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掌編など

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2019年12月の記事一覧

【短編小説】匂いのない光景

【短編小説】匂いのない光景

墓じまいに来たついでに、祖父母の家があった土地の近くまで車を進めた。
祖父母の家はわたしが学生だったうちに解体が済んでしまったけれど、すでに限界集落に近い山の半ばの村は、住む人のいなくなった木造の古い家をいくつも残している。

歳をとり右足が悪くなった母を助手席から下ろし、二人で少しだけ辺りを歩いた。
アスファルトの舗装のない白いコンクリートの細道を、支えながらゆっくり上る。小道はひび割れて、やが

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