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詩など

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自作の詩,詩のようなことばをまとめています。
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2022年5月の記事一覧

【散文詩】無花果【掌編】

【散文詩】無花果【掌編】

あれはヤツデ? ──いいや、あれは無花果。しばらくすると、美味しい実がなるよ。

その日からわたしは、来る日も来る日も無花果の葉の下で、もたらされる実りを待った。青空はくらくらする。陽炎のような誰かと遊んでさみしいよりも、空を切り取る緑の手と戯れる方が愉しい。
葉をすり抜ける陽射しが肌を焼いて、体育座りの腿の内にまで汗を浮かべさせる。登校日は忘れたことにした。青空はまだくらくらする。よく何年も、そ

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