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家族が認知症かなと思った時【応用編4】

・あなたが独身の場合・母親の場合・家族が認知症を認めたがらない場合

ひとり娘のNさんは両親と暮らしていました。90歳の母親が認知症と診断された頃に初めて相談に来られました。Nさんは83歳の父親と二人で母親を介護していたが、父親は自分の妻の認知症を認めたがらず、デイサービス利用も嫌がった。半年も経つと母の周辺症状は進行し、同じことを聞き返す頻度が増え、興奮気味になる母親に不安になったNさんは父親を説得しデイサービス利用を始めた。

Nさんは将来は母親を施設に入れるのが良いと考えているが、父親は自宅で面倒をみたいと言い、意見の相違がNさんを悩ませていた。今後の方針を考えるために、父親とふたりで医師に相談にいった際に「余生も長くないから喧嘩しながらでも一緒にいたい」と父親が医師の前で話した。医師は「父親の意思を尊重するしかないのではないか」と言った。

そんな父親だったが、母と口喧嘩になった時に、母から手近にあったタオルを投げつけられた。それに驚いた父親は「施設入所も考える必要があるかもしれない」と言った。それでも母親が穏やかな時には「やはり施設には入れたくない」と呟いているらしい。

父親が母親のデイサービス利用に気乗りがせず、デイサービス利用を週2回までにとどめている。Nさんはもっと介護サービスを利用してほしい思っているが、父親の同意が得られない、その結果一日中母親と向き合う日が多くなり、精神的に参っていた。そこで主治医やケアマネと相談して、Nさんは別居を決意した。自宅近くの良い物件を見つけたが躊躇して即決しなかったため契約できず、ショックのあまり1週間寝込んでしまった。そんな気持ちを友人に話してみると「認知症のお母さんを置いて何故別居するの?」と責められた。介護をしていない友人には自分の辛さを理解してもらえないことを知り、再び落ち込んだ。

母親は昔からおしゃべりだったが今では更にひどくなり、最近は黙っている時がない。さらに、夜中に探し物を始めて騒いだりするので、父親も自分も心身ともに疲れてしまい、とうとう父親が年末に心筋梗塞で倒れ、ダブル介護状態になった。その結果Nさんもストレスでダウンしてしまい、それをきっかけに自宅近くでひとり暮らしを始めた。それでも毎日自宅に様子を見に行き、父からの電話で介護の愚痴を聞いて両親を見守っている。昼食はNさんが用意し、夕食はワタミの宅食を利用。父親の通院の帰りが遅いときは、母親をショートステイに預けている。

Nさんの最初の相談から1年8か月が過ぎた。父親にも介護が必要になって来た時が母親の施設入所を考えるタイミングだろう。それもそう遠くないことのようだ。

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