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パリの街角から、食関連ニュース 2021.05.05

今週のひとこと

フランスのロックダウンは段階的に緩和されています。レストラン・カフェに関しましても、順次的な営業許可が提示されました。まずは5月19日からはテラスの解放、6月9日からは、衛生基準下での店内の営業も可能になるとのこと。約6200万人の人口の1600万人がワクチンを接種しており、進み具合からみた希望的観測で、感染者数の減少を見込んでいるとは思いますが、ワクチンをまだ打てない状況にある身としては、劇的な改善が見られない中、正直なところ不安です。2日以内に受けた検査の陰性結果、あるいはワクチン接種証明による衛生パスポートも6月からアプリで入手可能に。イベントやスタジアムなどでは必要になることは必須で、レストランや劇場、映画館など日常的な場所では必要とされないと概要にはあるものの、その境界線は見えにくく、新たな行動制限や圧力が生まれるのではないかとも危惧しています。

仕事帰りに、篠塚大さんがオーナーシェフのパリ3区にあるビストロ「レ・ザンファン・ルージュ」へ。昨年のロックダウンではチャレンジしなかったテイクアウト食を今年の1月下旬から初めて早4ヶ月目に。日本人でありながら、臓腑をくすぐるようなフランス土着のエスプリをたたえた料理で、さすが、師匠であるビストロノミー立役者イヴ・カンドボルドのそれを受け継いでいるといつも感心してしまうのですが、他の料理人さん同様、料理ができなかった期間は並々ならぬフラストレーションがあっただろうと察します。数えれば、レストランは11月下旬から、なんと6ヶ月以上もの間、営業ができなかったということになります。パリ16区「ラルケスト」のオーナーシェフ、伊藤良明さんも、何かのSNSで、昨年のロックダウン明けにレストランをオープンして、料理をできたことが、なんて幸せなことだったのだろうと呟いていらした。その言葉が、今でも胸に刺さります。スタンドで大シェフと立ち話をする間、町行く近所の人々が彼に声をかけ、テイクアウトの注文を約束するなどの心を通わせるコミュニケーションを見て、6月からのオープンも、すぐに、というわけにはいかないかもしれませんが、愛されているこの店に、人々が戻ってきてくれるだろうということを予感しました。

https://les-enfants-rouges-paris.fr/fr

それにしても、一足先にオープンできるテラスを持つレストランはフランス全国で4軒に1軒のみ。また、昨年は、パリでは本来は有料となる、公共スペースの仮設テラスを無料として、たくさんのレストランやカフェがこの措置によって、一部でも経済的に救われてきましたが、今年の7月からはどうも無料ではなくなりそうです。テラス料金の免除などの支援金が3400万ユーロと膨らみ、パリ市の財政を圧迫しているということです。

この措置に対し、非難轟々の声が上がっていますが、支援も未来永劫ではない。他力はいずれにしても自分のものではなく、主観的には身勝手に見えるが、いつかはなくなるものだという当たり前のことを、コロナ禍で痛いほど学ばされましたから、支援にばかり頼ってはいられません。ものを生み出す知恵と、進める勇気の大切さ、しかし、すぐに成果が得られることもない厳しさも念頭に。とはいっても、企業や個人の体力もさまざまで、本当に厳しい世の中だと思います。だからこそ、気づきを与えてくれる友人や、志を共にする仲間の大切さを切に感じています。

新たに始まるレストラン。待ち遠しいと思いつつ、私自身がどのように感じるのかも興味深く見守りたいと思っています。

今週のトピックスは今週のひとことの後に掲載しています。【A】2022年にオープン予定の映画館に、ティエリー・マルクスのレストラン開設。【B】ホテル「ル・リッツ」にブティック・パティスリー、オープン予定。【C】マルセイユに100%ソーラーシステムによるレストランオープン。【D】競争・消費・詐欺防止総局(DGCCRF)と3省による、リコール専用のサイトがオープン。【E】GQフランス、デジタル・イベント「GQ Food and Drink Experience」を発表。

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