 そんな風に生きてきた。 そんな私が今、日々、格闘しているものがある。 ……

        • あの頃の冒険は、いつの間にか少々退屈な日常になってしまった。

          雲ひとつない青空に、飛行機雲が数本、あちこちの角度に伸びている。 ドイツ・フランクフルトの空だ。 市内から空港が近いこの街では、 空を見上げれば、 いつでもどこかに飛行機が飛んでいる。 先月までの灰色の空から一変して、 すっかり春らしい陽気になった。 イースター4連休。 貰ってきたり、自分たちで買ったりして、 玄関先は、気が付けばウサギのチョコレートだらけだ。 市内に出かけると、 今年も本屋さんの前に、大ぶりの色の濃い桜が咲いていた。 ソメイヨシノではないからだろう、 私

          彼女は「小さい私」ではなかった。

          私にはふたりの娘がいる。顔も性格も、5歳の長女は私に似ていて、2歳の次女は夫に似ていると言われる。 長女は自己主張が激しい。実によく喋り、ずっと文句か要求を言っている。そんな風に我が強いわりに、実はメンタルはそんなに強くない。ちょっとしたことで傷つき、拗ねる。そんなところも私に似ていると思う。彼女と私が言い合いをしていると、夫は私たちの顔を見比べて「……一緒やん!」などと言いながら、通り過ぎていく。 彼女は私と同じく、ピザが大好きだ。そしてまた同じく、トマトソースは平気な

          彼女は「小さい私」ではなかった。

          美しいおっさんの背中を見て、歳をとるのも悪くないと思った。

          毎週火曜日の夕方、私は機嫌が良い。夕飯の支度を済ませ、私が出かけるのを引き止めようとする娘たちのほっぺに軽くキスをして、「いってきます」と軽い足取りで家を出る。あるおっさんに会いに行くのだ。 おっさんの名前はマリアーノという。多分40代半ばだろう。無精ひげなのか、あえてそういうデザインなのか、よくわからないモジャモジャの口元。かきあげる様子が異常にセクシーなクセのある髪。無駄のない、鍛え上げられた躰。そして黒い瞳でまっすぐに見つめ、私のことをAyaと呼ぶ。 マリアーノはフ

          美しいおっさんの背中を見て、歳をとるのも悪くないと思った。

          金田一少年に感謝を

          「本が好きな子になるように。」そう願った母は、私が幼い頃、たくさんの絵本を買い与え、よく読み聞かせをしてくれた。しかし、自分で文字が読めるくらい大きくなっても、私は本を好きにならなかった。絵本は良いが、文字だけの本はしんどい。読書に苦手意識があった。   そんな私は、小学校で出される読書感想文の課題にいつも短編集を選んでいた。当時は『学校の怪談』が流行っていて、「トイレの花子さん」や「メリーさん」といった2~3ページの怪談話がいくつもあった。それらひとつひとつに、「怖かった