2020_0806 tRiskEleレビュー

2020_0806 tRiskEleレビュー

(全敬称略)
揚巻 作

総評

三者三様に激情をぶつけ合うトリスケルもあれば
組み合わせと連携の妙を味わうトリスケルもあります。
トリスケルは精神と時の部屋です。

今回のトリスケルは非常に技巧的でした。
ご本人たちが意識したかどうかはさておき
直球の球速や勢いだけを追うのではなく
少しテンポを落としても響く演技を選んでいたように思いました。

トリス:ただゆずるに関して

たださんトリスの特徴はどこにあるかと言うと
一聴、ツンツンしているようで
奥に大きな苦味と甘みがあるところだと思います。

副作用の強い媚薬を糖衣で包み
飴を舐め溶かすような口の使い方をしますね。

「ずるい人……」

エリーを詰めるときの演技なんて
ハニートラップにしか聞こえないんですよね。
本当はこっちもイケるんじゃないのアンタ……
ていうくらいの。

逆にゲイルに触れているときの演技は
少し苦味が強く出て
色気というよりも苦悩が立っています。

そういう表裏陰影(ヒョウリインエイ)を
意識した芝居をしてました。

「さようならゲイル。愛してるわ」
これがこの劇で最も冷めたセリフでした。

ゲイル:みやけんに関して

ほの若く、知的で、神経質と言う
ピンポイントなキャラクターを選んできたと思います。

セリフのリズムを定点的に取ることで
上記三つのデザインを客席に訴えかけてきています。

誤解ないように追記しておきますが
一本調子という意味ではないですよ。

この方のパーカッシヴな演技が
トリスに対してもエリーに対しても
音高や強弱こそ違えど上手く作用しています。

他の二人の強い台詞の応酬があっても、
このリズムで安心して聞くことができますね。

エリー:雨宮シトリンに関して

ほのかに震えて掠れた声のまくり方が
とても初々しく聞こえます。

トリスケルという台本において
エリーは一番デザインの幅が狭く
オリジナリティを含ませるのが大変だと思うんですが
この方のエリーは設定とちゃんとハマってて
理想的なデザインだと思いました。

トリスに想いを馳せる場面では
想い溢れて幽体離脱のような、
実態の薄さを上手く表現されてました。

意識があるようでない薄い声を
的確に意図的に使えるのはすごいなと思いました。

音響:アルコ(摂氏零度座長)に関して

この劇の音響に
インダストリアルな感じを
ぶつけてくるのがアルコさんらしいです。

これだけドロドロしているからこそ
どこか無機質で金属的な音響が入ることで
3人の激情が際立つと思いました。

ノータイムで音響を切り替えて効果音をぶつけてくるので
3人ともテンション高く劇を走り切れたのではないでしょうか。

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