2020_0806 幸せとお願いレビュー

(全敬称略)

2020_0806 幸せとお願いレビュー
みたに作

総論

それぞれの役者がそれぞれの役を
非常に大切にして丁寧に演じた上演だと思いました。

例えば、モノローグ一つに比較しても
ブライトが語る世界観とエイミーが語る世界観は
しっかりと違うんですね。
これはそれぞれの役者がちゃんとして
その役から見た世界観を語ってるからこそ
起こる素晴らしい現象だと思います。

エイミー:南 可奈に関して

作為的に聞こえない少女の演技というのは
実に難しいと思います。

彼女はちゃんと一台詞一台詞言葉を弾ませて
ブライトの湛える空気を読まない
幼さ故の空気感を出しています。

この『少女の範疇』の中から
最後まで逸脱しないのがすごいなと思いました。

感情のピークで役者そのものが出てきて
役が破綻してしまうことって
少なからずあると思うんですが
その辺のオーバーヒートをちゃんと回避してました。

ブライト:それいゆ(摂氏零度)に関して

くすぶったかび臭い中年の匂いを
ちゃんと描いていると思います。

カッコよくない演技をカッコよくないまま
しっかり最後までやり切るって相応の自力と

変な色気を抑制する胆力がいると思うんです。

冒頭では渋みがかった三十代であっても
だんだんとそのくすみ感や濁り感が薄れて
あれ、なんかちょっと違う、ってなりやすいんですが
この方は最初から最後まで一つの役を通すのが
上手で、端的にいうと演技に整合性があるなと思いました。

アッシュ:くまた(摂氏零度)に関して

全体的に言葉の奥に息を押し込めた芝居をしていました。
この人の嗚咽がとても好きなんですが
今回は敢えてコンダクターとして
表現に抑制をかけてる感じがありました。

エイミーとブライトという音像的に対極的な二人の
中間点として時に低く、時に高く3人の関係性を
繋ぐという役割をしっかり担っていました。

この上演ではバンドマスター的な振る舞いをされてましたが
この方が比較的フラットに抑えてくれたおかげで
エイミーはピークアウトせず、
ブライトもクライマックスで遠慮なく踏み込めたのかなと思います。


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