2020_0731 斯くして王は供物を喰ったレビュー

2020_0731 斯くして王は供物を喰ったレビュー

(全敬称略)
羽白深夜子 作

総評

総じて、各役者たちが稽古の中で
『自身が咀嚼したキャラクターをしっかり演じた』
という感想を抱きました。

構成や連携の妙というよりも
『各々が斯く捉えた』という像を
舞台の上で踊らせるような上演でした。

ある意味では、
ワンオフで、かつメンツを固定している
摂氏零度の上演とはまた違う
化学反応が起こると思いました。

間鳥 蒼士役:ガロに関して

2days公演のスクリーンに一輪と比較して
間鳥蒼士というキャラクターを
複数の方向から表現しようという

試みが感じ取れます。

今回は劇を進めるテラーの役目もあるため
この判断は好ましいと思いました。

役者さんが役に沿っていく上で
蒼士というキャラクターは
幅を大きく持たせづらい設定があり
非常にデザインを作りづらいと思います。

小さい幅の中でどうやって表情をつけていくか
苦心されただろうなと推察します。

高崎 琴子役:月宮 はるに関して

2days公演のスクリーンに一輪と比較して
病的なまでの透明感を減らしています。

まだ毒を飲む前の、高崎琴子としての
人間性と女性らしさを嫌味なく演じていると思いました。

この段階の琴子には女優としての顔とともに
まだ情動の動きのようなものがちゃんとあって、
その辺をしっかり使い分けられてると感じます。

外川 雪子役:ヒスイに関して

冒頭、ちゃんと煙が見えました。
窒息に向かう息苦しさをしっかり表しています。

この方の演技は役ごとの説得力、もとい
キャラクター設定を活かすためのリアリティを
演技に吹き込むのが極めて上手いと思います。

外川雪子ってこういう感じの女性だよね、
というのが演技から伝わってきます。

森永 千紗役:机の上の地球儀に関して

自身のカラーを出しすぎずに
良い意味でややありきたりな声の作りを
選んだように思います。

多人数劇における音の位置取りにおいて、
しっかりと出すべきところと引くべきところを
各々の判断で決めるのでしょうが

今回は敢えて表現に尖った部分を出さずに
芝居そのものを直球で出していくことを
選んだように感じました。

心中慮ると一番辛い役回りだと思うんですが
だからこそプレーンな味付けで
演じることに注力した結果
非常に胸にくるお芝居となりました。

白来 冬哉役:ゆーたこに関して

2days公演のスクリーンに一輪と比較して
曖昧さ、中途半端さよりも
他のキャラクターとの距離の取り方が強く印象に残りました。
白来が生来抱えているような疎外感、孤独感を
演技だけでなくトーンや間の中に置いているようです。

直球すぎない、表現というよりは所作に近い
距離感や音質を使った間接的な演技
って
すごい好きなんですよ。

別件で拝聴した際は、こんなにテクニカルなことを
される方とは思わなかったです。お見事でした。

榎本 成司役:るふに関して

私、この方が演じる特定の役ばかりを聞いていたせいで
勝手な先入観を持っていたようです。

明るく弾むような力強く調子よい節回しが
こんなにしっくりくるとは思ってもいませんでした。

榎本がこの位置どりをしてくれたことで
女性3人のバランスと間鳥との音の反発を
柔和にしてくれているように思います。

集中力やテンションが沈みやすくなるタイミングで
カンフル剤のようにこの榎本が出てくると
劇全体が一度締まります。

他の役者の温度から敢えてちょっと抜けて
少し高めの帯に居続けるって
勇気がいることだと思うんですよ。
それをやり切ったのは素晴らしいです。
機能的に劇を支えてたと思います。

音響【 Studio】KEMUЯI

今回もガッチリと上演を固めた素晴らしい音響でした。
いい仕事してます。本当に、言うことがないです。


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