鈴木アツト

劇作家・演出家

鈴木アツト

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    最近の記事

    タイニイアリス・西村博子先生との思い出

    新宿の小劇場タイニイアリスのオーナー:西村博子先生が、2022年12月14日に亡くなられた。 西村先生との忘れられない思い出は、私が、生涯で一番の失敗作を上演した時のことだ。その作品は、2008年に『枕闇(まくらやみ)』というタイトルで、新宿二丁目のタイニイアリスで上演した。”主人公が、体温を失くしていくにつれて、愛もわからなくなっていき、最後に巨大な蝶になる。”という、よくわからない物語だった。 この時、私は、「よくわからないけど、凄い作品」を創ろうと思っていた。オリジ

      • 『カレル・チャペック~水の足音~』当日パンフレット・ご挨拶

        8年程前にタイに行った時のことだった。バンコクのとあるお寺で、仏像を見た時の“腑に落ちなさ”が、今も心に残っている。「なんか、違う。」   その黄金に輝く仏像は、顔は細長いが、肩はがっしりしていて、何より瞳がしっかり描かれていた。顔はふっくら、肩はなで肩、目は閉じている日本の仏像と、なんか違ったのである。一緒に見に行ったタイ人の友達は、その仏像の美しさに深く感動していた。私は表向きは同調する振りをしたが、心の底では、美しいと思えなかった。私は、自分が無意識の中で、「仏像」へ日

        • 『ジョージ・オーウェル ~沈黙の声~』上演台本 第1場

          『ジョージ・オーウェル ~沈黙の声~』 日時:2022年6月8日(水)~12日(日) 会場:駅前劇場 https://g-inzou.wixsite.com/orwell 作:鈴木アツト 2022年5月24日版 上演台本 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります。 登場人物 〇エリック・アーサー・ブレア(1903年生・男)  筆名ジョージ・オーウェル。小説家。 〇アイリーン・ブレア(1905年生・女)エリックの妻。 〇フレドリック・ウォーバーグ(1898年生・

          • 『カレル・チャペック(仮)』準備稿 その1

            『カレル・チャペック(仮)』 出演者募集中・オーディション情報はこちら。 https://stage.corich.jp/bbs/78611 作:鈴木アツト 2022年3月14日版 準備稿 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります。 登場人物 〇カレル・チャペック(1890年生・男)劇作家、新聞記者。 〇ヨゼフ・チャペック(1887年生・男)カレルの兄。画家、舞台美術家。 〇フランティシェク・ランゲル(1888年生・男)軍医。 ○オルガ・シャインプフルゴヴァ

            「国家と芸術家」シリーズ、最終作は、『カレル・チャペック』

            今日、1月9日は、チェコの作家、カレル・チャペックの誕生日だそうです。それを聞いて、慌てて、この文章を書いています。 現在、劇団印象-indian elephant-では、「国家と芸術家」三部作公演と銘打ち、”第二次世界大戦時に、国家という枠組みに翻弄された作家や画家に注目し、国境を飛び越える“自由”な視点や思想、作品を創り出す芸術家たちが、なぜ国家や国民によって“自由”が縛られるということが生じるのかを描く”シリーズを企画・上演しています。 こちらの記事にあるとおり、

            短編作品『サラのあんこ』

            1.はじめにここに掲載する短編戯曲『サラのあんこ』は、2020年4月に書いた、モノローグ(一人語り)です。2020年4月と言いますと、東京は、新型コロナ感染拡大を防ぐための、”緊急事態宣言下”でした。そんな時に、イギリス在住の俳優のSusan Momoko Hingleyさんから、「世界中の作家を集めて、1分〜10分間のモノローグを書いてもらう企画、に参加しないか?」というお誘いがあり、それで書いた作品です。(企画者は別の方でした。) テーマは「Hope in Isolat

            ゾウの鼻の読書会 設立のお知らせ

            劇団印象-indian elephant-では、2022年から「ゾウの鼻の読書会」を、開催していきます。 読書会とは? 読書会とは、参加者が、本を読んだ感想を、別の参加者に伝える集いです。「ゾウの鼻の読書会」では、課題本を設定し、それを読んできた参加者が、思い思いに感想を語り合う、読書会を行っていきます。 一冊の本を読んで何を感じたのか。それを誰かと語り合うことによって、頭の中にはあったかもしれないけど、自分が認識していなかった、自分の想いや考え方を発見する。そういった集

            若い演劇人のための助成金講座

            この原稿は、とある団体の、「助成金」勉強会の資料として、書いたものです。 0.まえがき助成金とは何だろうか?当たり前すぎで今さら感はあるが、助成金とは「他者からもらうお金」である。この「他者からもらうお金」感が、お年玉のような、降って湧いた幸運を感じさせるのは、私だけだろうか。ジョセイキンという音が、音として、普通の生活では馴染みがないからか、なんか空から降ってくるお金のような気がしてしまう。しかし、それは間違いである。 助成金を考える上でまず、俯瞰して見るためにも、”助

