神垣忠幸

神垣忠幸

最近の記事

家族が認知症かなと思った時【応用編6】

・入院中の親が認知症に進行した場合・あなたが独身男性の場合・母親の場合 Mさんは大阪市内で79歳の母親と二人暮らししていた。新型コロナが蔓延している時期に、母親が骨折で入院し、面会できぬ間に認知症の症状が始まってしまった。退院しMさんとの二人暮らしが再開したが、要介護1と認定された母親は夜中に大声を出して、近所ともめたことがあり、とても困った。抑肝散を処方されてからは少し落ち着いたが、今でも夜中に目を覚ますことがあり、自分も眠れない。母親を家に一人置いておくことが不安なため

    • 家族が認知症かなと思った時【応用編5】

      ・都会暮らしの場合・あなたの兄弟姉妹が非協力的な場合・親が一人暮らしの場合・あなたが独身の場合・母親の場合 大阪市内でひとり暮らしをしているSさん。同じく一人暮らしをする母親が70歳の時に認知症症状を見せたことに気付きました。6年後更に急変した母親を見て、Sさんは母親の近くに引っ越し半同居を決意した。しかし、遠方に住む兄は協力してくれない上に指示だけはする。兄嫁は母親とは仲良くない。それもあってSさんは体調を崩したが、趣味のコーラスや社交ダンスには通う母親の社交的な性格のお

      • 家族が認知症かなと思った時【応用編4】

        ・あなたが独身の場合・母親の場合・家族が認知症を認めたがらない場合 ひとり娘のNさんは両親と暮らしていました。90歳の母親が認知症と診断された頃に初めて相談に来られました。Nさんは83歳の父親と二人で母親を介護していたが、父親は自分の妻の認知症を認めたがらず、デイサービス利用も嫌がった。半年も経つと母の周辺症状は進行し、同じことを聞き返す頻度が増え、興奮気味になる母親に不安になったNさんは父親を説得しデイサービス利用を始めた。 Nさんは将来は母親を施設に入れるのが良いと考

        • 家族が認知症かなと思った時【応用編3】

          ・親が一人暮らしの場合・母親の場合・田舎暮らしの場合 私の母親も遠方でひとり暮らしでした。2011年の夏に帰ってみると、母との会話は今までと変わらずにできたのですが、元気がなく、毎週のお習字や門徒としての外出を行きたがらなくなっていました。半年後には、家の中は雑然とし、母は更に変調を来していました。同じ市内に嫁いでいた姉と相談し、姉の来訪回数を増やしてもらい、母に携帯電話を持たせたりしました。しかし母の日々の暮らしを活発にさせることは何もできず、確実に認知症に進んでいきまし

        家族が認知症かなと思った時【応用編6】

          家族が認知症かなと思った時【応用編2】

          ・親と別居している場合・呼び寄せて同居しようと思った場合 老齢の親が骨折などで、片方が入院すると、残されたひとりの日常生活に支障が出ることがあります。子どもとすれば放って置けない。ましてやひとり住まいの親が認知症に診断されたりすると、同居する必要があるかもと考えてしまいます。しかし、いざ同居してしまうと引き返せない事態を招く恐れがあります。 あなたの配偶者にも老親がいるはずで、今は介護の心配がなくても、いずれその時期がやってきます。その時に両立させることができますか。また、

          家族が認知症かなと思った時【応用編2】

          家族が認知症かなと思った時【応用編1】

          ・自分が介護するしかないと思った場合 始めにお伝えしたいことは、あなた一人で介護を続けることはできません。頑張りすぎて無理を重ねて、あなたの人生を不幸にすることは避けてください。介護の専門家(介護ヘルパー)と介護の経験者(介護家族会)、どちらも身内ではなく他人を探しましょう。他人だから冷静に対応し助言してもらえます。概ね兄弟や親せきは押しつけたりプレッシャーを与えたりするだけです。「あなたしかいないから」なんて言われても「うるせい、黙っとけ」と心の中で呟いて、笑顔を返してお

          家族が認知症かなと思った時【応用編1】

          家族が認知症かなと思った時【基礎知識】

          ・どこに受診すればいいのか: まずはかかりつけの診療所へ。なければ「物忘れ外来、精神科、神経内科、老年科」などの診療科に同伴し受診に付き添いましょう。そこで家族が感じている違和感を医師に率直に伝えてください。本人の様子を箇条書きにしたものを用意して手渡すと、更にいいです。忙しい医師に後から文章をまとめてもらうよりも、あなたが詳細に書き記した手紙があれば、医師も手間が省けて喜ぶでしょう。 ・行政窓口はどこにいけばいいのか: 地域包括支援センター(あなたではなく家族の)です

          家族が認知症かなと思った時【基礎知識】

          認知症の人との「関わり方の組み直し」

          認知症の問題は大きく分けて二つあります。ひとつは自分自身が認知症になる恐怖。もうひとつは認知症の人とどうかかわるかの悩みです。認知症とは加齢に伴って誰でも発症する症状ですので、逃れることはできません。前者の恐怖は中高年に共通した思いでしょう。「今はまだ元気だが、不安を感じ始めてきた」という方は自分だけの課題(予防など)として向き合えばいいのですが、後者の不安は全世代に共通する社会問題です。 社会問題と言っても、徘徊して行方不明になるとか、事故にあうといったことにとどまりませ

          認知症の人との「関わり方の組み直し」

          母親の認知症発症から13年、国内最大の支援組織の支部代表を務めた私が伝えたいこと

          まず、私は何者なのか。 2011年の冬、遠方で一人暮らしする母親に認知症の初期症状が現れました。さいわい同じ市内に嫁いだ姉のおかげで日常のサポートは任せることができましたが、私が何もしないわけにはいかない。そこで、認知症について徹底的に勉強を始めました。 兵庫医科大学のN教授に教えを乞い、論文や専門書を読みあさり、徹底的に勉強しました。医学面で得た知識をまとめて、大阪とその周辺で無料の認知症講演会を開催し続けましたが、ある日の講演の参加者から「私の夫が認知症になってしまった

          母親の認知症発症から13年、国内最大の支援組織の支部代表を務めた私が伝えたいこと