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声劇レビュー

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拝聴した声劇をレビューしたものをまとめています。
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2020年8月の記事一覧

20200816_メリーベルベット レビュー

20200816_メリーベルベット レビュー

(全敬称略)
こたつ作

総論瞬間的な雰囲気のシフトを
二人とも全く同じタイミングとペースで
きれいに行っていると思いました。
雰囲気が変わる瞬間に
それぞれの役者間でタイムラグがないんですよ。

メリーが落とした瞬間ナタリアがそこのテンションに
スッと合わせて、逆もまた然りで。
この二人のタイマン劇、受けの技術が
めちゃくちゃ高いと思いました。

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2020_0812 セルリアンブルー・エアー レビュー

2020_0812 セルリアンブルー・エアーレビュー
(全敬称略)
揚巻 作

総評二人のお芝居の解釈がとても近く
距離というテーマをしっかりと表現できた
佳い上演だったと思いました。

先手後手・仕手受手の区別はちゃんとされてますが
その上で、お二人のフィーリングが似ています。
この台本においてとても重要な点だと思いました。

女1と女2の距離感がありすぎると
このお話の空気感が出ないので
実は

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2020_0810声劇台本based on 落語より『真田小僧』レビュー

2020_0810声劇台本based on 落語より『真田小僧』レビュー

(全敬称略)
原作;古典落語『真田小僧』
台本化:くらしあんしん

総評小気味よい調子(リズムではない)と
ちょいと口先が曲がったような言い回し。

トントンと積み上がっていくこの
落語の雰囲気っていいですよねぇ。

本来は一人の噺家さんが
二役で上演するものなのですが
このお二人の調子は落語らしく
立て板に水そのものでし

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2020_0809劇団摂氏零度第5回本公演『痴人の愛』レビュー

2020_0809劇団摂氏零度第5回本公演『痴人の愛』レビュー

(全敬称略)
羽白深夜子 作

総評眩しいくらいの若さの余白と
いつまでも響く切ない余韻が
なんとも言えない掌編でした。

構造的なテーマとしては
観客に、短時間の上演で
どれだけ鮮烈に強い印象を焼きつけられるのか
というところにあるのかなとさえ感じました。

この短さ、潔さが青春の儚さを
いっそう端的に強調していると感じました。

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2020_0808 tRisEleレビュー

2020_0808 tRisEleレビュー
(全敬称略)

揚巻 作

総評極めてドラマティックなトリスケルだったように感じます。

私はこの台本のいいところを
三者三様に全力で感情をぶつけられる
ところにあると思うのですけども

このトリオはそれぞれが
異なる属性を発揮しながら
特徴を際立たせてお芝居をしていました。

全ての登場人物に濃厚に特徴が出ているんですね。

トリスケルにありがちな

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2020_0807 パラノーマンズブギー外伝『帽子を深くかぶると』レビュー

2020_0807 パラノーマンズブギー外伝
『帽子を深くかぶると』レビュー

(全敬称略)
ススキドミノ 作

総評今までのパラブギとはまた違う雰囲気の
外伝にふさわしい作品だったと思います。

岩政悟と佐野の直球同士のぶつかり合いに
母として徹する幸子、密に入りすぎない酒井と
各キャラクターが外伝という作品の属性を
逸脱しすぎていない、連続シリーズの中の
一つの劇としてちゃんと一線引かれた上演

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2020_0806 tRiskEleレビュー

2020_0806 tRiskEleレビュー

(全敬称略)
揚巻 作

総評三者三様に激情をぶつけ合うトリスケルもあれば
組み合わせと連携の妙を味わうトリスケルもあります。
トリスケルは精神と時の部屋です。

今回のトリスケルは非常に技巧的でした。
ご本人たちが意識したかどうかはさておき
直球の球速や勢いだけを追うのではなく
少しテンポを落としても響く演技を選んでいたように思いました。

トリス

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2020_0731 斯くして王は供物を喰ったレビュー

2020_0731 斯くして王は供物を喰ったレビュー

(全敬称略)
羽白深夜子 作

総評総じて、各役者たちが稽古の中で
『自身が咀嚼したキャラクターをしっかり演じた』
という感想を抱きました。

構成や連携の妙というよりも
『各々が斯く捉えた』という像を
舞台の上で踊らせるような上演でした。

ある意味では、
ワンオフで、かつメンツを固定している
摂氏零度の上演とはまた違う
化学反応が起こると

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2020_0806 幸せとお願いレビュー

(全敬称略)

2020_0806 幸せとお願いレビュー
みたに作

総論それぞれの役者がそれぞれの役を
非常に大切にして丁寧に演じた上演だと思いました。

例えば、モノローグ一つに比較しても
ブライトが語る世界観とエイミーが語る世界観は
しっかりと違うんですね。
これはそれぞれの役者がちゃんとして
その役から見た世界観を語ってるからこそ
起こる素晴らしい現象だと思います。

エイミー:南 可奈に

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2020_0801 スクリーンに一輪レビュー

2020_0801 スクリーンに一輪レビュー

(全敬称略)
羽白深夜子 作

総論開幕前のアナウンスという手段を使われました。
なるほど、こういうやり方も良いですね。
ムードたっぷりにストリングとテノールを鳴らしながら
上品な案内が、私が今観劇の席にいることを
優しく伝えてくれます。

このキャストでのスクリーンに一輪は
幻想的な雰囲気を終始湛えたまま
役者それぞれの特性とキャラクターを活かして

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2020_0607 劇団摂氏零度第二回本公演 スクリーンに一輪〜夜〜レビュー

(全敬称略)

2020_0607
劇団摂氏零度第二回本公演
スクリーンに一輪〜夜〜 レビュー
作 羽白深夜子

総論方法論になってしまうんですが
まず、出囃子の使い方が巧妙です。
開演ブザー前に隠し球のようなフックで
煮えてきた観客の意識を一回はたきます。

この台本そのものは尺もさほど長くなく
登場キャラクターも三人のみ。

限られたリソースの中で
どれだけリアリティを積み重ねて
首を締めてく

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7/28 パラノーマンズ・ブギーEP6「大馬鹿者」レビュー

(全敬称略)

7/28 パラノーマンズ・ブギーEP6「大馬鹿者」レビュー
ススキドミノ作

総評これまでに出演したキャラクターが
時系列を行き来して様々な変化を湛えて
舞台に現れるエピソード6。
これが長編シリーズ物の醍醐味であり、
また同時に、難しいところだとも思いました。

大乱闘のダイナミズムというよりは
これまでに飛び散った様々な破片を
拾い集めていくような、
どことなく静けさのある一幕

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