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本当にバルセロナに住みたい? ワーホリ・留学先を考える

よく、「なんでスペインに住みたいと思ったのか」「なんでバルセロナにしたのか」と聞かれます。簡潔に答えると、海がある、1年の8割方晴れている、ご飯がおいしい、言葉が通じる、これに尽きますが、あまりにも適当すぎるのでもう少し説明したいと思います。
 
そもそも、私が人生で初めてスペインの地を踏んだのは、2009年当時20歳のときのこと。そのときはマドリードからバスで2時間くらいのところにあるサラマンカというところに留学しました。ほかの記事でも書きましたが、当時はたいしてスペイン語など話せず、サラマンカがどこにあるのかすら調べていかず、いきなりイベリア半島のど真ん中のど田舎にバスで送り込まれて、本当に絶望的でした。生ハムの名産地であるサラマンカは、道を歩いていても生ハムの匂いがして、当時はそれも好きになれませんでした。

それでも、慣れというのは恐ろしいもので、1年経てば天国。やっとスペイン語でコミュニケーションもとれるようになってきて、楽しくなってきた矢先に日本帰国。それ以来、ずっとスペインに戻りたいと思っていました。
 
2017年にワーキングホリデービザを使ってバルセロナにやってくる前は、サン・セバスチャンとバルセロナのあいだで迷っていました。というのも、サン・セバスチャンはサラマンカ留学中に訪れてから、恋に落ち(街にです)、その後も何度も何度も通った場所。フランスとの国境沿いにあるため、スペインにはない洗練された街並みが広がり、楽しすぎるピンチョス文化、そして溜め息しかでないコンチャ海岸がある。もう完璧! だったのですが、難点は雨が多い、天気が悪い。気分が天気によってかなり左右される私にとっては、ハードルが高すぎると思ったわけです。
 
海のない大都会マドリードは、大好きだけど、住めない。バレンシアやマラガには海もあるけれど、ちょっと何もなさすぎる(住んでいる方、ごめんなさい。どちらも素敵な都市だし、なんならマラガに住むことを見据えてまた旅行に行きたいとも思っています)。カルチャーが集まり、自然もあり、だけどそこそこ都会で住みやすい街、と考えるとバルセロナしかなかったのです。
 
そして7年間住んでみて思うことは、バルセロナはスペインであってスペインではないということ。たしかに天気もよく、ご飯は美味しいし、自然も身近にあり、美術館もたくさんあり、年中コンサートやガストロノミーイベントはいたるところで開催され(とくに夏のあいだは無料のイベントがたくさん)、バルセロナ市内は公共交通機関でどこでも行ける。
 
でも、ここが「スペイン」だと思ってくるとちょっとギャップがあると思います。そもそも、ここカタルーニャ州ではカタルーニャ語とスペイン語が公用語。1714年9月11日にスペイン継承戦争でカタルーニャが負け、さらに1936年からスペイン内戦を経てフランコの独裁政権が始まり、カタルーニャ語が禁止され続けてきたという歴史があるため、ここの人々の多くは自分が「スペイン人」と思っていません。それが顕著に現れたのが、2017年10月におこなわれたカタルーニャ独立を問う住民投票でした。
 
非常に複雑なので、専門家でもない私がこの場で解説を書くことは避けますが、カタルーニャ独立問題は根深く、現在は2017年当初と比べて落ち着いたものの、だからといって彼らの民族アイデンティティが失われたわけではありません。
 
となると、スペイン語だけできても住めば住むほどカタルーニャ語ができないことに不便を感じてくるわけです。それは日常生活然り、現地のコミュニティーに入ればなおさらです。
 
そして言葉も土地も違えば、人柄も違うのは当たり前。以前、インスタグラムのリールで、マドリードの人が道で出会った知らない人を「友達」だと言って、“本当の”友達の家で開かれているパーティーに連れていく一方で、バルセロナの人は“知り合い”でも友達のパーティーには連れていかない、という動画を見ました。もちろん人によるし、大袈裟に表現しているとは思いますが、たしかにいわんとしていることはわかります。
 
スペイン人が超フレンドリー、みんなアミーゴ! みたいな感じなので、余計にカタルーニャ人が内向きな印象を受けるのかもしれません。でも逆に「カタルーニャ語を勉強している」というだけで、すごく喜んでくれて、ポジティブな印象を抱いてくれたりもします。
 
正直、外国人としてここに暮らしていると、疲れることは結構あります。言葉の問題だけでなく、ワールドカップやユーロカップでスペインチームが活躍してもたいして盛り上がらない、あまり堂々と「スペインが好き」といえないし、中央政府と対立があったときは完全にスペイン政府が悪者となるので(別にスペイン政府が正しいというわけではないです)、普通にスペインという国やスペイン人の人柄が好きな立場からすると、複雑な心境になります。
 
だから、もしも「スペイン」に住みたいのであれば、ほかの都市を選んだほうがいいのかもしれません。私の勝手な理想は、マドリードが地中海に面しているところに位置していることです。まぁそんなこと言っても無理なので、地道にカタルーニャ語を学ぶ日々は続きます。

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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