2020_0808 tRisEleレビュー

2020_0808 tRisEleレビュー
(全敬称略)

揚巻 作

総評

極めてドラマティックなトリスケルだったように感じます。

私はこの台本のいいところを
三者三様に全力で感情をぶつけられる
ところにあると思うのですけども

このトリオはそれぞれが
異なる属性を発揮しながら
特徴を際立たせてお芝居をしていました。

全ての登場人物に濃厚に特徴が出ているんですね。

トリスケルにありがちな
全員が最高速出しすぎて少しゴチャゴチャ
が舞台に発生してないのが素晴らしいです。

トリス:えみごんに関して

台詞の端々にある含みに
とてつもないリアリティを感じました。

臨場感を生み出していたのは
単なる台詞の技巧だけでなく
体全体を使った迫り出すような息遣いにあると思います。

存在感と演技の陰影が半端じゃなく濃いんですね。

静かな狂気を漂わせる演技は
勢いに飲まれることもなく
着々と劇全体を蝕んでいきました。

マイナスイオン発生器ならぬ
ダークマター発生器のような
圧倒的な存在感でした。

ゲイル:中村宏平に関して

発声がとてもしっかりしていました。
この低さと太さで鳴らしても
籠もらずに倍音がしっかり出るのは
相当しっかりと胸と胴で鳴らさないと
不可能なのではないでしょうか。

発音も明瞭で、かつリズムもしっかりしていて
音の芝居にドーンと土台を立ててくれています。

この『聞きやすさ』と言うのは
めちゃくちゃ大事な要素だと思うんですね。

どう演じるか、どう表現するかを意識しすぎて
リスナーフレンドリーから離れてしまうと
観客はどうしてもお芝居に没入できなくなります。

このゲイルは安定感たっぷりに
欲望と野心あふれる科学者としての像を
非常にわかりやすく振る舞っているので
観客の集中力を狭小させ
どんどんと劇に引き込んでくれていました。

エリー:御縁祇緒に関して

冒頭から中盤まではチョロチョロと
あちこちを小さく走る小鼠のようなリズムで
お芝居のムードを和やかに保っていたが
一転、感情を露呈する場面では引っ掻くような
演技をしていました。
甲高いのではなく引き裂く音の使い方をしています。

高音域を出すための縦じゃなくて
横方向に音を伸ばすような感じに叫び方は
結構珍しいですね。

このエリーはキンキンしてるのではなくザクザクしていて
発声フォームを意図的に崩しながら
遮二無二ヒステリックに迫る演技に
鉤爪のような鋭さが出ています。

トリスとゲイルの強いトルクの中で
エリー役にはどうしても軽めの演技に
向きやすい傾向があると思うのですが
このエリーはガンガン攻めてました。

音響:Studio KEMUЯIに関して

ケムリさんの音響はいつ聴いても安定してますね。
裏方に徹する職業音響的なところがあります。
いい裏方にコメントを残すのもあれなので一言。
いつもありがとうございます!

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