            有料
            100

            『藤田嗣治 ~白い暗闇』準備稿 その2

            『藤田嗣治 ~白い暗闇~』 出演者募集中・オーディション情報はこちら。 http://www.inzou.com/workshop.html 作:鈴木アツト 2021年5月20日版 準備稿 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります。 登場人物 〇藤田嗣治(男):画家。 〇ナタリア(女):娼婦。ポーランド(当時ロシア)からの移民。 〇村中(男):画家。藤田嗣治の後輩。 ≪物語の途中からを紹介します。≫ 第4場 1920年5月 パリ 藤田嗣治のアトリエ。嗣治

            『藤田嗣治 ~白い暗闇』準備稿 その1

            『藤田嗣治 ~白い暗闇~』 出演者募集中・オーディション情報はこちら。 http://www.inzou.com/workshop.html 作:鈴木アツト 2021年5月20日版 準備稿 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります。 登場人物 〇藤田嗣治(男):画家。 〇ナタリア(女):娼婦。ポーランド(当時ロシア)からの移民。 〇村中(男):画家。藤田嗣治の後輩。 ≪物語の途中からを紹介します。≫ 第3場 1917年6月頃。 第2場から三年後。ナタリア

            【求む!】 制作・アシスタントプロデューサーを募集!

            劇団印象-indian elephant-は、この度、「国家と芸術家」三部作公演に向けて、制作及びアシスタントプロデューサーを募集します。下記の評伝劇を創作したいと考えています。 「国家と芸術家」三部作公演とは?古今東西の芸術家の内、エーリヒ・ケストナー、藤田嗣治、ジョージ・オーウェルという、第二次世界大戦時に、国家という枠組みに翻弄された三人に注目し、国境を飛び越える“自由”な視点や思想、作品を創り出す芸術家たちが、なぜ国家や国民によって“自由”が縛られるということが生

            「エーリヒ・ケストナー ~消された名前~」(仮)準備稿 その3

            出演者募集中・オーディション情報はこちら。 http://www.inzou.com/workshop.html 作:鈴木アツト 2020年7月1日版 準備稿 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります。 〇ヴェルナー・ブーレ(男):ケストナーの同級生。後に映画監督。 ヴェルナー・ブーレ役での、応募が少ないため、ヴェルナー役のための、課題台詞を公開致します。 第3場 1933年11月13日・ベルリン (第2場から)四年後。同じケストナーのアパート。 ナチス(国

            イギリスがEU離脱を決めた時に考えたこと。

            2016年6月24日。イギリスが、国民投票によって、EUを離脱することを決まったその日、(投票は23日だが、投票結果が出たのが24日。)私は、ハイドパークの隣にある、ケンジントンガーデンの中で、フォーラムシアターの公演に、パフォーマーとして参加した。まず、公演そのものよりも、EU離脱に対しての、反応を描写しておきたい。 「EU離脱」の決定は、多くのロンドナーにショックを与えている。それは、人によっては、「世界の終わり」かのように表現する人もいて、やや過剰な反応なように、私の

            「エーリヒ・ケストナー ~消された名前~」(仮)準備稿 その2

            「エーリヒ・ケストナー ~消された名前~」(仮) 出演者募集中・オーディション情報はこちら。 http://www.inzou.com/workshop.html 作:鈴木アツト 2020年7月1日版 準備稿 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります。 登場人物 〇エーリヒ・ケストナー(男):大学生であり新聞記者。後に、小説家。 〇ハンス・オットー(男):ケストナーの同級生。俳優。 〇ヴェルナー・ブーレ(男):ケストナーの同級生。後に映画監督。 〇ルイーゼロッ

            「エーリヒ・ケストナー ~消された名前~」(仮)準備稿 その1

            「エーリヒ・ケストナー ~消された名前~」(仮) 出演者募集中・オーディション情報はこちら。 http://www.inzou.com/workshop.html 作:鈴木アツト 2020年7月1日版 準備稿 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります。 登場人物 〇エーリヒ・ケストナー(男):大学生であり新聞記者。後に、小説家。 〇ハンス・オットー(男):ケストナーの同級生。俳優。 〇ヴェルナー・ブーレ(男):ケストナーの同級生。後に映画監督。 〇ルイーゼロッ

            密陽公演芸術祝祭(英語表記は、Miryang Performing Arts Festival)

            ※写真は、2012年、密陽(ミリャン)公演芸術祝祭での、「匂衣(におい)」の舞台写真。 若者が、内向きになっている時代だと言われる。それが本当なのか、単なる偏見なのか、わからない。けれども、国外に飛び出したいと思う人に何かしらの参考になるはずだと思い、密陽(ミリャン)公演芸術祝祭について、簡単に紹介したい。 密陽公演芸術祝祭(英語表記は、Miryang Performing Arts Festival)は、2001年からスタートした演劇祭で、2020年で20回目を迎える。