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自ら苦しい道を選んでいる。

言わなきゃ分からない、けど言わずとも感じてほしい。

自分のことを心から理解して欲しかった。
既に心も身体も限界だったのかもしれない。

生きることはあまりにも苦しい。

そんな当たり前のことさえ忘れる程に僕は腐っていた。

社会人として働く中で徐々に自分の大切にしていたものが心の奥底に沈殿していくような感覚があった。他人に冷たく命令するような人間が嫌いだったのに、いつからか躊躇いもなく指示できるようになり、自分が楽になるために後輩に仕事を押し付けたりするようになっていた。

はじめは感じていた違和感も表層に現れることも次第になくなり、今の自分が本来の自分ではないということさえもぼんやりとしか捉えることが出来ないまでに感覚は鈍くなっていった。

そんな自分でも何とか継続できていたことがある。それは文字を綴ることだ。文字を書いているというと、周りから「凄いね」と言われることがあるがいったい何が凄いというのだろうか。何も凄くない。書かないと自分が自分で無くなってしまう、自分が死んでしまうから必死で世界に抵抗するために書かなくてはならなかったのだ。

もう何をどう考えているのか、そんなことも分からなくなりつつあった自分にとっては、書いた文章とは自分を理解することのできる手段でもあった。まだ心は死んでいないと思えたから。

僕は自分も含めた全ての人間を信じていない。人は自分の都合により裏切る生き物だと思っていたし、何より信じないことで自分という弱い存在を守りたかった。

信じていないのに、信じられたい、つまりは理解されたいと思っていた。これは誰も自分は人を愛さないのに愛してほしいと言っているようなものだ。本当に自分勝手としか言いようがない。

ただ僕は自己開示をしたくはなかった。自分のことを話すのは付け入る隙を作ることになり、他人に利用されるきっかけとなってしまうからだ。それに弱みを曝け出した上で、自分のことを否定されたらきっと耐えられなかったと思う。

だから小説にして、自分ではない風に隠蔽して自己開示するようにした。あくまでフィクションとしてしまえば、変に傷つかなくて済むし、その上で他人がどう捉えるかを聞き出すことができると思ったからだ。

このやり方は成功した。人によっては、ノンフィクションだと気付いた人もいたかも知れないけれどもそれはそれで良いと思った。きっと僕の小説を読んで実体験だと感じる人はそれなりに僕に対して深い領域にまで辿り着いており、ある程度僕の抱く苦しみに対する理解がある者だと思うから。(あくまで経験した上での傾向の話であり、全てがそうかというとそうではない)

間接的とは言え、他人から少なからず理解されることは嬉しかった。ただ何かを経由して得られる承認では自分の孤独を埋めるにはあまりにも少な過ぎた。もっと人と関わり、理解されたいという心に目覚めた瞬間だった。

それから僕はコミュニティを立ち上げた。よりダイレクトに考えや思いを伝え、多くの人たちに自分のことを理解してもらうために活動を始めた。また理解されると同時に、また同じような苦しみを抱えた人と寄り添いながら日々を過ごしていきたい、優しい世界を作りたいとも思った。

コミュニティにはさまざまな苦しみを抱えている人たちが集まってきた。始めた当時は、沈澱していた自分の心も他者と真剣に向き合っていく中で徐々に呼び起こされていったような気がする。

生きることが苦しいと思うことが増えた。また昔のように周りが気になってしょうがないと思うようになった。他人を傷つけるくらいなら自分を傷つけたほうがマシだと強く思うようになった。そして何より、それらを忘れ、無自覚に人を傷つけ続けていた事実に気付き死にたくなった。

コミュニティに参加する人々、個人個人のことを毎日考えて自分には何が出来るのかを思い続ける中で、僕は自分を表現出来なくなっていった。本来は自分が幸せになるために始めたことなのに、いつのまにか在るべき姿に囚われて、何者でもなくなってしまっていた。いったい僕は何をしているのだろうか、こんなことを繰り返して何が残るというのか。ここに僕の居場所は無かった。

表面張力のような日々を過ごしている。不安定な自分の精神とは裏腹に、コミュニティを求める人の数は留まることを知らない。全てを始めた僕が逃げることは赦されない。常に孤独な戦いだ。本当の意味で頼れる人なんて自分にはいない。

それでも進まなくてはならない、いや進んでいきたいと思う。仮に今自分が死んだとしても、誰の心にも残らない。人に無理を強いてしまえばきっと皆は離れてゆく。そんな今を変えていきたい。もっと心から必要と思われる者に僕が、必要と思われる場所にコミュニティがなるために。

その先でいつの日か楽になりたい。

そんな夢を今日も見ている。

X(旧Twitter): https://twitter.com/ausedik

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