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12年間の冒険を、終えた。

2011年2月5日に始めた「ドイツ生活」という12年間の冒険を終えた。

本帰国当日、フライトは午後からだったから、午前中に余裕があれば、最後にマイン川沿いを散歩できたらなんて思っていたけれど、最後の最後まで慌ただしく荷物をつめて、ホテルを後にする。

気持ちの良い青空のもと、思いのほか風が強くて、型崩れを恐れてスーツケースに入れられなかった帽子が、飛んでいかないように頭を押さえながら、タクシーに乗り込んだ。

空港までの車内、いつもはずっとしゃべっている長女が、窓の外をしばらく黙ってみていた。次女は空を見上げて、何度も「ヒコーキ!」と声を上げていた。

本帰国のための準備はあまりに膨大な量で、ひとつひとつのタスクを片付けても、終わりが見えず、こんなに時間にも頭の中にも空白がない期間は今までなかった。

国際引越―船便は3か月後に日本に届く

にもかかわらず、本帰国への本当の意味での実感はあまりなく、感傷的な気持ちになる暇もなく、なんとかやっと飛行機に乗り込んだ、そんな感じ。

ドイツ生活という冒険は、もう何年も前に日常になっていたし、「ドイツはもう嫌だ」と何度も思ったけれど、いざ本帰国を決めてからその日常を振り返ると、悲しかったことや腹立たしかったことは笑い話で、嬉しかったことや美しい瞬間ばかりが頭に浮かぶ。

そして何より、本帰国を決めてから、仲良くしてもらっていた人たちと会うたびに、私たちは周りの人や環境にすごく恵まれていたのだと思った。

またドイツに住むことがあったとしても、きっとそれはフランクフルトではないし、時間の経過とともに、これまで見てきた景色や、つながりや、抱いた感情と全く同じ体験をすることは、決してない。

久しぶりの日本での生活は、楽しみで、嬉しいけれど、そのうち慣れてきたら、ドイツが良かったなと思うことも、きっと、あるだろう。

フランクフルト中央駅

12年前、縁もゆかりもないドイツに行くことを決められたのは、チャレンジしたかった転職が叶ったからだとはいえ、若さゆえの勢いだった。

そして「この選択を正解にしていきたい」と言っていたことを覚えている。

12年経って、今回日本に帰ってきて、当時の私に、あの時の選択はちゃんと正解にできたよ、と言ってあげたい。

そしてまた、今回、本帰国したという選択を、今度は家族で正解にしていきたい。

家族で最後に行ったドイツ料理屋さんにて

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