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視点5_サービスは「マスからパーソナル」へ


はじめに


この記事は、2018年末に室井淳司が宣伝会議より出版した「全ての企業はサービス業になる」の最終章で、書籍の内容を10の視点にまとめた内容を要約した記事になります。

2023年現在からすると5年前の記事ですが、当時から現在までに起きた変化を追うと、社会や消費の流れがどの方向に向かっているのか解りやすいと思いますので是非ご一読ください。

2023年視点からのコメントは後半に記載しています。


以下書籍本文の要約

顧客との関係性が、商品を売って終わりから、売ってから始まる関係へ、利用してもらう関係へと変化します。顧客との関係性を良好に保つためには、顧客との対話が必要になります。企業にとって顧客との対話とは、メールをやり取りするということではなく、顧客からのフィードバックをもとに商品やサービスをその顧客の嗜好に合わせてカスタマイズしていくということです。


 オートメーション化していない企業にとって、顧客の嗜好に合わせて自社の商品やサービスをカスタムしていくのは、非常に骨の折れる活動になります。しかし、オートメーション化している企業はこれから、パーソナライズが顧客から選ばれるブランドになるためのキーワードの一つであることを認識しています。パーソナライズのやり方は、3段階あります。

①    ソフトをカスタマイズする。
②    サービスをパーソナライズする。
③    ハードをパーソナライズする。

①は、顧客が自分で自分好みに仕様を変えていく「カスタマイズ」として既に当たり前になっている概念です。例えばiPhoneは、ハード自体のデザインはカラーバリエーションの2〜3種類しかありません。

しかし、どのような待ち受け画面にするか、どのようなアプリをインストールするかによって顧客の数ほどカスタマイズされていきます。顧客は、ソフトのカスタマイズによって、自分だけのiPhoneをつくり出し、そこに愛着を感じています。


②は、IoT、ビッグデータ、AIの時代において、サービスのパーソナライズレベルが、企業やブランドの優位性を決定付ける可能性もあり得る概念です。

例えば3章で見てきたZOZOが提供するサービス「おまかせ定期便」(顧客好みにコーディネートされた洋服を1〜3ヶ月毎に配送し、顧客は気に入った商品だけを購入して残りは返品するサービス)は、利用開始時にウェブ上でアンケートに答えるだけで自分好みにパーソナライズされたサービスを受け取ることができます。このようなサービスは、データが蓄積し、AIの進歩に伴い自動化されていくことになります。

例えばAmazonは、ホームスピーカーAmazon Echoに、「Echo Look」というカメラが付いたラインナップをアメリカで追加しました。顧客はこのカメラを利用して自分のコーディネートをデータ上に保管し、日々チェックできるようになり、それらコーディネートに対して第三者のアドバイスを受けられるようになります。

これらのサービスもいずれAIによりオートメーション化され、顧客の好みにコーディネートされた洋服を効率良く販売していくサービスへと進化することが予測できます。


③は、データとファブリケーション(データをもとにした創造物の制作)の融合で実現されていく概念です。例えば同じくZOZOはゾゾスーツを利用して、オーダーメイドの洋服事業を開始すると発表しました。これは顧客の身体寸法に、商品のサイズを合わせていくサービスです。

従来のオーダーメイドの事業は、顧客一人ひとりの身体寸法の把握と対応がアナログで行われていたため、対応できるキャパシティに上限がありました。それが、デジタルデータで一斉に管理され、ファブリケーションと繋がることで、顧客一人ひとりにジャストフィットした商品を簡単に生産できるようになります。

さらにそれらが3Dプリンター等に接続することで、生産の場所の制約からも解放されます。一家に一台3Dプリンターが普及する頃には、自宅のリビングで服ができたり、家具ができたりする時代が来るかもしれません。

 このように、自分好みに仕様が特注された商品を購入することが当たり前になる時代に、同じものを大量に生産、販売する商品やサービスはコモディティとして生き残る道を探ることになります。企業は、自社の商品のパーソナライゼーションの可能性について議論し、テストを重ねていく段階にきています。

書籍要約ここまで


2023年から見て


「パーソナライゼーション」は当時、マーケティングだけではなく事業開発においても非常に注目されていた言葉でした。しかしここで上げたサービスは、ZOZO、Amazon両方とも姿を消しました。その理由を2つ考えてみました。

一つは理想的なサービスを提供できる程、テクノロジーとファブリケーションの融合が進んでいないということです。データは取れてもファブリケーション側はそれを実現できる精度がないということです。ZOZOスーツは理論上は上手くいくはずでした。しかし実際に服をつくる工場は未だに型紙を利用し、人の手によって作業が行われています。仮に問題がここだけであればファブリケーションまでデジタルで完璧に稼働し、マネタイズも現実的になれば今後同様のサービスが復活するかもしれません。

もう一つ理由をあげるなら、企業やブランドは、サイズや選択の幅等のラインナップの拡充以上に、ブランド自体がいかに生活者の共感を得ることができるか、という本質的な価値化の方に進むべきと気づいたことにあると思います。生活者は「自分らしい選択(購買)欲」を満たす為に、カスタマイズできるブランドを選んでいるわけではなく、共感できるブランド自体を選んでいます。つまりブランドの選択自体が自分らしさの表現であり、その中でのサイズや選択の幅は微々たる話しなのです。

2018年頃は「パーソナライゼーションできること」が事業自体の価値になりえると思われていましたが、やはり大切な事は事業やブランド自体の本質的な価値でることに立ち返りました。2020年頃からパーパスの定義がマーケティングサービス業界でトレンド化したのは、デジタルの時代に改めて企業の価値や定義を見直す動きがあった為と思います。


この書籍は全ての視点や考察が視点10に繋がる構成になっています。視点10も是非ご一読ください。


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室井淳司