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《世界史》女王陛下のお気に入り

こんにちは。
Ayaです。
義兄の死によって即位したアン女王。彼女には『お気に入り』の女性がいました。まずはアン女王の即位までの人生についてまとめます。

アン女王(1665〜1714)

アン女王は1665年ジェームズ2世と最初の妃アンとの間に生まれます。姉メアリー2世とともに、当時の国王チャールズ2世の配慮でプロテスタントとして養育されます。
1685年デンマーク王子ヨウエン(英語読みでジョージ)と結婚します。アン夫婦は仲睦まじく、毎年のように出産します。しかし、不幸なことにすべての子供が夭折してしまいます。この原因は抗リン脂質抗体症候群だと言われています。
名誉革命後、姉夫婦が即位すると、王位継承者第一位となります。義兄ウィリアム3世の崩御後、1702年即位します。その治世で有名なのが、1707年のグレート・ブリテン王国の名称の策定でしょう。

アン女王
無類の酒好きで、『ブランデー・ナン(ブランデーおばちゃん)』というあだ名がある。酒の飲み過ぎで肥満になり、葬儀では真四角の棺が使われたと揶揄された。

アン女王には片時も離れず、行動をともにする女性がいました。彼女がサラ・ジェニングスです。

サラ・ジェニングス(1660〜1744)

サラはアン女王より5歳年上ですが、幼少時から仕え、主従というより、強い友人関係を結びます。
17歳の時、後の夫ジョン・チャーチルと出会います。お互い一目惚れでしたが、当時チャーチルはチャールズ2世の愛妾バーバラ・パーマの愛人をしていて、パーマに貢がせた金銭で生活をしていたため、チャーチルの父が2人の仲を認めません。しかし、サラの弟が亡くなり、サラがジェニングス家の相続人となると、チャーチルの父は結婚を許します。やがてサラは妊娠、女児を出産します。
名誉革命時はアンとともに軟禁されますが、連れ立ってロンドンを脱出、アンの義兄のもとに避難します。
革命後、アンは彼女をさらに信頼し、手元から離しません。サラの夫チャーチルがジェームズ・フランセンス・エドワード(ジェームズ2世と後妻の子でアンの異母弟。たびたび王位奪還を目指して暗躍していた)との密通が疑われたときもサラ夫婦を弁護し、アンは宮廷を追われます。アンの姉メアリー2世もこの異常な関係に憂慮し、サラを追放しようとしますが、アンは姉メアリーと絶交を宣言します。
姉メアリー2世が崩御すると、義兄ウィリアム3世とアンが和解し、サラも宮廷に復帰します。その頃にはアンとサラの関係は公然の秘密で、サラの権勢は侮れないものとなっていました。
アンが即位すると、サラは固辞しましたが、女官の最高位である"ミストレス・オブ・ザ・ローブス"に任命します。夫チャーチルにもマールバラ公位と多額の年金が与えられ、内実ともにサラの権勢は頂点に達したのです。

サラ・ジェニングス
アンの無二の友人で、サラがアンを一方的に支配する関係は人々には異常に見えた。

アビゲイル・メイシャム(1670〜1734)

この異常な関係にも、隙間風が吹きます。サラがアン女王にあまり構わなくなったのです。1709年には夫のジョージ王配を亡くし、アンは悲嘆に暮れますが、サラはアンに宮殿を移るように進言し、拒否されると叱りつけます。また当時、スペイン継承戦争にイギリスも介入しており、その急先鋒がサラでしたが、アンは戦争が長引くにつれ和平派に傾きます(のちにこの戦争でイギリスは広大な植民地を獲得。"アン女王戦争"と呼ばれます)。そんな時に登場したのがアビゲイル・メイシャムでした。
アビゲイルは貧しい出身で、従姉にあたるサラの縁故で宮中に出仕した女官でした。強気で常に支配しようとするサラより、優しく寄り添ってくれるアビゲイルに、アンは心を許します。アビゲイルはのちに結婚し、爵位や年金も与えられますが、サラはアビゲイルの結婚すら知らされていませんでした。アビゲイルは和平派と急接近しており、サラは必死に巻き返しを図りますが、完全にアンの愛顧は失われ、1711年ミストレス・オブ・ザ・ローブスを剥奪されます。サラは宮廷を去ります。

アビゲイル・メイシャム
サラの追放後、王室歳費管理官に就任する。

ライバルがいなくなったアビゲイルですが、その天下も続きません。翌1712年にアン女王が崩御するのです。享年59歳。後ろ盾を失ったアビゲイルは宮廷を立ち去ります(1734年死去)。一方、サラは宮廷に復帰して、国王や有力者と交流をもち、89歳で大往生を遂げます。
アン女王は自分の異母弟ではなく、始祖ジェームズ1世の曾孫ハノーヴァー選帝侯ゲオルグを後継指名していました。このためステュアート朝は断絶するのですが、カトリックの異母弟ではなく、遠縁のゲオルグを選んだ理由は議会の支持でした(継母の息子なので異母弟をアン自身が嫌っていた可能性もありますが)。ゲオルグはジョージ1世として即位、現在のエリザベス女王に直接つながるハノーヴァー朝の成立です。

ステュアート朝、終わりました〜。想定で2回のはずが興味深い人物が多すぎて、4回になってしまった(汗)
2018年公開の『女王陛下のお気に入り』はアン女王をめぐるサラとアビゲイルの確執がテーマです。ジョージ王配の死が省略されたり、アビゲイルが野心家に設定されたりの変更点はありますが、大筋はそのままです。『女王陛下のお気に入り』、アビゲイルがゲスすぎて、サラに肩入れしてしまったのですが、何よりアンが狂乱に陥るシーンが多くて、参ってしまいました。史実のアンも常に誰かに支えてもらえないと生きていけないような女性で、後年のヴィクトリア女王も同じタイプでした。
そして夫の名前でお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、サラはチャールズ元首相の御先祖です。大往生して子孫も活躍って、サラすごすぎるよ!
次はフランスのブルボン朝についてまとめます〜。ブルボン朝もエピソード満載すぎて、まとめるの大変そう(汗)

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