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家族が認知症かなと思った時【応用編1】

・自分が介護するしかないと思った場合

始めにお伝えしたいことは、あなた一人で介護を続けることはできません。頑張りすぎて無理を重ねて、あなたの人生を不幸にすることは避けてください。介護の専門家(介護ヘルパー)と介護の経験者(介護家族会)、どちらも身内ではなく他人を探しましょう。他人だから冷静に対応し助言してもらえます。概ね兄弟や親せきは押しつけたりプレッシャーを与えたりするだけです。「あなたしかいないから」なんて言われても「うるせい、黙っとけ」と心の中で呟いて、笑顔を返しておきましょう。
親が「誰の世話にもなりたくない」「他人に迷惑をかけたくない」と言っていたから、子どもの私が面倒みるしかない、そう考える方は驚くほどたくさんおられます。しかし考えてください。介護経験のないあなたがこれから勉強してプロの介護ヘルパー並みに対応できると思っていたら、それは無謀です。
あなたの親は、あなたが介護するために仕事を辞めて、収入が減り、不幸になっていくことを望んでいますか。そんな親はいません。
誰の世話にもならずに、他人に迷惑かけずに生きてきたと思っているなら、それは傲慢と言っていい。無人島でひとりで生きているわけではないのです。誰もがたくさんの他人の世話になって、迷惑をまき散らしながら生きているのです。あまりに多くの人に依存しているから、自分は自立した大人だと勘違いしてしまう。自立とは数えきれないほどたくさんの他人の力を借りて生きることです。逆に、身近な親族だけに依存している状態が続くと、互いに煮詰まり、息苦しくなってしまいます。そこからDVが生まれ、介護殺人といった不幸な事件につながってくるのです。大切なのは、他人に関わってもらうこと。多ければ多いほど、あなたもあなたの親も救われます。

・親と同居している場合

数十年前、親の庇護のもとで成長し、大人になり独立した生計を立てるようになり、やがて両親は衰えて立場が逆転し始める。誰もが経験することです。経済力も判断力も備えた大人だった両親が、頼りなく思えてくると「私が面倒見なきゃ」「昔の恩を返す番だ」と考えがちです。しかし、頼りなくなっても自己決定権を持った大人なのです。一見無駄で非効率な判断や振る舞いをしていても、それは老年になった人の宿命なのです。時代遅れの肉体を曇った脳で操縦するしかない、あなたの未来の姿です。きっとあなただって、数十年先には同じような思いで、ポンコツな自分の肉体の操縦かんを握り、ため息をつくはずです。だから、危険は回避するとしても、同居している老親の失敗は見て見ぬ振りし、愚痴は聞き流しておきましょう。偉そうな忠告もあなたから言わぬことです。
最後に知っておくべき重要な事があります。同居していると生活援助の訪問介護サービスの利用が概ねできません。念頭においてください。

・親と同居している場合の訪問介護サービス

元気な同居家族がいる場合の生活援助の利用は、ケアマネがかなり厳しく検討し、それでも必要だと認められた場合だけ可能です。例えば、
家族が昼間は仕事のために外出している場合の、昼食調理や配膳、洗い物。
失禁が多く、トイレが汚れていて滑る危険性がある場合のトイレ掃除と、その都度の洗濯。
日中独居(介護が必要なのに日中は家族が全員外出していて、実質的には一人暮らしになっている高齢者)の場合の、ポータブルトイレの掃除。
このような理由であれば訪問介護サービスを利用することが可能ですが、それ以外の買い物や掃除、洗濯などは、家族が自分の分を行うときに一緒に行えば良いという解釈をされます。
注意すべきは、生活援助を取り入れるケアプランを立てても、あとになって市町村から介護保険を利用できないと言われては困ることになるので、事前に確認する必要があります。ただし「一律機械的にサービスに対する保険給付の支給の可否について決定することがないよう」「介護疲れが著しくて共倒れの危険性がある場合」は利用できます。という文言が平成21年に厚生労働省から全国の都道府県向けに出された通達に記されています。ですので、介護者であるあなたの困っている状況をケアマネに詳細に伝えることが大切です。

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