『天使の翼』第10章(129)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
シャルルに話すと、異存はないという。
「僕は、ギターでいいんだね」
「ええ」
「ただ――」
「えっ?」
「先に航宙券を手配しておこう」
「そうね……」
そこで、わたしの心は、直面する問題の方へととんぼ返りした。
(シャルル、どこへ行くつもりなのかしら……)
「ローラの伝手を頼るの?」
「それも考えたけど、もう決めた」
わたしは、少し慌てた。相談してくれても――
「アンコーナだ」
「アンコーナ?」
グラン・サンスでないと聞いて、わたしは、すこしがっかりした。
「サンス大公国第二の人口を誇る惑星だよ――歴史的には、グラン・サンスより古い都だ」
「……何でそこに?」
「店の主人に聞いてみた――ケインを知っているか、って」
「……」
わたしは、シャルルの手を握り締めていた。
「どうやら、ケインの本拠地はアンコーナらしい……つい先日も、ワーム・ホール・ビジョンで放送されたそうだ」
わたしの指に力が入る。
「普通吟遊詩人は直接メディアには出ないけれど、古都の音楽をテーマにしたドキュメンタリーだったみたいだ……」
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