春日彩花

恋愛小説を書く人。ノベマ、エブリスタにて活動中。 『蛍の頃に会いにきて』が近日、双葉社…

春日彩花

恋愛小説を書く人。ノベマ、エブリスタにて活動中。 『蛍の頃に会いにきて』が近日、双葉社よりコミカライズ予定です。 他サイトで恐縮ですが主な作品は↓こちらで読めます。 https://novema.jp/member/n1166315 よろしくお願いします🌸

記事一覧

ひねくれチョコレイト4

 あの日から、冬真くんとの照れくさくて、甘ったるくて、現実味のない恋愛が始まった。  まだ木嶋は戻ってこない。きっと私を待たせていることなんて忘れて、スマホをい…

春日彩花
4年前
16

ひねくれチョコレイト3

 そんなことが続いて三週間ほど過ぎた水曜の夜、だったと思う。  その日はギャル店員と眼鏡くんがバイトの日で、なんだ、そうか今日は彼のいない日か、なんて気付くとが…

春日彩花
4年前
16

ひねくれチョコレイト2

 電子音のメロディーを聞きながら自動ドアを入ると、レジカウンターの向こうで伝票らしき用紙の束をチェックしていた寝ぐせの店員が振り向いた。  私が「あの……」と声…

春日彩花
4年前
14

ひねくれチョコレイト1

 サングリアから始まり、スパークリングワインの赤、白、店のオリジナルというカクテルやハイボール、木嶋の入れた赤ワインのボトル。横浜駅そばのイタリアンバルと冠した…

春日彩花
4年前
19
ひねくれチョコレイト4

ひねくれチョコレイト4

 あの日から、冬真くんとの照れくさくて、甘ったるくて、現実味のない恋愛が始まった。
 まだ木嶋は戻ってこない。きっと私を待たせていることなんて忘れて、スマホをいじりながらのんびり一服しているのだろう。

 これは、酔っているから。別に甘えたいわけでも、彼の声が聞きたいわけでもない。
 酔っ払って、木嶋もいなくて、ただ、手持ち無沙汰なだけ。それだけ。

 自分に半ば言い聞かせるようにして、私は冬真く

もっとみる
ひねくれチョコレイト3

ひねくれチョコレイト3

 そんなことが続いて三週間ほど過ぎた水曜の夜、だったと思う。
 その日はギャル店員と眼鏡くんがバイトの日で、なんだ、そうか今日は彼のいない日か、なんて気付くとがっかりしている自分がいた。ハッとしてそんな気持ちを振り払い、缶ビールの並ぶ冷蔵庫の前に立つ。

 冷蔵庫のドアに手をかけた私の耳に、コツコツとガラスを小さく叩く音が聞こえた。
 音のした方を見ると、雑誌の並ぶラックのむこう、通りと駐車スペー

もっとみる
ひねくれチョコレイト2

ひねくれチョコレイト2

 電子音のメロディーを聞きながら自動ドアを入ると、レジカウンターの向こうで伝票らしき用紙の束をチェックしていた寝ぐせの店員が振り向いた。
 私が「あの……」と声をかけたのと、彼が「いらっしゃいませ」と言ったのは同時だった。
 彼がきょとんとした顔でこちらを見つめている。
急に気恥ずかしくなって、咳ばらいをひとつした。気を取り直して口を開く。

「あの、これ。買ってないのに袋に入ってたんですけど。レ

もっとみる
ひねくれチョコレイト1

ひねくれチョコレイト1

 サングリアから始まり、スパークリングワインの赤、白、店のオリジナルというカクテルやハイボール、木嶋の入れた赤ワインのボトル。横浜駅そばのイタリアンバルと冠した居酒屋で、今夜もしこたま飲んだ。
 大学を卒業後、入社した広告代理店の同期で、もう七年の付き合いになる木嶋ともつれ合いながら店を出て雑居ビルの階段をくだる。二足のハイヒールが鳴らす不揃いなリズムが、どれだけ私たちの足取りがおぼつかないかを物

もっとみる