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家族が認知症かなと思った時【応用編5】

・都会暮らしの場合・あなたの兄弟姉妹が非協力的な場合・親が一人暮らしの場合・あなたが独身の場合・母親の場合

大阪市内でひとり暮らしをしているSさん。同じく一人暮らしをする母親が70歳の時に認知症症状を見せたことに気付きました。6年後更に急変した母親を見て、Sさんは母親の近くに引っ越し半同居を決意した。しかし、遠方に住む兄は協力してくれない上に指示だけはする。兄嫁は母親とは仲良くない。それもあってSさんは体調を崩したが、趣味のコーラスや社交ダンスには通う母親の社交的な性格のおかげで、二人の半同居生活はなんとか維持できるようになった。それでも自身の持病と母親の介護でSさんはクタクタになっていた。

母親は日に何度もSさんに電話をかけてきて、同じことを尋ねたり、見当たらないものを「あんたが取ったのか」と怒るなど、Sさんは周辺症状に悩まされてきた。ある日母の家の高価なものや家電製品が無くなっていることに気づき、買取詐欺に逢ったことがわかった。母には忠告していたが、止めることができなかったことに頭を抱えたらしい。

その後、叔母の葬儀に一緒に出掛けた。通夜の夜と本葬に二人で参列したが、いつもなら遠慮なく大きな声で喋り続ける母親が、神妙にしていてしっかりして見えた。ところが会場を出てタクシーに乗るといつも通りのおしゃべりが止まらない。認知症の母親が葬儀の場の雰囲気に合わせることができたことに驚いた。一方で、その日参列した兄夫婦から初めて「今までありがとう」と感謝とねぎらいの言葉を言われたことが嬉しかったが「これからも頼む」とも付け加えられて、なんで私だけ介護せなあかんねんと思った。

母親はデイサービスに通い、Sさんとも二人で出かける日々を過ごしていたが、新型コロナが流行する直前の年末、申し込んでいた特別養護老人ホームから突然入居可能と連絡があった。正月明けから入居できますと言われて、迷ったが思い切って決断した。母親は嫌がることもなく入居し、今は良かったと言う。当初は外出も一緒にしていたが、新型コロナが流行してからはオンライン面会だけになってしまった。それでも母親は施設で自分にできることをさせてもらいながら、落ち着いた生活を送れている。

母親の施設入所から1年経ち母の自宅を処分した。母から頻繁に「家はどうしたのか」と電話で聞かれ、その都度片づけたことを返答しているが、そのしつこさにイライラしてしまう。しかし以前医師から、母親が入所したら言葉を話せなくなると言われたことがあった。今はまだ喋られるのだから、そのことを喜びたい。刺激の少ない施設の生活では、一番気がかりなことを言葉にするのだろう、と思えるようになった。

今の施設でも、母が盗み食いを繰り返して太りすぎたりしたなど、施設への不信感を持ったことはあった。しかし、母は食事も入浴も面倒見てもらえ、暮らしが守られていることに改めて感謝している。

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