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家族が認知症かなと思った時【応用編2】

・親と別居している場合・呼び寄せて同居しようと思った場合

老齢の親が骨折などで、片方が入院すると、残されたひとりの日常生活に支障が出ることがあります。子どもとすれば放って置けない。ましてやひとり住まいの親が認知症に診断されたりすると、同居する必要があるかもと考えてしまいます。しかし、いざ同居してしまうと引き返せない事態を招く恐れがあります。
あなたの配偶者にも老親がいるはずで、今は介護の心配がなくても、いずれその時期がやってきます。その時に両立させることができますか。また、老いて認知症になった親にも親しい友人がいるはずです。ひとり暮らしであればご近所の人々のお世話になっているはずです。そんな有為な人間関係を失ってしまうと、交流が無くなることから認知症は一気に進行してしまいます。もしもあなたが、昼間も親と一緒に過ごすことができて、生活に困らないのならまだしも、平日は出勤して、他の家族も留守になり、老親が一人ぼっちで過ごすのだとすれば、これは最悪の選択です。あなたもあなたの家族も新しい同居人に気を使い、日常的に昼も夜も不安と不穏でイライラすることになるでしょう。
やはり別居の状態で老親の自立を目指すことです。自立とは一人で何でもできることではなく、たくさんの人に手伝ってもらって生きることです。ご近所やお友達、親戚、地域包括支援センター、介護ヘルパーの人々の力を借りて安全な生活維持を目指しましょう。
その時に、さまざまな判断を求められ、認知症の親の代わりに決断することが急に増えます。この場合も、認知症の親も一緒に同席で合意形成する努力をしてみましょう。地域包括支援センターの職員やケアマネも交えて、可能ならご近所さんも巻き込んで、老親の自己決定に関わってもらうのです。そうしないと老親はあなただけに依存する状態が出来上がってしまいます。その結果あなただけが苦しくなってしまいます。老人を支えるのは子どもだけではありません。それは誰にもできない無理な事なのです。

・夫婦二人暮らしの場合・田舎暮らしの場合・母親の場合・医者嫌い薬嫌いの場合

いわゆる「老々介護」状態になったとき、子どもから見ると危なっかしくて耐え難い。親戚や周りからは「子どもなら何とかしてやれ」と言われるでしょう。ふたりともが持病や不自由を抱えていることは珍しくはなく、服薬も通院も容易ではない。食事はできているのか、年寄りをだまして金品を巻き上げる悪党のカモや餌食になっていないか。
ある男性介護者Hさんがこのケースでした。故郷で暮らす90歳父親が、認知症と診断された83歳の母を介護している。母は要介護4、過去に2度脳梗塞になり言語障害が残っている。一昨年に腰の骨を折り手術、退院後に再び骨折、5時間の手術を受けたが、そのことも覚えていない。病院で療養中も少し調子が良くなると退院したがり、父親もそれを許してしまう。自宅に戻るが排せつや段差の昇降に時間がかかる。脳梗塞の再発防止と骨を強化する服薬など、医師に命じられた薬も嫌がって飲まず、コルセットの着用もやめてしまい、父親も無理強いはしない。週に1度のデイサービスも止めてしまい、訪問看護も数回で断ってしまった。Hさんは両親の生活維持には無理があると思い、同居を提案したが、父親からは却下された。
Hさんの相談を受けて介護経験者はそれぞれに考えを述べたのだが、結局は両親の好きにさせるしかないというアドバイスで終えた。
しばらく経って再び来られたHさんからは「口を出さずに静観していると、両親の暮らしも落ち着いてきたし、自分もイライラしなくなった」と。
その後来られたHさんは、母親が訪問業者から高額な指輪を安値で買い叩かれる詐欺にあったこと、お金の管理に不安を感じ、両親の資産を把握しておきたいが、なかなか聞き出すことができない、と困っていた。
数か月後、父親が入院したことから、いよいよ自宅生活を諦めて施設入所を考えなくてはならないと話していた。Hさんの住まいから遠くない大阪の施設を探していると言う。
最初の相談から1年半が経過してたどり着いた施設入所検討の段階です。介護の悩みは百人百様、直面した事態に振り回されないためにも、複数の介護経験者の話を参考にすることが大切です。

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