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筋肉を愛し肥大化しすぎた男

金曜日にミスターMと飲んだ。
ミスターMは元同僚で、2年ほど私の元でセンクスメソッドを学んだ男である。
彼はこよなく筋肉を愛し、最近ではフィジークの大会に出場している。

年に1〜2回だろうか。
なぜかわからないが彼とは定期的に飲んでいる。
おそらく気が合うのだろう。
色々な進捗報告をして、またの再会を約束し別れる。

会うたびに彼の体は肥大化していく。
肥大化といってしまうと肥満を連想してしまうわけだが、
肥大の原因は確実に筋肉の肥大化である。

肥大化しすぎた筋肉はファッションの自由を奪った。
最近ではジャージ素材などの伸縮する洋服しか着られないのだそうだ。
洋服というものは一般的な体系を想定し、
そこにある程度許容値を設定した上で作られているものである。
S・M・Lあたりのサイズに多くの人類が分類される。
Mの肥大化した筋肉はその許容値を大きく超えている。
ウエストはMサイズだが、太腿はXXLサイズ。
つまりそんな感じである。

肥大化した筋肉は恋愛の自由を奪った。
Mには長い間彼女がいない。
M曰く、マッチョ好きな女性が言うマッチョというものは、
彼からすればマッチョではないそうだ。
Mが今まで出会ってきた女性の中にはマッチョ好きな人もいたそうだが、
脱がなくてもわかるMの肥大化した筋肉をみたマッチョ好きは、
皆その場を去っていったと言う。
マッチョというものは引き締まっているというだけの話であり、
彼の筋肉はもはや女性への威圧感でしかないと彼は分析する。

そんな中でもMへアプローチしてくる女性もいる。
20代中盤の健康な男子である。それは自然なことであろう。
しかし2回目から3回目のデートでその関係は終わってしまう。
筋トレの時間の捻出と、1日6回の食事が必要な彼にとっては、
女性とハンバーガーを食べにいく時間が無駄に見えてしまう。
筋トレ>女性という公式が見事に成立し、関係がおわるのである。

居酒屋のおつまみも、Pの香り(プロテイン含有量)を嗅ぎ分け、
Pが豊富に取れそうなものを注文する。
先日は焼き鳥屋に行ったわけだが、
はやりササミ系のメニューをよく食べていた。

彼はストイックな人間であり、
色々なものを犠牲にして生きている人間である。
犠牲を乗り越える原動力は筋肉への愛であり、
筋肉の肥大こそが彼の生きがいである。

彼から学ぶべきもの、ひとつだけ学べるとすれば、
「Love Yourself」ということである。
自分は嘘をつかない。
良くも悪くもその結果を正確にフィードバックしてくれるものだ。
人生をかけて取り組むべき課題があるとするならば、
その一つは自らを愛することになるだろう。


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