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傍白、黒衣

あ、さてさて、芝居。あるいは演劇や舞台と言ってもいい。芝居にはセリフは付き物。黙劇があるけど、ここではセリフは付き物ということにしておいてちょうだい。芝居のセリフには以下、三種類に大別できる。

正白
あまり聞き慣れない正白。実は私も最近知った。正白とは会話でのセリフ。

独白
原則、登場人物が舞台上に一人いて、心のうちを吐露するセリフ。ハムレットの「To be, or not to be, that is the question.」が好例。

傍白
舞台上に複数の人物がいて、その中の特定の登場人物が語るセリフ。他の人物には聞えていないが、観客だけには聞こえているという約束事がある。「見て、この人ったら。こんなダサいネクタイして」など観客に語りかけるアレ。いわゆる第四の壁を破ってるアレ。

私ね、傍白には、日本独特の黒衣(くろご・くろこ)と共通点があると思っている。黒衣に関しては日本語を読めている時点で知っていると思うが、いちおう説明しておく。面倒なのでWikipediaを引っ張るけども、

黒衣(くろご)は、歌舞伎や人形浄瑠璃で、観客からは見えないという約束事のもとに舞台上に現われ、後見として役者や人形遣いを助けたり、小道具を役者に渡したり舞台から下げたりする係。また彼らが着用する黒づくめの特殊な衣装のこと。黒具(くろぐ)ともいう。

Wikipediaより抜粋

上記引用のように、黒衣は観客からは見えないという約束事がある。観客どころか舞台上の登場人物からも見えていないという約束事がある。そして傍白にも観客にしか聞こえていないという約束事がある。
この、「他の登場人物に見えていない or 聞こえていない」が、私の言う傍白と黒衣の共通点だ。

しかーし! 実は、私が思う共通点はもう一つある。

黒衣についての約束事は、外国人に通じないのだ。いや、ちっとばかし言い過ぎた。通じることは通じる。が、彼らの目には奇妙に映るらしい。そりゃそうだ、だってそこに黒い服を着た人がいるんだもん。
でもって、傍白は日本人から見たら何だか居心地が悪い。奇妙に見えることもある。第四の壁を破って、登場事物が同意を求めてきたり文句を言ってきたりするんだからね。
テレビドラマ、例えば『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』が第四の壁をぶち破って語りかけるのには違和感はない。まあ、そもそも古畑任三郎が刑事コロンボのパクリなんだけど・・・とにかく、いくらテレビで第四の壁ぶち破ったとは言え、画面という実際の壁があるから違和感はない。
けれど、やはり舞台上での傍白は奇妙だ。これは私だけだろうか? 私だけなんだろうなあ・・・
サーカスや手品でパフォーマーに「ちょっと手伝って」と言われる、あの感じに似ているんだ。

みなさんはどうでしょうかねえ?