【詩】剥がれる

随所に置かれた
ワンプッシュのアルコールを
手にすり込んだら

べらり
わたしの皮膚は、一枚、剥がれる

あなたの指先が触れた微かな痕跡さえ
剥がれて、やがてごみ箱へ

喫茶店を立ち去るや否や
テーブルに噴射される消毒液
ペーパータオルで拭き取られ
そこで交わした、温かな感情さえ
剥がされ、そしてごみ箱へ

毎日、どこかで
電子的に記憶され続ける
わたしたちの記録が増える一方、
この手の触るところの全て
わたしたちの生きる痕跡は
日々失われようとしている

半天の下 立ちすくむ 

剥がれ剥がれて
玉ねぎの皮のように
一枚ずつ、すべて落ちたら
何という名前のわたしが残るだろう

或いは、その一枚一枚こそが
わたしや、
あなただというのなら

べらり
剥がれ、剥がされた
ごみ箱の中に蓄積する
小宇宙のような塵をかき集めて

昨日のあなたに、逢いたい

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こちらの企画に参加させていただきました。

参加されていたみえる様の詩が素敵だったので、「半天の下 立ちすくむ」という一行をバトンにさせていただきました。(他にもこのバトンでは「宇宙」をテーマに書かれていた方が多かったので、「宇宙」という単語もいれてみました。)

わたしの詩も、使えそうなフレーズがありましたら、ぜひ一行持って行って下さいね。

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