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視点3_消費行動は「所有から利用」へ


はじめに

この記事は、2018年末に室井淳司が宣伝会議より出版した「全ての企業はサービス業になる」の最終章で、書籍の内容を10の視点にまとめた内容を要約した記事になります。

2023年現在からすると5年前の記事ですが、当時から現在までに起きた変化を追うと、社会や消費の流れがどの方向に向かっているのか解りやすいと思いますので是非ご一読ください。

2023年視点からのコメントは後半に記載しています。


以下書籍本文の要約

顧客がモノにお金を払うことに対する意識が、所有から利用へと変わってきています。この背景には「モノからコトへ」と言われる、コト消費と言われる意識の変化と、もう一つはシェアリング・エコノミーに代表される、スマートフォンの普及により現れた消費行動の変化があります。

書籍より


一般的に「モノからコト」が語られる場合は、カメラや車を購入するというようなモノを購入する消費から、旅行や習い事といったコトを購入する消費へと顧客の消費対象が変わってきているという文脈で使われます。

もちろん、モノが溢れている現代において必要なモノは顧客の手元に既にあり、それ以外に消費対象が移動しているというのは、当然の流れです。しかし、所有から利用へと消費行動が変化する背景にあるモノからコトの本質には、もう少し別の意味があると思っています。

それは、モノはそもそもコトが形になったものであり、故にモノが提供するコトこそ、そのモノが持つ価値の本質であるということです。

例えば車は、それを利用せずに展示しているだけではモノです。しかし大半の人は車を購入することで、車によって得られるコトを購入しています。

家族でキャンプに行くというコトを購入したい人は、そのコトを実現できるミニバンやSUVを購入するかもしれません。夏の気持ちいい風を感じながら爽快な気分になりたい人はオープンカーを買うかもしれません。それらは、ミニバンというモノ、オープンカーというモノを買っているのではなく、それらによって得られる体験(コト)を買っています。

これらは、そのモノが本来、顧客に何を提供しているかという価値の本質を見つめ直すことでもあります。メーカーは、商品をつくっているのではなく、その商品によって消費者が得られるコトをつくっている企業と言えます。

一方で顧客側がそのような視点でモノを見ると、モノから得られるコトを購入するには、モノを買う必要はなく、モノをコトの実現の時間だけ借りることで、コトの実現は達成できます。車はレンタルでも家族との楽しいキャンプの時間は実現できますし、カメラはレンタルでも素敵な写真は撮ることができます。

もう一つの背景として、スマートフォンの普及により、サービスへのアクセシビリティが向上したという理由があります。

スマートフォンの普及前は、まだまだ「利用」に対する障害は多い状態でした。レンタカーはわざわざ近くのお店まで行き、申し込み用紙に記載し、説明を受け、ようやく利用することができます。カメラは借りたくてもそもそも誰が貸してくれるのかさえ分かりません。

しかしシェアリング・エコノミーの台頭により、顧客はスマートフォンにアプリをインストールしてSNSからログインするだけで、サービスプラットフォームを介してモノを見つけ、予約し、受け取るまでを簡単に済ませることができます。

つまり、モノが提供するコトを手に入れるまでにあった沢山の手間をなくすことで、気軽にコトを購入するという消費行動が広がりました。

ひと昔前であれば、モノを借りるということは、モノを購入するお金がない人と周囲から見られていましたが、今は違います。豊かさとは、モノを持つことで自分を物理的に彩ることではなく、コトを経験することで自分の人生の時間を彩るということです。この様な価値観に気づいた世代が、その価値観を実現できる様々なサービスに簡単にアクセスできるということが、消費行動を所有から利用へとシフトさせている要因と言えます。

 企業(特にメーカー)が、個人間取引のシェアリング・プラットフォームサービスと対抗するには、企業も自社でレンタルやリースサービス、サブスクリプションモデル(利用期間に対して対価を支払う方式)を始めるしかありません。

また、モノの開発プロセスにおいて、モノが提供するコトの価値を見つめ直すことで、モノ自体の開発アプローチも変わってくるかもしれません。モノをコトと捉え直し、それらをどう売るか。もはやマーケティングは従来の範疇を超えて、自社サービス自体をどのようにリデザインするかというミッションを担う段階に来ています。

書籍要約ここまで


2023年からみて

この5年であらゆるモノ業界でサブスクサービスが浸透しました。トヨタが始めたKINTOも同様です。トヨタは多くの販売会社を持つ中、自社でサブスクサービスを開始しました。

https://kinto-jp.com/


トヨタのサブスクサービスは、単なる分割支払いではなく、生活シーンに合わせて車両を変更できる等、所有では得られないサービスを受ける事ができます。

様々な業界でサブスクサービスが普及する中、「利用」のサービスも、モノの分割支払いの様な機能的な面だけではなく、利用だからこそ付加できる体験性やサービスの質が生き残るための価値になってきます。

この書籍は全ての視点や考察が視点10に繋がる構成になっています。視点10も是非ご一読ください。


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室井淳司